頼み事
「いい匂い!」
完成したクリームシチューの香りに、コハクは喉を鳴らす。
日はすっかり沈んでしまい、星が見え始めている。
「……ん。出来た。熱いから気を付けて」
レイは、料理を取り分け皆に配っていく。
よそわれた器の中は、ほわほわと湯気が立っている。
「ああ、美味そうだ」
カインは出来たてのシチューに釘付けだ。
くべられた薪を中心に、皆円になるように座った。
「じゃあ。食べましょうか。大地の恵みに感謝を」
「感謝を」
それぞれ、クリームシチューや魚の塩焼きを食べ始めた。
「美味い!ブラックボアの肉がこれほど美味いとは。臭みが全くない」
ブラックボアの美味しさに、目を輝かせるカイン。
「ちゃんと臭み取りをすれば、ブラックボアは食べられるわ。口に合ったみたいで良かった」
「そうなのか。これは王都に戻ったら騎士団の皆に報告だな。これは野営で使えるぞ」
余程気に入ったのか、食べるスピードが驚くほど早い。
フェンも大皿に入ったシチューにバクバクと食らいついてる。
「フェン殿たちはこのような料理を毎日食べられているのですね!羨ましい限りです」
「ああ。いいだろう?レイ、もう一杯」
「ええ。レイ殿、俺もおかわりをもらっても構わないか?」
おかわりを求めるフェンとカインは、食べ盛りの子供のようだ。
「え、ええ。おかわりはしてもらって構わないけど、二人とも喉に詰まらせないようにね」
フェンの早食いはいつものことだが、カインの食べる早さに驚きを隠せないレイ。
「ああ。心配するな」
「ハハッ。気遣い感謝する。あまりにも美味しくて急いでしまった」
カインは恥ずかしそうに笑った。
「はい。おかわり」
「ああ。悪いな」
「ありがとう」
レイから受け取ってまた食べ始める二人は、まるで兄弟のようだ。
その隣で、レイも食事を摂り始める。
「ねぇ、団長さん」
シチューを何口か口にした後にレイはカインに話しかけた。
「ん?何だ?」
「さっき王都に報告するって言っていたけど、私たちに会ったことも報告しなければいけないのかしら」
「ああ。その件に関してなんだが……」
カインが手を止め、レイに向き合う。
「おそらく、いや確実に、王都では俺たちは死んだことになっている。その俺たちが国に戻って事を黙っていたとしても、陛下に真実を話せと言われれば言わざるを得ない。話せば陛下は国を挙げて君を探すだろう」
「つまり、私も一緒に王都へ行けと」
「理解が早くて助かる。竜騎士団団長を助けたとなれば、陛下は君に何かしらの褒美を与えてくださるに違いない」
「それを断ることは」
「不可能だろう」
カインは食い気味に答えた。
「褒美だなんて」
小さくため息をついたレイ。
「すまない。君の生活を邪魔してしまって」
そんな彼女を見て、カインは申し訳ないと謝った。
「謝らないで。助けたのは私の判断。人は嫌いだけど、倒れているのを見知らぬふりするのは居心地が悪かったのよ」
素っ気ない言い方だがその言葉は優しさに溢れている。
「やはり、君は優しいな」
微笑みを見せる彼には、彼女の優しさが伝わっているようだ。
「そんなんじゃないわ。……ところで、団長さん。貴方があれほどの傷を負っていたのなら、他の竜騎士の人たちも危険な状態なんじゃないの?」
くすぐったく感じた空気を変えるため、カインに話題を振った。
「確かに今回の戦いの負傷者は多い。治療に当たってくれているのは、優秀な宮廷治癒師たちだが、間に合っているかは分からない」
「そう」
「問題なのは、今回の戦いで体の一部を失った者たちがいるんだ。その傷を治す治癒魔法の最上級魔法生体蘇生を使える治癒師が、王都にはいない」
カインは悔しそうに太ももの上で拳をにぎりしめる。
その場に一瞬の沈黙が流れる。
「レイであれば、そのくらい一人で皆を治せるだろうな」
話を聞いていた、フェンが食事で汚れた自身の体を舐めながら呟いた。
「はっ?……え!ひ!?」
フェンの呟きにカインが、驚きのあまり言葉にならない音を発した。
「どうかしら。生体蘇生は使えるけれど」
レイはシチューを啜りながら、平然と答える。
「っ本当か!?」
レイの答えにシチューの入った器を慌てて置き、勢いよくレイの両の手を取ったカインは、希望の光を見つけたという眼差しだ。
「え、ええ」
あまりの迫力に、戸惑うレイ。
「助けてもらっておいて、無礼を承知で言う。俺と王都へ来てくれないだろうか。他の騎士や竜たちの傷を治してほしい!」
今度は地面につくほど頭を下げる。忙しい男だ。
「フェン、どうしよう」
「お前が決めたことなら、私は反対しない」
レイの隣にすとんと座ったフェンはそう答える。
『レイ、私からもお願いです。貴女の力を貸していただけないでしょうか』
リリィも頭を下げた。それほど厳しい状況なのだろう。
「リリィ。貴女にまで言われてしまったら、断れないじゃない。まぁ、団長さんと王都に行かなきゃいけないみたいだし、手伝うくらいなら」
リリィにも頭を下げられたレイは、苦笑しながらも手を貸すことを了承した。
「本当か!助かる!」
カインは救世主が現れたと嬉しそうな顔を見せた。
レイは、そんな顔見せられたら断れないじゃないと、心の中で悪態をついた。
【森の愛し子~治癒魔法で世界を救う~】
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