到着
「王都が見えてきた」
朝日はすっかり登り、生える雑草たちは朝露で煌めいている。
「そろそろ下に降りる。しっかり捕まっていてくれ」
「ええ」
カインは高度を落とすために、リリィの手綱を引く。リリィはそれを合図にカインたちに負担をかけないように徐々に下降し、二人は門の前に降り立った。
城門は、人力では動かせないほどの重たい木材を縦と横に複数組み合わせてあり、滑車で開閉させる仕組みになっている。
「どこの者だ!」
急に現れた聖竜に対して、門番が警戒態勢をとる。
それは仕方なかった。何故なら彼らからはカインたちが逆光で顔が見えないのだから。
カインが、リリィから降りて、門番に声を掛けた。
「驚かしてすまない。私だ。セレイム王国の竜騎士団団長カイン・アルバート、と言えば分かるか?」
「カイン様!?これは大変失礼致しました!ご無事でしたか!」
カインと分かった瞬間慌てて敬礼をする門番たち。
「ああ。彼女のおかげで助かったんだ」
カインはそう言いながら、レイを降ろすために手を差し出す。
「ありがとう」
レイはその手を取ってリリィから降りた。
「少女ですか?」
レイを見た門番は、不思議そうにカインに尋ねる。
「すまない、説明は後だ。現在の竜騎士団の負傷者の数は分かるか」
門番の質問を流しカインは負傷者の状況を聞いた。
「凡そではありますが、二百人弱の負傷者がおります。治癒師たちも全力を尽くしてはいるのですが。彼らの魔力量が底を尽きそうな状況です」
「負傷者たちの状況は」
「ほとんどは、癒しの力で治せる程度の傷ですが、四肢を損傷した者も一部います」
「そうか。レイ殿、君の力で治せるだろうか」
「話を聞く限りでは治せると思うわ。時間はかかると思うけど」
「ありがとう。私たちはこのまま城へ向かう」
「団長殿。本当にあの娘にできるのですか?」
門番が小声でカインに問うた。
「墜落した私とリリィを治したのは彼女だ」
カインは、信じろと強い視線を門番に向けた。
「っ失礼しました」
その眼光を向けられた門番はすぐに口を閉じた。
「先を急ぐ。リリィ、ここまでご苦労だった。休んでくれ」
カインはそう言うとリリィを召還陣に戻し、レイと王都の門をくぐった。
門を潜り、城下町を横切る二人。
「カイン様!ご無事でいらっしゃいましたか!」
国民の一人が叫んだ。
すると、瞬く間にカインたちの周りに人だかりができた。
皆カインの生還を涙し喜んでいる。
「ええ。私は無事です。心配をおかけしました。申し訳ありませんが、今は急いでおりまして、通していただけますか?」
町の人たちに、丁寧に接するカイン。
こういうところが国民から慕われている理由なのだろう。
「これはっ!失礼しました!」
カインの一声に民衆はすぐに道を開ける。
「ありがとうございます。事が片づき次第、改めてお伺いします」
石畳の道に、木組みやレンガ調の家が立ち並ぶセレイムの城下町を抜け、王城の前についた二人。
そこには二人の王城の門番の姿があった。
彼らの着る鎧の肩辺りには、カインが来ていた鎧にも在った紋章が刻印されている。
彼と同じ竜騎士団の一員だろうか。
「……!カイン団長でありますか!?」
カインのことにすぐに気が付いた一人の門番。死んだとされている人間が目の前に現れ、混乱している。
「ああ、カイン・アルバートだ」
「ご無事でしたか!良かった!」
二人の門番は泣いて喜ぶ。
「感動の再会といきたいところだが、悪い、急いでいる。負傷した竜騎士たちが今どこにいるか聞いているか?」
「失礼しました!負傷者は、竜の間におります。団長。その娘は?」
涙を拭う門番。
レイの存在に気が付いた。
「ああ。彼女が部下たちを救えるかもしれないんだ。だから来てもらった」
「王国の治癒師でも手をこまねいているこの状況を変えられるというのですか?」
明らかに信用できないという視線をレイに送る。
「ああ。死にかけだった俺を治してくれた彼女に、懸けてみる価値はあると思う」
「……カイン団長が言われるならば。お通りください」
「ありがとう」
不信感はまだあれど、レイは城内に入ることが許された。
「さすがは団長さん。国の人たちから信頼されているのね」
「まぁ、伊達に団長をしているわけではないからな」
「それはそうね」
開かれた門を二人は潜り、王城へ入っていく。カインの帰還に驚きや喜びの声、レイの存在を不審に思う声を後にして―
【森の愛し子~治癒魔法で世界を救う~】
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