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不安
鋤を揮う手を止め、三人は顔を上げた。
なにか異常を感じる。感じるが、それがなにか判らない。
ただ、不安だけが胸に込み上げてくる。
「なんだか、妙じゃの……」
呟くと顔を仰向け辺りを見回す。
ぎくり、と表情がこわばる。辺りに、濃密な霧が立ち込めていた。
「い、いつの間に……?」
滝壺は滝の水飛沫で水蒸気が過飽和にあった。その水蒸気は、河童の低周波音によって凝結し、霧と化したのである。
ぽとり、と手にした鋤を取り落とした。がちゃん、と鋤は地面に転がる。
と、その鋤が地面の上でびりびりと細かく震動していた。
「な、なんじゃ!」
三人は、あまりの異常に、衝動的に飛びのいた。
さっと脇差を抜き放ち、身構えた。
「な、なんだか、腹が妙じゃ……」
一人が自分の鳩尾あたりを撫で擦った。腹部の柔らかな脂肪がぶるぶると震えて、腸が捻れるような感覚が伝わってきた。
「うっ!」
もう一人は脇差を取り落とし、両手で耳を押さえた。