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水虎像

 濛々とした湯気に水虎の像は聳えている。

 昼間の光に見る水虎の像は、ただの岩の塊にしか見えない。

 雪崩れ落ちる瀑布に、像の足下から湧き上がる湯気が加わり、あたりにはむっと咽せるほどの熱気が籠もっていた。

 たちまち河童たちの全身は、びしょ濡れになってしまう。

 しかし、水に濡れることは河童は平気である。閉口するのは、熱気と硫黄の匂いのほうだ。居心地が悪そうに、河童たちはもじもじとしていた。


 長老は水虎像を見上げた。それから、ゆっくり目を閉じる。


 河童たちは息を呑み、しんと静まりかえっている。

 ゆっくりと長老は両腕を上げた。


「お〝声〟をお聞かせ下され……水虎さま……」


 そのまま、じっと立ち尽くす。

 どうどうという水飛沫の音だけが響いている。

 周りで見ている河童たちの目は、疑い深そうに時太郎に集中していた。


(こんな奴に、水虎さまが話し掛けられたはずがない……)


 と、河童たちは、びくりと飛び上がった。



 ──時太郎よ……旅立つのだ……



 深い、水の底から湧き上がるあぶくのような、ぼこりとした〝声〟が頭の中に響く。

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