今日の夕飯は
三人は、王城の門へ向かうため長い廊下を歩きながら、夕飯について会話をしていた。
「レイ殿たちは、いつも何を食べるんだ?」
「そうね。フェンが狩ってきた魔獣を料理することが多いわ。豪勢なものは作れないけど、昨日みたいにシチューにしたり、焼いてソースをかけて食べるって感じかしら」
「レイの作る料理はどれも美味い」
レオンは彼女の作る料理をべた誉めする。
「俺も、またレイ殿の料理が食べてみたい」
カインは、レイの目を見ながら笑顔で言った。その笑顔はまるで、夜に浮かんだ太陽のようだ。
レイは、思わず顔を少し赤らめた。
予想外な彼女の表情に目をぱちくりとさせたカインだが、微笑ましそうに目を細めた。
「それより、レオン。貴方がフェンリル族の王だって知らなかったわ。それに国王と知り合いってことも。いつからの知り合いなの?」
空気を変えるために、あからさまに話題を変えたレイ。
「ああ。お前と会った時には、すでに王座は譲っていたからな。特にいう必要もないと思ってな、言わなかった。そうだなセルビスとは、お前に会う二十年ほど前からだったか。私が王として、フェンリル国を統治していた時に奴とは出会ったのだ」
【フェンリル国】セレイム王国から南東へ海を渡ると、そこに、ある一定の時期以外は雪が降り注ぐ山が広がる。その山こそがフェンリル族が暮らすフェンリル国だ。
「私が生まれるずっと前から知り合いだったのね」
「セレイム王国は、フェンリル国と昔から親交があると一度聞いたことがあります」
「ああ。私は長く王座に就いておったから、何世代か前のセレイムの王たちとも知り合いだ。その中でもセルビスとは、とても馬が合ってな。よくフェンリル国に足を運んできよったわ」
「長い歴史があるのね」
「王都にある図書館に行けば、セレイム王国とフェンリル国の歴史を詳しく知れると思うぞ」
二つの国の交易の歴史について興味を持ったレイに、カインは図書館を薦める。
「そうなの?」
「ああ。王都図書館は、膨大な数の歴史書を保管しているんだ。よかったら利用してみてくれ」
「ぜひ、そうするわ」
「ああ。門が見えた」
レイたちが話に花を咲かせていると、門の前まで来たようだ。
「団長!」
レイたちが通った時の門番と交代したと見られる別の門番がカインたちに気付き声を掛けた。
「ご苦労様。門を開けてもらえるか?」
「はっ!」
鉄の門が開かれ、三人は街に向かった。
「カインのオススメの店は、何が美味いんだ?」
「ケルウという草食の二本の角を持つ動物の肉を使ったステーキが人気です。食べ応えがあって美味いですよ」
「ケルウか。存在は知っているが食べたことは無いな」
「私も無いわ」
「楽しみにしていてください。喜んでいただけると思いますよ」
「そうか。なら、楽しみにしよう」
街は夜ということもあって、とても賑わっていた。
踊り子を見る者、酒を酌み交わす者たち、食事をしながら世間話に花を咲かせる者たち、様々に夜を過ごしている。
そんな人々を見て、レイはある事に気が付いた。
「団長さん。この国は、獣人族も暮らしているの?」
「ああ、そうだ」
カインが言うには、セレイム王国は、人間だけでなく、獣人と呼ばれる、人と魔獣の混血の種族も暮らしている珍しい異種族国家だそう。二百年ほど前のセレイムの国王が、ある獣人の一族を迎え入れたことから、この異種族国家の歴史が始まり、このことが各国へ伝わり、セレイム王国は様々な種族の国から、信頼のおける国と認められたそうだ。
「さっきは気付かなかったけど、こうやって種族関係なく生活できるのね」
「ああ。セレイムの強みの一つだ」
「ええ。それにしても、とても賑わっているわね。こんなにも人で溢れる夜を過ごすのは初めてだわ」
レイは、辺りを興味津々に見回している。
「今日はレイ殿にとって、初めてのことが多くなりそうだな」
「ええ」
「見えた。あれが私がおすすめの店の、〝ペガサス亭〟です」
話をしていると、カインの薦めるご飯処に着いたようだ。
「ペガサスってあの中位種の聖獣の?」
【ペガサス】翼を持つ白い馬のような姿をした中位種の聖獣。体長は、普通の馬とあまり変わらない。
密漁により数はとても少なくり、出会うのはとても稀な生き物だ。
「ああ。店主が昔に冒険者として過ごしているときにある森で偶然、ペガサスに出会ったそうだ」
「それで、店の名前を?」
「そういうことらしい」
「へえ」
店の看板を見上げながら、会話をする二人。
「入らないのか?」
レオンがまだかという目で二人を見た。
「そうね。入りましょう」
カインがペガサス亭の扉を開けた。
【森の愛し子~治癒魔法で世界を救う~】
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