知識
「そやつらは、薇、蕨などを探していたのだな?」
頷いた時太郎を凝視しながら、三郎太は腕を組んだ。
お花に呼ばれ、三郎太は長老の住まいに姿を現した。三郎太の後ろに、河童淵の主だった河童が集まり、座り込んでいる。長老がついでに他の河童にも聞かせたいと、集めたのだ。
「それは、山師だ。金山を探していたのだ。山見立ての際、羊歯の仲間の草を山師は、まず最初に探すと聞いた覚えがある」
ぽかんとしている時太郎とお花に、三郎太は苦笑した。
「ああ、おまえたちは金や貴金属を見たことがなかったのだな。金や白金、巴金、老金、衣金、了金、我金という七金属は人間の世界で、最高の価値を持つとされるものだ。人間は、これら七金属のためなら、何でもする」
一気にまくしたて、はっと口を噤む。
時太郎は呆然となっていた。
父親の三郎太は時々こうなる。溢れ出る知識が忘我の状態となり、その時ばかりは時太郎は父が見知らぬ別人に見えるのだ。
その時、長老が口を挟んだ。
「この界隈で、そのような草が目立つほど生えている場所というと……」
河童たちは顔を見合わせた。
みな、同時にある場所が思い当たったようだった。