塑像
河童淵の沼に注ぎ込んでいる川の上流には滝があった。その滝壺の付近に、水虎さまの塑像がある。というより、滝そのものが水虎さまの石像であった。
岩が偶然その形に固まったのか、あるいは誰かが滝の飛沫にもめげず、鑿を振るったのか……。高さ三丈にも及ぶ、巨大な河童の立像が滝の水飛沫を浴びて立っている。
日差しは傾き、山の背に橙色の残照が燃え上がっている。滝壺はとっぷりと山陰に入っていた。
「いるぜ……、あの三人だ!」
時太郎は岩陰に隠れ、お花に小声で囁いた。お花は時太郎の側に立って、唾を飲み込み頷く。
滝壺の、水虎さまの像の近くの岩壁に、三人が取りついて作業をしている。例の組み立て式の鋤を振るい、熱意を込めて土を掘り返していく。
ざくっ、ざくっという音が、滝の轟音に混じって聞こえていた。
時太郎の背後には、河童淵から集まった河童たちが集合していた。時太郎と同じように岩陰から顔を突き出し、滝壺の様子を見守っていた。
三人の姿に、河童たちの怒りに火が点いた。
長老は杖を手に、すっくと立っている。眉が険しく、表情は厳しい。
「長老さま、いかがいたしましょうか? あのままでは……」
「うむ」と長老は頷いた。
河童たちに振り向き、にやりと笑いかけた。
「【水話】を使えばよい……」