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【短編小説】夢の音

作者: 八雲 鏡華

始めまして、八雲 鏡華と申します。

小説を書き始めて日の浅い新参者ですが、読者の皆様に楽しんで頂ける

作品を投稿できるよう努力していきたいと思っています。


今回の作品は「小説家になろう」での初投稿作品となります。

数分でお手軽に読める短編となっておりますので

是非、作品の最後までお付き合いして頂けると幸いです。

 夢の中では音がしないらしい。なんでも音というのは誰かが自分の存在を示したり、何かを伝えようとしたりと何かしら意味があるもので、意味の無い音というものは存在しないのだ。

 

 だから現実ではない曖昧な場所である夢の中には音が存在しないのだ。

 

 もし、夢の中で音が聞こえたとしたらそれはきっと何かがキミに重要な事を伝える為に干渉しているという事になる。もし……何の意味も見いだせない音があるとしたら残る可能性は悪意だけだ。


 ある朝、僕は目覚まし時計のジリリッというけたたましい音によって自宅のアパートで目を醒ます。目覚まし時計を止めて僕はのそのそと巣穴から抜け出す小動物のように布団から這い出る。

 

 空気がシンと澄んだ物静かで冷える朝だ。今日は久しぶりに会う友人との約束がある。湯気がユラユラと揺れる珈琲を啜りながら、友人との約束の時間が迫っている事を僕に知らせるアラート音が鳴っているスマホに視線を向けた。


 「おはよ」


 自分以外誰もいない部屋からそんな声が聴こえ、僕はぎょっとした。しかし、よく考えてみればそれは隣部屋の入居者である家族の子供の声が漏れ聴こえただけだったのだろう。どうやらまだ少し寝ぼけているらしい。

 

 早々に準備を終えた僕は待ち合わせのファミレスに向かうために自宅のアパートを出て、人の姿がほとんど無い道を歩いていく。途中でジョギングをしているご近所さんと鉢合わせして、お互いに会釈で挨拶を交わしてすれ違う。会社への出勤時の時も毎朝行われているルーティーンの一部だ。


 ファミレスにたどり着き、扉を開けて中に入ると中から僕を既に見つけていたのか店員よりも早く扉から一番近くの席から身を乗り出しながら友人が声を掛けてきた。


 「おーい、こっちだ」


 僕より先にファミレスに着いていた友人に案内され、友人とテーブルを挟んで向かい合って座っている。休日だからなのかどうかは分からないが、まだ早めの時間だというのに店内はそれなりに混んでいる。楽しそうな子供の声すら聴こえている。


 「しかし、本当に久しぶりだな。最近、連絡も取れてなくて心配してたんだぜ?」


 そんな友人の言葉を封切りにそれから僕たちは思い出話や世間話、なんて事はない他愛ない話で随分と話し込んでいた。夢の中の音についての話を聞いたのもその時だった。


 「普段は夢だと音は聴こえないんだが、体が疲れていたり精神的に追い詰められていたりすると音が聴こえたりするんだとよ」


 僕はその話を面白そうだと思い、興味深く聞き入っていた。


 「音が聴こえている時は何かしらの【異変】が起きているという事だ」


 遠くの席で子供が泣いている。


 「もしかすると【ナニカ】が夢に干渉しているのかもしれないな」


 はしゃぐ子供たちの声がすぐ横を通りすぎていく。


 「つまりそれが善意であれ、悪意であれ」


 子供たちが笑っている。


 「早く目を醒ませ」


 ジリリッ


 僕は目覚まし時計のけたたましい音によって自宅のアパートで目を醒ます。

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