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第5話

 次は選択科目か。教室を移動しなきゃならないのは面倒だ。移動先が遠いとトイレに行く暇もないからな。

 移動していると前方に歩いている女子がメモ帳を落としたが気付いていない様子。拾ってやるか。


「おい、落としたぞ」


「あ、ありがとうございます」


 どこかでみた顔だと思ったら、この前屋上に居た女子だな。改めて見ると身長はかなり低いな、150cm位か。黒髪のショートカットで大人しそうな雰囲気が伝わってくる。


「あ、前に屋上に居た」


「あのときは......すいませんでした」


 気まずそうな顔をしている。そりゃそうか、いじめに近いことをされている所を見られたわけだからな。


「まぁ、色々あるからな。俺も昔、女子に手を出したって冤罪をかけられたことがあるしな」


 なぜか今日は口が緩いな。彼女に共感でもしてるのかも知れない。彼女は興味を持ったのか眼を真っ直ぐ見つめてきた。


「黒鐘さんでしたよね。金髪で有名な」


 金髪は余計だ。


「ああ、そうだが」


「私は天宮 春(アマミヤ ハル)です。あの......良かったら、お話しできませんか?」


 身長差があるため仕方ないが上目遣いで見られると、少し照れるな。それにモジモジしているし。


「別に構わねぇが。って時間やべぇ。じゃあ、とりあえず放課後に図書館前でいいか?」


「わ、分かりました!」


 ダッシュで移動教室先へ向かった。




「あっ、黒鐘さん」


「もう居たのか、悪いな」


 バックのベルトを両手で持ち天宮が待っていた。授業終わりにすぐに向かったのだが、先を越されてしまった。


「私も今来たところです」


「話しって学校じゃないほうが良いよな?」


「は、はい。できれば」


 気にいってもらえるか分からんがあそこに行くか。


「コーヒーでも飲みながら話すか」


「お、お願いします!」


 店に行く途中、昔の知り合いに会った。面倒なヤツに会っちまったな。


「おいおい、誰かと思ったら元エースストライカーの勇牙クンじゃないか」


 急に話し掛けてきたコイツは、金剛 翔(コンゴウ カケル)。前の学校で同じサッカーチームだった。金持ちの息子だかで、甘やかされて育ったような、難ある性格をしている。今も変わらないらしい。


「あれ~、もしかして彼女? また前みたいにぶん殴ってるとか?」


 無視して店へ向かおうとしたが、意外にも天宮が口を開いた。


「黒鐘さんはそんな人じゃありません!」


 両手を握る天宮から精一杯の勇気を感じる。


「何コイツ、面倒くさ。まぁいいや。勇牙が問題を起こしてくれたお陰で俺が現エースストライカーになったからな。ありがとう、犯罪者クン。ヒャッヒャッヒャッ」


 天宮は唇を噛みしめ、握る拳はさっきより強くなっている。俺は笑っている金剛の肩に強く手を置いた。


「じゃあ、頑張れよ。エースストライカー。天宮行こう」


 金剛の顔の血管は浮かび上がり鬼の形相になっていた。煽り弱いのも変わらないな。


「良いんですか?」


「相手にしないのが一番だ」


 向かった先はカフェ 夕暮(ユウグレ)。行きつけの店でゆっくりしたいときはこの店に来ている。


「マスター、いつもの2つ頼む」


 店内はやや薄暗く、オレンジ色の照明がこの店の名前通り優しく輝く。マスターのオリジナルブレンドの香りは至福のときを感じさせてくれる。カウンターとテーブルがあり、カウンター席に座った。


「おっ、勇牙。その可愛い子は彼女か?」


「ちげーよ」


 天宮は俯いている。後で謝らないとな。


「そういえば話しって屋上のこと?」


「それもあるんですけど、黒鐘さんのこと聞きたくて」


 隠す必要もないしな。あんなヤツに絡まれたし。


「さっきのヤツが言ってた、まんまだよ」


「殴ったって......もしかして冤罪って?」


「そう」


 天宮に詳しく説明した。部活帰りに、教室に忘れ物を思い出して取りに行ったとき女子生徒と教師がもみ合っていた。仲裁に入ろうとしたら、女子生徒が教師を殴ってしまった。


「そしたら次の日、何故か俺がその女子生徒を殴ったことにされていた。女子の顔には傷一つ無かったけどな」


「酷すぎます。なんでそんなこと......」


「さぁな。その後俺は強制転校で翠櫻へ。俺に対しての悪い噂もすぐに広がった」


「黒鐘さんは良い人です! 屋上のときも助けてくれました!」


「いや、あれはただ......」


 静かに飯を食いたいだけだったのだが。


「誤解であることを知ってもらいたいです」


「別に気にしなくていい。天宮は大丈夫なのか?」


 心配したところで何もできない。変に介入しても彼女を苦しめるだけだ。


「あっあれは、別にいじめじゃないんですよ。ただ、部活が上手くいってなくて」


 天宮はバレーボール部で練習をしても中々上達しないためいびられているらしい。練習効率を上げるため退部を強要されているとのこと。身体が小さいし厳しいだろうな、世知辛いな世の中だ。


「天宮は続けたいのか?」


「それすらわからなくて」


 天宮はずっとコーヒーを睨みながら、思い詰めている。先を決めるのは彼女だ。俺ができることは。


「良かったらまた、話し聞くよ。ゆっくり先を決めて行こう」


「良いんですか? ありがとうございます!」


 時間も遅くなっているため、連絡先を交換して天宮を家に返した。

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