投石器
ざあっ、と怖ろしい音を立て、矢は向かってくる河童たちに放たれていく。
ぎゃっ!
ぐえっ!
短い悲鳴を上げ、河童たちは次々に矢に貫かれ、地面に倒れた。
それを見た河童たちに、恐慌が起きた。
「槍、構え──っ! 掛かれ──っ!」
甚左衛門の命令に、槍兵たちが穂先を並べ、突っ込んでいく。
きゃあ──っという絹を引き裂くような細い鳴き声を上げ、河童たちは退却した。
「藤四郎、何をしておる! 投石器はどうした?」
甚左衛門に呼びかけられ、藤四郎は「あっ!」と我に帰った。
「傀儡ども! 投石器を!」
喚いた藤四郎に、ぼけっと突っ立っていた傀儡たちは、ようやく動き出す。ぎりぎりぎりと綱を引き絞り、投石器の腕を倒した。
腕の先の受け皿に、傀儡の一人が巨大な岩を持ち上げ、載せる。
「射てーっ!」
がくん、と掛け金が引かれ、ぐるんと投石器の腕が回転した。
空中を飛ぶ大岩は、いやにゆっくりと放物線を描いていた。藤四郎は唾を呑みこんだ。
滝壺に、岩は吸い込まれるように消える。
そして──
凄まじい水飛沫が上がった。
その場にいた河童たちは、水飛沫に掬われ、薙ぎ倒される。しかし蛙の面になんとかで、まったく応えていない。
大波に攫われる感じが面白いのか、けっ、けっ、けっというような奇妙な笑い声が聞こえていた。
「次じゃっ! 次を射てっ!」
苛々と足踏みをして、藤四郎は叫ぶ。傀儡たちが同じ作業を繰り返す。
ぶうん、と音を立て、大岩が飛んだ。