大広間
破槌城の大広間。一面板敷きで、無骨な梁が組み合わさり、緒方上総ノ介支配の家来たちが、ずらりと居並んでいる。
家来たちは無表情に口を噤み、板敷きに平伏している三人の山師たちを見つめていた。山師たちは、がたがたと恐怖に震え、頭を床に摩り付けんばかりにしている。
「河童の聖域じゃと! それで、おめおめと逃げ帰ってまいったのか!」
甲高い怒鳴り声が大広間を圧した。広間を照らす灯明皿の火明かりがふわりと揺れる。
三人は、その声に額を床に打ち付けんばかりに再び頭を下げた。
どすどすと荒々しい足音が近づき、三人の前に止まった。緒方上総ノ介の登場である。
かつての若者は、今や堂々たる国主となり、美々しい衣服を纏っているが、その性は今なお不羈不撓そのままで、癇癖はいよいよ強まっている。
上総ノ介は、この春ようやく、京に上洛を果たした。
放浪していた関白太政大臣の藤原義明を擁し、太政官を再建するという名目である。上総ノ介自身は、それ以前に橘氏を称しており、いずれは征夷大将軍の宣旨を受けようと企んでいる。
そのためには、多額の金が要る。
楽市楽座や、征服した各地に代官を置くことにより経済的には潤っていたが、御所に巣食う公卿たちを転ばすためには、それだけでは足りない。もっと必要だった。
山師を雇ったのも、その一環であった。