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ゴーレムマイスター  作者: 駁目師走
第零章 プロローグ
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 間違えて、短編投稿してしまいました。こちらが通常連載です(涙)。お騒がせを……

 ゲームをやる時、僕は絶対に近接職を選ぶことはない。

 ウィザードや弓使いといった遠距離職を選ぶこともない。

 ヒーラーやバッファーといった回復職や支援職を選ぶこともないのだ。

 そんな僕が決まって選ぶのはサマナー……召喚職だ。


 ――何故そうなのか?

 僕は臆病である。

 そんな僕が現在巷に普及しているVRMMOにおいて近接職を選び、筋骨隆々なキャラメイクを施された歴戦の勇者達と殴り合いなんて想像しただけで嫌すぎである。

 僕は臆病である。

 そんな僕が遠距離とはいえ、筋骨――中略。の勇者達に攻撃を仕掛けるなんて恐ろしくてできようはずもない。

 そして僕は臆病であり、人見知りである。

 回復職や支援職を選んでも、回復や支援を施す相手がいない。

 臆病であり、人見知りな僕はだからこそ選ぶのだ。

 僕を守り、共に戦ってくれ、人間と違って僕が気を使う必要のない相棒を操ることができる召喚職を……。



 ――――――――――――――――――――



 圧倒的キャラクターカスタマイズの自由度で超絶人気を誇るVRMMORPG『マイスターズ』

「スキルを極め、職を極め、たった一人のMeister(名人)となれ」の謳い文句で本日サービス開始の新作ゲームである。

 僕はそのゲームのキャラクターメイク画面で思考停止していた。

 まずは名前設定。

 僕は毎回ゲームで使う『ビーン』に決めていたので、ここは即クリア。

 何をやっても矮小な自分を皮肉って豆粒に例え、こんな自虐的なキャラクター名を毎回使っているのだが、意外に被る事による使用不可にもならないので、気に入っている。


 キャラクターデザインも現実世界の体がそのままグラフィックとして使用され、選択項目は種族だけなのでそう時間はかからなかった。

 種族選択はステータスの伸び率と外見に種族補正がかかる。

 百を超える種族の中から僕が選んだのは総MP容量に抜群の補正がかかる妖精族。

 SPI以外、特にSTRやVITに関わる値が壊滅的に低い妖精族だが、僕には相棒を操るに十分なSPIがあればいい。僕が戦う気は最初から毛頭ないのだ。

 さらに気に入ったのは体格に大きなマイナス補正が付く点である。

 豆粒とまでは言わないが、元々身長160そこそこしかない僕は1メートルを切った。顔も心なしか余計に童顔になっている気がした。


 手が止まったのはクラスと呼ばれる職業選択画面である。

 他のMMOよりも選択職が多いのは知っていたが、サマナー職など多いといってもたかが知れている。

 ――と思いきや、サマナー職だけで実に五十を超えている。

『デビルサマナー』『エレメントサマナー』『ドラゴンサマナー』などなど無数にある。

 それでも他の職もと思ってみてみれば、近接職や遠距離職はさらに多く軽く百を超えていた。

 血眼になって各サマナー職の説明ページを見る。


『アンデッドサマナー』

 アンデッドを使役する召喚職。

 モンスターの魂を消費することにより強力なアンデッドを呼び出すこともできる。


『プラントサマナー』

 植物を使役する召喚職。

 食人植物等を召喚して戦い、森や草原などでは力を発揮し、雪原や砂漠などでは力を発揮しづらい。


 よくもこんなに色々と思いつくものだ、と無数にある職をスクロールし続けた僕の手が止まった。


『ゴーレムサマナー』

 土を媒体としたゴーレムを使役する召喚職。

 凡庸性に優れ、強力なゴーレムになると搭乗する事も可能。


「これだ!」

 僕はゴーレムサマナーを選択した。

 特にゴーレムになにかしらの愛着があるわけではない。

 臆病な僕には中に逃げ込む事が出来るという事があまりに魅力的だったのだ。


 数時間を要したキャラ選択画面を脱した僕は真っ白な空間へと転送された。

 果ての見えない真っ白な空間にぽつんと一つ扉があり、僕はその前に立っていた。

 僕の容姿はすでに妖精族のそれへと変わっている。

 手を握ってみたりして、操作性を確認する。

 VRで身体を動かすことは初めてではないが、これだけ本来の自分の身体付きと違うとなれば不安にもなる。

 身体を動かすことに違和感は覚えなかった。


「えっと……確か」

 頭の中でマイスターズ購入時に付属していたプレイマニュアルを思い出す。

 表紙に「必読!」と書いてあったのが印象的であり、最初の一ページ目に「ゲームを開始してもチュートリアルやプレイガイドのような案内は一切ありません」と清々しいことが書いてあったので僕は熟読していたのだ。


