家来
「なにがあった? 有り体に申せ!」
ははっ、と三人は這いつくばり、河童淵で起きた出来事を口々に、口角泡を飛ばして奏上した。
上総ノ介は、黙って耳を傾けている。
やがて口を開いた。口調は平常のものに戻っている。
「それで、その場所に金鉱はあると思われるか?」
中央に這いつくばっていた一人が顔を上げた。作蔵であった。
「それは、判りかねます」
むっ、と上総ノ介が不機嫌そうに額に皺を刻むのを見て、作蔵は慌てて言い重ねた。
「しかし、何かありそうだ、とは思われます。それが金なのか、銀なのか……それとも別の何かは判りかねますが……。お許し下され。手前ども、ここに金がありますぞと、上様をお騙しすることは簡単でござる。しかし我ら、確かなこと以外、口にすることは山師の道にもと悖ると思っておりますので」
ふむ、と上総ノ介は愁眉を開いた。作蔵の正直な態度に好感を持ったようである。
「あい判った! 大儀であった。後で褒美を取らせるゆえ、下がってよいぞ!」
へへーっ、と三人は這いつくばりつつ、その場を退出した。
どすどすと荒々しい足音を立て、上総ノ介は広間の壇に上がった。壇には緋毛氈が延べられている。どかりと座り込み、帯に挿した扇子を手にとり、ぱちりぱちりと開いたり閉じたりさせている。
脇息に凭れ、なにか考え事をしているようだ。
家来たちは身動きもしない。
「木戸甚左衛門はあるか?」
「ははっ、ここに!」と声がして、一人の家来が膝を滑らせ、正面に座った。