宿屋ケットシー
カインに教えてもらった宿舎街をしばらく歩き人の数が少し減ったように感じられた頃、一件の宿屋が目に留まった。
宿の名前は、ケットシー。空想の生物、猫の妖精から名前をとったようだ。
ペガサス亭といい、この国は生き物に関連する名前の店にしがちらしい。
店の前には、
『旅の疲れを猫で癒されて行かれませんか?』
という謳い文句が書かれた看板が立て掛けられていた。
「猫……」
生き物が好きなレイは、その看板に目を奪われていた。
その目は、花まつりの話を聞いた時のように煌めきを帯びている。
「宿代はどの店よりも安いな」
「そうね。一泊二日、朝食付きで銅貨三枚。朝夕食事つきでも銅貨5枚。一週間なら銅貨35枚。ここに泊まってみましょうか。だめならまた違う宿を探しましょう」
「そうだな」
レイは対になる黒猫と白猫の絵が描かれた二枚扉を開け、二人は店内に入っていった。
カランコロン
店の扉の上部についているベルが、レイが開けたと同時に軽やかに鳴る。
「いらっしゃいませ」
レイたちを迎え入れたのは、肩に茶色い毛並みの猫を乗せた青年だ。
綺麗な藍色の髪が特徴的な好青年だ。
「こんばんは」
「こんばんは。店主のダリスといいます。二名様ですか?」
青年は、何やら作業をしていた様子だが、その手を止め受付に入っていった。
「ええ」
「お部屋は別々にされますか?」
「ええ、二部屋で」
「畏まりました。何泊されますか?」
「1週間で」
質問される内容に礼は淡々と答えていく。
「ありがとうございます。朝食と夕食準備はいかがされますか?」
「朝食は毎食、夕食は必要な時だけ頼むことはできるかしら?」
「ええ。構いませんよ。では受付させていただきますね」
青年は、レイの申し出に快く受け入れた。
「宿泊期間、7日間。お食事は、朝食7日分、夕食はその都度という事でお間違いなかったですか?」
「ええ」
「当店は、前払い制にさせていただいております。宿泊分と朝食分のお会計だけさせていただきますね。夕食代はその都度とのことですので。2名様で銅貨42枚になります」
「はい」
レイは、代金を青年に渡した。
「はい。ちょうど頂きます。では、お部屋へご案内いたします」
ダリスの案内に従って、3人は2階の宿泊部屋へ上がっていく。
「こちらになります」
ダリスが足を止めたのは、黒猫と白猫がじゃれた様子が絵続きになっている二部屋だ。
「お手洗いは、部屋を出て左手の突き当たりに、女性用と男性用の札がかかっております。浴室はお部屋を出て右にあるピンクのリボンをつけた猫の扉が女性用、男性用はその向かいの青いリボンをつけた猫の扉です。何か分からないことがあれば受付までいらしてください」
「わかりました。ありがとうございます」
「では、ごゆっくり」
ダリスは、優しく微笑むと自分の仕事へ戻って行った。
「今日は疲れたし各自部屋でゆっくりしましょう」
そうして二人は、各自部屋に入っていった。
それからの1週間はあっという間だった。
それぞれの服や授業に必要なの用具を揃えたり、街をしるために練り歩いた。
また図書館に行ってセレイム王国やセレイム国立学園の大まかな歴史、文化の知識を蓄え、宿に戻ると猫たちと戯れて。
もちろんペガサス亭にも足を運んだ。
その時の話はまたの機会に。
と、そんな充実した日々を二人は過ごした。
宿泊最終日、レイたちはチェックアウトの手続きをしていた。
「お客様、夕食代の銅貨は16枚でいいんですよ?28枚は全夕食分も入っております」
代金を置くトレーを見て慌てふためくダリス。
「この子達に癒しをもらったし、癒し代として受け取ってもらえないかしら?」
レイは、近くに来た白猫を優しく撫でながら言った。
「ですが……」
受け取ることを渋るダリス。
二人の間に沈黙が流れる。
聞こえるのは、レイに撫でられている猫の鳴らす喉の音だけだ。
するとレオンが口をはさんだ。
「受け取れ。こうなるとこいつは引かないぞ」
レオンの言葉を受け、ダリスは少しの間考える。
「では、ありがたくいただきます。またいらしてくださいね。その時はサービスさせていただきます。」
思慮した結果、受け取ることを決めトレーを手に取った。
「あ、そうだったわ。あとこれと」
彼の返答を聞いて微笑むとレイは、ダリスにあるものを渡した。
「いいのですか!?」
彼女が渡したのはは、キャットタワーといくつかの猫じゃらしだ。
この店には、猫たちとっての憩い場というのは特にない。
また猫と触れ合いはできるが、遊べるものもなかった。
それを物悲しく思ったレイの粋な計らいだ。
「ええ。もっとこの子達の特性を活かせれば、もっとこの店も賑わうんじゃないかなって。……受け取ってくれると嬉しいのだけれど、お節介だったかしら?」
「そんな。とても嬉しいです。ありがとうございます!」
ダリスは、レイから受け取った猫じゃらしを胸の前で握りしめながら、勢い良く頭を下げた。
「気に入ってもらえたようね」
猫たちは早速キャットタワーに登って遊んでいた。
お気に入りの場所を見つけた子、場所取りを巡って喧嘩している子たちでキャットタワーは一瞬で賑やかになった。
彼らを見る彼女の表情にはそこまで現れていないが、声は嬉々としている。
「はい。レイさんのおかげで、この子たちの魅力をもっと伝えられそうです」
「また来ます」
レイたちは、猫の宿・ケットシーを出た。
「本当にありがとうございます。またのお越しを」
扉が閉まる寸前、発せられたその言葉は、彼女に届いただろうか。
【森の愛し子~治癒魔法で世界を救う~】
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