河童淵
ここは、河童淵。その名称の通り、河童たちが仲良く暮らしている。
中央にはこぢんまりとした静かな沼があり、沼には細い川の流れが注ぎこんでいて、また別の方向に繋がっている。川の上流には、滝があった。
沼の周囲は切り立った崖で、ほとんど垂直な崖面は人間の接近を困難にして、河童淵の存在を隠している。
沼の水面には所々、岩が突き出していて、そこには思い思いに河童が腰かけ、のんびりと胡瓜や真桑瓜や西瓜や香瓜を齧っている。
高い岩からは、河童の少年たちが勢いよく水面に飛び込み、水飛沫を跳ね上げていた。
日当たりの良い場所には小さな畑ができていて、そこには胡瓜や真桑瓜、西瓜、香瓜、赤茄子、甘味唐辛子など、様々な野菜が栽培されている。
野菜を世話しているのは河童の女たちだ。河童の女は男と違い、色は白く、頭の皿もほとんど見分けがつかないほど小さい。
男は灰色がかった緑色の肌で、子供のうちは濃い色をしている。年令を重ねるうちに、灰色に肌の色が薄まっていく。年寄りの河童は、髪も白く脱色して、まっ白な色合いになっている者も多い。
時太郎は、水の中にいた。