「まずは……『ブック!』」

 出現したのは辞典のような分厚い本と小洒落た羽根ペン。

 VRMMOの多くは仮想ディスプレイが出現し、そこでメニュー操作を行うが、マイスターズはこの本とペンでメニュー操作を行う。

 魔法スキル以外は名称を記憶しておけば使用することが出来るが、魔法スキルの多くはブックを出現させ、詠唱動作を行うことが発動条件に設定されているものが多いらしい。

 中は意外とデジタル仕様なタッチパネル式の本を開く。


 【ステータスページ】

 ネーム:ビーン

 種族:妖精族

 クラス:ゴーレムサマナー

 レベル:1

 スキル:土人形錬成Ⅰ

 パッシブスキル:傀儡技術Ⅰ

 右手:果物ナイフ STR+8

 左手:なし

 胴:ボロ切れ VIT+5

 足:サンダル VIT+2 AGI+2

 耳:傀儡師のピアス SPI+3

 指:なし

 首:なし

 所持金:100銅貨


 ステータス:

 STR8+8 (16) 物理攻撃力や所持重量に影響。

VIT6+7 (13) 物理防御力やHPに影響。

INT15 (15) 魔法攻撃力や詠唱速度に影響。

SPI22+3 (25) 魔法抵抗力やMPに影響。

AGI12+2 (14) 回避能力や移動速度に影響。

DEX13 (13) 遠距離攻撃力や命中能力に影響。


 確か、ステータス項目の影響設定はこんな感じだったはずだ。

 プレイガイドの最下部に小さくは確か「それ以外の隠しパラメーターにも影響を及ぼす場合がございます」という一文が書いてあったが、とりあえずは気にしない事にしよう。

 VR特有の「体感」のシステムを重視している為、HPやMPは数値として設定されていない点もこのマイスターズの特徴とも言えるだろう。

 腰に差した拙い短剣を抜き、一振りして感触を確かめた僕は眼前の扉を開き、マイスターズの世界へと足を踏み入れたのだった。



 ――――――――――――――――――――



 遥か下に緑の大地が広がる。

 突然僕の身体を浮遊感が包んだ。

 頬に受ける風、内臓が浮き上がる独特の感触。

 壮大な景色に僕は目を奪われた。

 周囲の空を見渡すと僕同様に落下する他のプレイヤー達が見える。

 落下ダメージで死んだりしないだろうな? と不安に思いながらも粋な演出に素直に関心した。


 すると遠くの方から世界中に響きわたる音声が流れた。

「ようこそ、マイスターズの世界へ。いかがですか? この壮大な台地が皆さんが冒険し、生きていく世界です。通常は高い所から飛び下りれば落下ダメージが発生しますが、今回は演出の一つとして落下ダメージ機能オフにしてあります。しばしの空の旅をお楽しみ下さい」

 空の旅と言っても飛行できるわけではなく、ただ落下しているだけなので語弊があるが、ひたすらに落下し続けるというのはVRならでは体験だろう。

 リアルな感覚にどうしても多少の恐怖は禁じ得ないものの、そのスリルもスリルでまた楽しい。


「ちなみにマイスターズはログアウト不能のVRMMORPGでございます。クリア条件は『統一国家』に所属している事です。尚、体感システムのリアリティ追求の為、マイスターズ内での死亡はそれ即ち現実世界での死亡となりますので、ご注意ください。それでは皆様、心行くまでマイスターズの世界をお楽しみ下さい」

「え?」

 僕の疑問符は中空に霧散し、そして視界はブラックアウトした。


 次に映し出された景色は和やかな街で繰り広げられるプレイヤー達の阿鼻叫喚であった。





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