LV0:プロローグ2
男がまだ少年と呼べる年齢の頃、平穏な日常を過ごす中刺激が欲しいと言ったことがあった。
男がまだ少年と呼べる年齢の頃、怠惰で自堕落な自分のことなど棚に上げ、この世界はなんとつまらないのだろうかと嘆いたことがあった。
少年はこの世に生まれて15年で達観した気になっていた。
少年はこの世に生まれてたった15年で真理にたどり着いた気になっていた。
浅慮。
あまりにも浅慮。
分かった気になっていた。
悟った気になっていた。
ただ、このまま時間だけが過ぎていって。
ただ、高校を卒業し。
ただ、適当な大学へ通い、そこを卒業すれば適当な会社へ就職。
ただ、誰かと夫婦になり、孫と子供に囲まれこの世を去っていく。
自分のような得にとりえもない普通の一般人は、そんな一生を過ごすのだろう。
少年は夢も希望も持っていなかった。
成るがまま、成すがままに過ごすことこそが我が人生の最善なのだから。
少年はしかして、迷走も絶望もしていなかった。
成るがまま、成すがままに過ごすことこそが我が運命の最善なのだから。
親には嘆かれ、友人には冷めていると言われ、師には鼓舞されたこともあった。
それでも少年の心は動くことはなく、ただ漠然とこの世界はつまらないものなのだと呟くばかりで…
。
そんな少年に転機が訪れたのは、忘れもしない高1の夏休みの最終日。
8月31日。
課題は夏休み初日に終わらせてある。
夏休み中は友人に外出を誘われるも、応じることはなかった。
日がな一日図書館に篭り、様々な種類の本を読みふける。
そこで覚えた雑多な知識、技術、歴史、etc…。
技術書専門書に限らず、小説から漫画、絵本にファッション雑誌など目に移った気になるもの全てを手に取りそのページをめくっていく。
自分の知らぬ世界がそこにはあった。
本とはそれ一つ一つがそれぞれの世界を確立している。
少年はのめりこむように、それこそ司書の人に追い出されるまで没頭し続けた。
親や友人はあきれながらも、少年の奇行を黙ってみていた。
それは別に、匙を投げたとか見放したということではない。
少年は笑みを浮かべていた。
年中退屈そうな、何物にも興味を示さなかった濁った瞳が、今輝いていた。
今まで見たことのない生き生きとした姿に、皆少年が改心したのかはたまた狂ったのかは別として、良い兆候ではないかと傍観することにしたのである。
そんな思いは露知らず、少年はある種の予感を感じていた。
動く。
何かが動く。
それは自分の心なのかもしれない。
それは自分の知る物なのかもしれない。
それは自分のあずかり知れぬ何者なのかもしれない。
ただ漠然と。
その予感だけが少年の心を奮わせる。
自分が生まれた意味。
自分という存在がここに在る意義。
自分に何ができ、何をすべきか探し続ける意志。
その全てがはっきりするような、そんな予感が心を奮わせる。
そしてその時は訪れる。
忘れもしない、高1の夏休みの最終日。
8月31日。
少年はこの世界から忽然と姿を消し…。
警察各所の懸命の捜索にもかかわらず、発見されることはなかった。
周囲の人間は皆一様に首をひねり、彼の帰りを待っていた。
しかし、その身の心配だけは誰もしていなかった。
少年ならばどこでも何とかやっていってしまう。
少年を知るものは苦笑しながらも、そう証言していた。
新学期が始まり、秋が過ぎ冬を越し、一年たった少年の家の玄関には、一枚のメモが飾られた額縁があった。
少し色あせながらも、そこに書かれた文字は決してかすむことなく。
”いってくる”
そう一言だけ書かれたメモは、今日もまた少年の家族が出かけるさまを見守り続けていた。
ひとつ、面白い話をしよう。
これはどこにあるかも、どうやっていくのかも分からない、近くて遠いどこかの世界の話。
剣と剣がぶつかり合い火花を散らし。
魔法という不可思議な力が存在し。
魔物と呼ばれる異形が闊歩する。
そんな世界…、その名は『ゼノス』。
血と闘争、神秘と幻想、謀略と侵略が歴史を刻み。
弱者は奪われ、強者は謀られ。
勇者は倒れ、魔王は討たれ。
魔物は狩られ、精霊は囚われ。
それでもなお、森羅万象全てのものは其の生を謳歌していく。
この世界は常に生と死に満ち溢れていた。
そんな『ゼノス』にある日突如として異物が入り込む。
理解不能な理。
存在し得ない存在。
予期せぬ特異点。
その『異分子』は静かに、だが確実にこの世界へと根を下ろしていった。
そして時代は動き出す。
『異分子』を内包した世界は新たな歴史を紡ぎ始める。
其の先に待つものは栄華か、破滅か、それとも更なる進化か。
今ここに、物語が開幕する。
『異分子』が巻き起こす、悲劇惨劇喜劇活劇。
中身はこれからのお楽しみ。
新しい朝が来た。
希望の朝が訪れるのか。
絶望の夜が明けるのか。
まだ誰も知らない。
知りえない。
ならば、こう宣言しておこう。
世界は君の思っている以上に、面白おかしくご都合主義にできている……。
あれ? あれれ? 何で主人公の名前すら出てきてないの? と、思ったそこのあなた。それは目の錯覚でも、幻でも、人間をやめたのでもありません。作者の腕がないだけです(爆)。さっさと主人公の異世界生活書こうと思ったのに、気づけばこんなんなっていて本人もびっくりしております。ん~、文を書くのはやっぱり難しいですね? 次こそはちゃんとお話を進めていきたいと思いますので、また広い心で待っていていただけると恐縮です。そして、多くの人に読んでもらえるよう、精進していきたいと思いますのでこれからもよろしくお願いします。それでは次回『LV0:プロローグ3』でお会いしましょう。SEE YOU NEXT STORY! (^^)ノシ