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転生、豊臣秀頼  作者: 森部 かい
第1章 豊臣家を背負う者
2/9

02話 ひでよりだけど、秀頼じゃない!!

 ――――――

 

 「そこの君!」


 「は、はい!」


 豊臣秀頼(とよとみひでより)の今の状況を知っておかないとと思い、彼は小姓(こしょう)にいろいろと聞いてみることにした。


 「俺……わたし?いや、わし?んー、()(ちん)?……あの、俺って自分のことなんて呼んでたか知ってる?」


 「はい!(それがし)昨日(さくじつ)より秀頼(ひでより)様にお(つか)えする身となりましたゆえ、秀頼(ひでより)様ご自身からはお聞きしておりませぬが、おそらくは『われ』であるかと思います!」


 「なるほど……俺って言ってたらヤバイかな?」


 「や、やばいとはどういった意味なのでしょうか?」


 今は安土桃山(あづちももやま)時代の後期である。


 『俺』という一人称は鎌倉時代ごろから使用されていたとされているが、『やばい』という言葉の語源(ごげん)には諸説(しょせつ)ある。


 江戸時代の中期から後期からとするのが一般的であり、この時代にはまだ存在しない言葉であった。

 

 「あー、よくないかな?ってこと!」


 「そうですね……(おおやけ)の場ではよろしくないと思います」


 「なるほど……」


 彼は、不用意(ふようい)に現代口調(くちょう)を使って周りに不審(ふしん)がられないように気を付けよう、などと思いつつそのまま質問することにした。


 「ところで、今って何年なの?」


 「?」


 ご存じないのですか?って言われそう、と彼は思った。


 「……ご存じないのですか?」


 言われた。


 「あ、あのね、んー……これは()()なのだよ!そうそう、試験!」


 「な、何の試験なのですか?」


 彼は(くる)(まぎ)れの方法であっても、何とか自然に質問できるようにしたかった。


 「これは君が、われに(つか)えるに相応(ふさわ)しい人材かどうかを試すための試験です。なので正解を答えないといけません」


 「は、ははぁー!」


 ひれ()して返事をした小姓(こしょう)に、彼は少し(もう)(わけ)ない気持ちになりながらも試験という形で質問をすることに成功した。


 「では始めます。まずはお名前と年齢、誕生日をどうぞ」


 「はっ!(それがし)木村重成(きむらしげなり)と申します!歳は6つ、文禄(ぶんろく)2年6月10日生まれにございます!」


 木村重成(きむらしげなり)と名乗ったこの小姓(こしょう)


 (おさな)いながらしっかりとした物言(ものい)いができ、(やわ)らかい顔立ちで容姿端麗(ようしたんれい)、何でも(そつ)なくこなしそうな彼は、史実(しじつ)において秀頼(ひでより)からの信頼が厚く、重臣(じゅうしん)として扱われた。


 この世界では初めての秀頼(ひでより)の味方であり、今後あらゆる場面で(たす)(ぶね)を出してくれる事になる。


 ちなみに史実における生まれの月日(つきひ)は不明である。


 「ふむふむ、6さ……6歳!?」


 「はい!!」


 しっかりしすぎでは、と思い彼は驚いた。


 自分が6歳の(ころ)なんて、泣きながら我儘(わがまま)ばかり言って親を困らせていたのに……などと思いながら次の質問をすることにした。


 「えーと、われの誕生日と歳は覚えているかな?」


 「はい!!文禄(ぶんろく)2年の8月3日にございますので、(それがし)と同じで秀頼(ひでより)様は御年(おんとし)6歳であらせられます!」


 「なるほどね、じゃあ今は何年かな?」


 「はい!現在は慶長(けいちょう)3年の8月10日にございます」


 慶長(けいちょう)3年と言われても彼は全くわからないであろう。


 「慶長(けいちょう)3年……関ヶ原(せきがはら)の戦いが慶長(けいちょう)5年で1600年?だった気がする……てことは、今は1598年か?」


 ……!?……()(ぶん)である私に衝撃(しょうげき)が走る。


 実は頭良いのではないか?


 なぜあんなに勉強に苦労していたのか(はなは)だ疑問である。


 「1598年……よし、次の質問です。われの母上(ははうえ)の名前を言ってください」


 「はい!秀頼(ひでより)様のご生母(せいぼ)(よど)様、すなわち淀殿(よどどの)であらせられます!先程、秀頼(ひでより)様を起こしに来られたお方が、淀殿(よどどの)その人でございます!」


 「ほうほう、要するに今は慶長(けいちょう)3年の8月10日で俺は7歳、さっき起こしに来た綺麗(きれい)な女性が母親と……なるほど」


 「(しま)いにございますか?(それがし)は合格なのでしょうか?」


 そう言って重成(しげなり)は不安そうに秀頼(ひでより)を見つめる。


 「うむ!合格である。お主はわれに(つか)えるに相応(ふさわ)しい人材だ!これからよろしく頼む!!」


 「は、ははぁー!!!ありがたき幸せ!!」


 重成(しげなり)は目に涙を浮かべながら深く頭を下げる。


 秀頼(ひでより)はそんなにうれしいことなのか?と少し疑問に思ったが、喜んでくれているならそれでいいかと自分に言い聞かせた。


 「それにしても()()ねえ……」


 「どうかなされましたか?」


 「いや、確かに俺は()()なんだけどさあ……なんの偶然(ぐうぜん)なんだか……」


 「偶然(ぐうぜん)にございますか?」


 「ずっと()()()()()()()()()()って呼ばれてたけど違和感ないなあって思ってさ。様付けがちょっと、むずがゆいけどね?」


 「それは秀頼(ひでより)様は秀頼(ひでより)様ですから」


 なんのいたずらか、彼の名前は木下英頼(きのしたひでより)、漢字は違えども「ひでより」は「ひでより」である。


 「ひでよりだけど、()()じゃないんだよなあ……」


 「?」


 「まぁいいか、ていうかここってどこなの?」


 「またまたー、まだ試験の続きですか?ここは山城国(やましろのくに)伏見城(ふしみじょう)ですよ」


 「なにそこ、どこぉ……」


 ――――――


 やはり彼は何も知らない、この城で太閤(たいこう)豊臣秀吉(とよとみひでよし)が亡くなること。


 そして、慶長(けいちょう)3年8月10日時点ではいまだ太閤(たいこう)秀吉(ひでよし)存命(ぞんめい)なことも。

次回、「母上と朝ごはん」

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