契約
緊迫した空気が流れる。
「何か来る!」
カインは剣を構え、リリィとすぐ戦闘態勢をとる。
しかし、その二人の前にレイが毅然と立った。
「危ないぞ!」
カインが声を荒げる。
レイは手を横に出しカインの方に顔だけを向け、二人に静止するように促す。
「大丈夫。私の方がこの森の生き物には詳しいから」
その言葉を言い終わると同時に、気配の元が茂みから姿を現した。
正体は、黒ヒョウだ。
【黒ヒョウ】
俊敏性に長けている中位種の魔獣で、人間は愚か、そのスピードに適う魔獣は数多くない。
「この森には黒ヒョウが棲むのか!レイ殿、危ない!」
黒ヒョウは、彼女に目掛けて飛びかかった。
だが、レイに怯む様子はない。
「コハク。ストップ」
「グルルッ!」
黒ヒョウの動きが止まった。
「コハク?」
この場にいない者の名前を呼んだレイ。
カインは、魔獣に対して平然とする彼女に呆気に取られレイの言葉を復唱することしか出来なかった。
「コハクはこの子の名前。あなたたち二人が、私たちの敵だと思ったみたい」
レイは、黒ヒョウもとい、コハクに慣れたように近づいた。
「コハク、この二人は敵じゃないわ。安心して」
レイは彼をなだめるようにやさしく顎下を撫でた。
コハクはゆっくり尻尾を左右に揺らし、喉を鳴らし大人しく彼女に撫でられている。
『ごめんなさい。レイ』
コハクは、俯き尻尾を垂れ下げ、反省した様子を見せている。
もちろん彼の声も、レイにしか聞こえていない。
「大丈夫よ。私を守ろうとしてくれたのよね」
レイはコハクと同じ目線になり、優しく話しかけた。
「名前があるということは、その黒ヒョウも君と契約しているのか?」
【契約】
それは、人間が魔獣や聖獣(人々は総称して魔物とも呼ぶ)、精霊に名前を付け、互いの血を契約人に落とすことで成立する。
扱いを間違えれば、契約獣にとっては呪縛にもなる。
契約の解除は、人間側にしかできない。
契約者が死亡した場合は自動的にその契約は解除・破棄される。
しかし、契約獣が契約者を殺そうとした、また殺した場合、契約違反となりその契約獣は死に至る。
「契約。そうね、契約していることになるわ。だけどこの子たちを戦わせるつもりはないわ」
契約という言葉を聞いて、暗い表情を見せる。
その理由を知りたいためにカインがさらに聞く。
「では、どうして契約を?」
「それは、私たちから言い出したことだ。レイに名前を付けてほしいと」
フェンが口篭るレイの横に立ち、彼女の代わりにカインの問いに答えた。
彼は自身の尻尾をレイに巻き付ける。
それを見てレイは、フェンに優しい眼差しを向けた。
「この子は、私たちに名前を付けるつもりなどなかった。それが私たちにとって呪縛になることを恐れていた。だが、私たちが一緒にいたいと、無理を言って名をつけてもらったのだ」
フェンは、当時のことを回顧するように話す。
その時、優しい風が一瞬吹き抜け、レイたちの髪や服がふわりと靡いた。
「名前をつけることを、そちら側から願い出ることがあるのですね」
乱れたまま髪のカインが、不思議そうに言った。
「それほど、レイが綺麗な心を持っているのだ。たとえ名で縛られたとしても、この子を守ってやりたいと、一緒にいたいと願うほど」
彼女を見るフェンの目は慈愛に満ちている。
「君は愛されているのだな」
カインは、手ぐしで髪を整えながら、自分のことのように嬉しそうに言った。
「フェンたちが買いかぶりすぎなのよ」
ふいっとフェンと反対の方へそっぽを向いた。
見えた彼女の耳が少し赤いのは、気のせいだろうか。
【森の愛し子~治癒魔法で世界を救う~】
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