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集合
「水虎さま……」
一人が呟くと、その場にいた全員が大きく頷きあった。
「そうじゃ! この辺りで、羊歯がわんさか生えているといえば、あそこしかないわい」
「あそこに人間が入り込むなど、許されることではない!」
「まったくじゃ! これは何とかせぬと……」
河童たちは口々に言い合う。その言い合いが早口になり、甲高くなり、しまいには人間には聞き取れない高音域にずれこんでいく。
びりびりと長老の洞窟の岩壁が震動し始め、ぼろぼろと小さな破片が剥落し始めた。
「やめい! みな、静かにせんか!」
長老の一喝に、ぴたりと静まった。
「ともかく、その人間どもの動向を探る必要がある! 万一ということもある。水虎さまの場所に、皆を集めよ!」
長老の言葉に、全員立ち上がった。ぞろぞろと出て行って、河童淵の全員に長老の言葉を伝えに行く。
残された時太郎とお花に向かい、長老は笑いかけた。
「今度のことは、お前たちが報せてくれたのだから、一緒に水虎さまの場所まで従いていっても良いぞ!」
時太郎とお花は「はい」と素直に頭を下げた。