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心配
藤四郎は笑顔になった。
「さようでございましたか! いや、この藤四郎、つくづく安堵いたしました!」
上総ノ介の懐から微かな呼び出し音が聞こえている。
懐から無線行動電話を取り出す。開くと、耳に当てた。
「余じゃ! 例の物は、できておるか?」
相手の言葉に大きく頷いた。瞬時に上機嫌になる。
「さようか! では、見せて貰えるのじゃな? うむ、うむ……では地下室で……。これより参る。待っておれ!」
さっと立ち上がる。
大広間の階段を降りていき、地下室を目指した。ふと見ると、藤四郎が渋い表情を見せていた。
「なんじゃ、鼠。まだ何か言いたいことがあるのか?」
「今のは、あの男からでございますな?」
「そうじゃ。それが何か?」
「この藤四郎、あやつのことが、どうも信用なりませぬ」
かんらからっ、と上総ノ介は笑った。
「そちは、心配性じゃのう……。判った、今より地下へまいる。そちも従いてまいれ」
「よろしいので?」
「うむ」と、上総ノ介は鷹揚にうなずいた。