第4話
この、カニ男かなり弱い。攻撃は全て右腕のハサミによる大振りのみ。スーツのサポート無しでも簡単に避けることができる。
「くそっ、なぜ当たらない!」
喧嘩や武道をしたことがないのだろう。単調な攻撃を捌き、腹部へ強打を入れた。
「ぐふっ」
スーツの機能も相まって高い攻撃力を出せ、カニ男の甲殻にひびが入る。
「お前じゃ、俺には勝てない」
「ようやく、清徒会になれたんだ! 終わる訳にはいかない!」
諦めの悪いやつだ。人間に戻したら、清徒会についてとことん聞いてやる。
「じゃあ、今楽にさせてやる」
「Good end trigger standby」
フラフラに成りながらも走って向かってくるカニ男に拳を構えたそのときだった。邪悪な電子音声が鳴り響く。
「Bad end trigger standby」
何処からか黒い炎の玉が出現し、カニ男に命中した。
「ぎゃあ"あ"、あ"つ"い"ー」
何がどうなってやがる? カニ男に近付くも、炎が熱すぎてこっちまで焼かれちまう。
「クソッ!」
焼かれるカニ男の隣に、ペストマスクに黒いコートを纏った怪人が現れた。良く見ると、右腕に同じような変身アイテムが装着されている。
「パニッシャー......!」
「蒼霧、知ってるのか?」
「清徒会の処刑人です」
そんなやつも居るのかよ!
「ゆ"る"し"て"く"だ"さ"い"」
ペストマスク怪人は懐から拳銃を取り出し頭を撃ち抜いた。倒れたカニ男はそのまま焼かれ灰となり消えた。
「次は俺か!?」
「いやっ!」
怯える命と蒼霧を背にとっさに戦闘態勢を取るがペストマスク怪人は跳躍しその場を離れた。助かったのか?
「蒼霧お前の知る全てを教えてくれ」
「分かりました」
いつもはニヤついている蒼霧だが、このとき遠い過去を見るような悲哀を感じる表情をしていた。
「一旦部室に入りましょう」
「命、大丈夫か?」
肩に手を乗せると命の身体は震えていた。姿はモンスターであっても、目の前で人間が焼き殺された。ビビるのは当然だ。これ以上命を巻き込む訳にはいかねぇ。
「私は......大丈夫だから」
空回りの笑顔が虚しく感じた。コイツのこんな顔を見ると胃がキリキリした。
「いや、お前は帰れ。無理するな」
「黒鐘君、送ってあげてください。清徒会については電話でもできます」
「ああ、そうだな」
「ごめんね」
「なんでお前が謝るんだよ」
互いに連絡先を交換し命を家まで送り届けた。
「俺から先に掛けた方がいいよな、うーん」
転校してから初めて、連絡先を交換した。他人と電話するのも久しぶりで緊張する。スマートフォンと睨めっこしていると、バイブレーションが作動した。
「うおっ! って蒼霧か。ごほん、黒鐘です」
「どうも、どうも、蒼霧です~」
いつもの蒼霧のノリだ。でも、何故か安心する。
「じゃあ、清徒会について説明します」
「おう」
「僕は以前、清徒会の一員だった。そこら辺から説明しますね」
蒼霧は天才的な頭脳を買われ、清徒会に誘われた。必要な最新型の機材を与えられ、ひたすらに実験に没頭したが、その実験結果を清徒会に悪用されてしまった。変身アイテムはカウンターとして、発明したとのこと。
「超獣になる薬と中和剤は、現状僕にしか作れません。僕を消さない理由はそこかと思います」
「なんでそんな薬を作ったか聞いていいか?」
間を空け蒼霧は答える。
「人間の可能性を切り開きたかったのです。ですがこんなことになるなんて思っても見なかったです。ライドブレイバーシステムは僕の贖罪なんです」
徐々にテンションが下がる蒼霧。こっちまで滅入るぜ。
「清徒会メンバー全員にげんこつだ」
「え?」
「パニッシャーからも守る」
命のあんな顔二度と見たくない。
「蒼霧はみんなを守る道具を作れ。俺がそれを使う」
「ハッハッハ!」
「なんで、笑う」
「やっぱりキミは凄いな」
また妙なことを言う。食えないヤツだ。
「分かりました。僕とキミで一緒に戦いましょう」
「おう!」
対清徒会チームの結成だ。