好奇心
お花は、にっと笑いかけてきた。
「どうしたの、時太郎。面白くなさそうな顔してんのね」
時太郎は上半身を起こし、けっと肩をすくめた。
「面白くなさそうな顔って、どんな顔だよ! 面白い顔って、こんな顔か?」
手で頬を掴み、ぎゅっと引っ張り、目を寄り目にさせる。
くつくつとお花は忍び笑いをした。
「また喧嘩したんでしょ。あんたも懲りないわねえ……」
「ほっとけ」と呟いて、時太郎は立ち上がった。お花は時太郎の腕を掴んだ。
「ね、お山へ行って見ない?」
「お山? 何しに?」
お花は、辺りを見回すと、そっと囁いた。
「〝土掘り〟が来てんのよ」
「え?」と時太郎は問い返した。
「何のために? お山は約定で〝土掘り〟が入っちゃいけねえ、ってことになってるんだろ?」
「それが、見かけない連中なの。この辺りじゃ、見たことない顔よ。あたし、見たのよ! ほら、この百合……」
お花は、頭に飾った百合の花を見せ付けた。
「これを摘みに行った時、見かけたんだって! 絶対、あの連中は、怪しいわ!」
お花の話に、時太郎の好奇心は、むらむらと入道雲のように膨れ上がった。面白そうである。
「うん」と時太郎はお花に向け、うなずいた。
「行こう!」