第7話:求める心・叶わぬ想い
昼休み――――。
龍斗が教室を出ていくのを見て、私は昼食を食べるのも忘れ教室を飛び出し、龍斗が待つであろう屋上へと向かった。
屋上へと続く長い階段を一気に駆け登って、目の前の扉を押し開けた。
そこにはやはり龍斗の姿があった。
龍斗
「京香、早かったな…。」
京香に気付いた龍斗は話しかけてきた。
私は龍斗に歩み寄った。
京香
「龍斗、一体どういうつもり?急に転入なんかしてきて…。なんであの時、話してくれなかったの?私は…」
不思議と怒りが次第に悲しみへ変わり涙が溢れてきて言葉に詰まった。
龍斗は、涙を流す私を優しく抱きしめてくれた。
龍斗
「ゴメン…あの時、ちゃんと言えばよかったな。驚かせようと思ったのに、逆に不安にさせていただなんて…。」
京香
「もう…会えないかと思った…。」
龍斗の胸に抱かれて安心したのか涙がとまらなかった。
数分後、私は我にかえり龍斗から急いで離れた。
そして、泣いてしまった恥ずかしさと和志への罪悪感が同時に込み上げてきた。
京香
「ゴメン…。」
龍斗
「なんで謝るの?俺は嬉しかったよ。」
京香
「え…?」
私は龍斗の言葉にビックリした。
龍斗
「だってそうだろ?急に前世の恋人です。って目の前に現れて受け入れられないかもって思ったし…」
龍斗は淋しそうな瞳で私を見つめながら言った。
京香
「確かに普通だったらそうかもしれないね…。でも、私は小さい頃からずっと二人の夢を見てきたから…」
私はフェンスの方へゆっくりと向かった。
龍斗
「小さい頃から?」
京香
「うん…。頭では覚えてなくても魂は覚えてたんだね…愛するナイトの事を…」
龍斗
「京香…。」
龍斗も私の後へつづきフェンスの側へやって来た。
龍斗
「前世のように俺を受け入れてくれるか?」
京香
「龍斗…。ゴメン…それは出来ない。」
龍斗
「なんで!?」
龍斗は私の腕を強く掴んだ…。
京香
「私には今、付き合ってる人がいるの…。」
龍斗
「俺の隣の奴か?」
私は顔を反らした。
龍斗の泣きそうな顔を見ていられなかった。
京香
「そうよ…。」
龍斗
「そいつを愛してるのか?」
京香
「愛してるわ。」
龍斗
「そうか…分かった。」
龍斗は私の腕を離して屋上をあとにした…。
龍斗の後ろ姿を見送ると涙が溢れてきた…。
京香
「龍斗、ゴメン。あなたのことを本当は愛してる…信じられないくらい好きになってる…でも私には和志を裏切ることもできないよ。」
私は強く掴まれた腕を握りしめたままその場に泣き崩れた…。