王城にて
先ほど会話に出てきた竜の間へ足早に向かっているであろうカインに、レイはただ黙って彼に付いて行く。
等間隔に連なるアーチの柱が特徴的な、廊下を抜け空を舞う竜の姿が描かれた扉の前についた。
「ここが竜の間だ」
その扉を開けると、簡易ベットに横になる多くの負傷者と、そんな彼らを治している治癒師と思われる十数人の黒いマントを羽織った者達が忙しなく室内を往来している様子が伺えた。
そんな中一人の治癒師がカインたちのもとへやって来た。
「あぁ!カイン様!生きておられましたか!」
涙を溜めて、カインの生還を喜ぶ治癒師。
「心配をかけた。私は、彼女に負傷者を治してもらうためにここに来た」
「……この娘が、治せると?」
彼の横に立つレイを見て、治癒師は怪訝な顔をする。
無理もない。何せ彼らは、王国屈指の治癒師として活躍する者たちだ。
そんな彼らの前に、この状況を変えられるというどこの者かも分からない人間が現れたのだから。
それも若い娘だとなれば当然の反応だろう。
「ああ」
「正気ですか!我らよりこの娘が勝ると!」
治癒師は、尊厳を踏みにじられたと言わんばかりに怒りを露わにした。
「そうだ。彼女なら力になってくれる」
カイン強く断言した。
「…っく。分かりました。カイン様を信じましょう」
カインの強い意志に治癒師は負け、首を縦に振る。
団長さんって相当な権力があるのね、と二人のやり取りを、傍で冷静に聞いているレイ。
「レイ殿、頼めるか」
「ここからだとあまり見えないから、入らせてもらっていいかしら?」
カインに、確認を取る。
「ああ。もちろん。俺は、陛下のところへ報告へ行ってくる。部下たちを頼んだ」
「ええ」
快く承諾しカインは、竜の間を後にした。
カインが逝ったのを見届け、レイは竜の間の中央へと足を進めた。
患者は皆、薄着のシャツとズボンに着替えさせられている。
見たところ軽症者の方が多い。先に重傷者を治して、軽症者は後で一気に治した方が効率がいいと、歩みを進めながら状況を素早く把握していく。
「重症の人はどこにいるかしら」
近くにいる治癒師に尋ねる。
「重症者はこちらにおります」
治癒師に案内され向かうと、重傷者が一角に集められていた。
「……ひどいわね」
運ばれたほとんどが、四肢の一部を失っている者たちばかりだ。
「あんたは、治癒師なのか?」
一人の男がレイに声を掛けた。
恰好を見るに、彼は治療を受けた一人のようだ。
彼の側には、意識の無い重症の患者がいる。彼は寝ずに看病をしていたのだろう、隈がひどい。
「こいつ、右腕を損傷して、そのせいで熱が下がらなくて…。こいつを治せますか」
彼は、不安そうに聞く。
頼みの綱はレイだけだと目で訴える。
「これくらいなら何とかなるわ」
膝をつき、重傷者の手を優しく握る。
治癒魔法を使うために集中する。
「―生体蘇生。―癒しの力」
彼女が二つの魔法を唱えると、損傷していた騎士の右腕が優しい光に包まれると同時に徐々に腕が再生した。
癒しの力のおかげで熱も下がり、苦しそうだった表情も穏やかになった。
「あんたは聖女様か?」
付き添って騎士がそんなことを言った。
聖女とは、この国において最高峰の癒し手の女性治癒師を指す言葉である。
「聖女?そんな訳ないじゃない。ただ治癒魔法を使っただけよ」
レイは、当たり前のことをしただけなのに何を言っているのと、不思議そうな顔をした。
「うっ……」
治癒魔法をかけた騎士が、目を覚ました。
「おい!気が付いたか!」
「……っく、ここは……」
痛む頭を押さえる騎士。
まだ意識が朦朧としている様子。
「痛むところはある?」
「いや、大丈夫だ。……君は?」
声をかけたレイの存在に気づき、彼女の方へ顔を向けた騎士。
今の置かれている状況がよく理解できていない様子だ。
それもそうだ、今の今まで死の淵を彷徨っていたのだから。
「名乗るほどじゃないから、気にしないで」
「君のおかげで俺は、生きて戻ってこれたのか……。ありがとう、助けてくれて」
騎士は、死に際から戻ってこれた喜びに、笑いながら涙を流す。
「体力は回復できてないから、しばらく安静に」
そう言ってレイは、次の重傷者の手当てに向かった。
女神だと、言われているとは知らずに。
竜騎士たちをレイに任せたカインは、陛下のいるところへ向かう。
扉の前で立ち止まる。
「国王陛下、竜騎士団団長カイン・アルバート。ただいま帰還いたしました」
「入れ」
中から、低いどっしりとした声が返ってきた。
「はっ。失礼致します」
扉の前に待機している従事が扉を開ける。
開かれた扉の奥には、玉座に座る国王が見受けられた。
国王の顔は、ちょうど太陽が雲に隠されたため陰になり見えにくい。
カインは、国王のもとへ歩みを進める。
「よく帰還した。お前は、戦死したという報告を受けていたのだが」
「その件について報告したく、馳せ参じました」
跪くカイン。
「申せ」
「はい。私と、聖獣リリィは先の戦いで敵の攻撃を受け墜落しました。しかし、墜落した先で一人の少女に命を助けられ、ここへ戻って参りました」
「少女?」
「はい」
「その少女は、今どこにおるのだ」
「竜の間にいます」
「竜の間だと。城に勝手に入れたのか」
表情は変わらないが声に厚みが増した。
「陛下の許可を得ずに入城させた処罰は覚悟しております。」
「何故その少女を連れてきた」
「彼女は、生体蘇生が使える一人です。今は彼女の力が必要だったので」
「それの証拠はどこにある」
「リリィが彼女を認めたました。リリィは、とても観察眼が優れています。小さな感情の揺らぎを読み取れる彼女が、一人の少女を背に乗せたいう事がどれだけのことか、陛下であれば分かっていただけると思います」
「お前の話は分かった。その少女を連れ、その者に生体蘇生が使えることが分かる証拠も持って、もう一度こちらに来い」
「はっ」
「下がってよい」
「失礼致します」
カインは、そのまま立ち上がり竜の間へ向かった。
【森の愛し子~治癒魔法で世界を救う~】
を読んでいただきありがとうございます!
読んでいただいた方に癒しを
届けられたら嬉しいです( *´꒳`*)
この作品をより良いものにしたいので、
感想、ご意見、お待ちしております!
また、誤字脱字を見つけた方がいましたら、報告していただけると助かります。
不定期更新ではありますが、この世界観をのんびり楽しんでいただけると嬉しいです^^*
ブックマーク、評価もよろしくお願いします!/碧
作者のTwitter→@ao_rapis
主に小説の更新情報を発信しています!
カクヨム様にも同作品を投稿しております。
https://kakuyomu.jp/users/ao_rapis




