第3話
あれから1週間程経つが代わり映えしない日々が流れている。学校でモンスターが暴れていたのに警察の介入がないのは清徒会の力だと蒼霧は言っていた。命は清徒会の悪事を暴くと躍起になっている。
「先生は信じていたぞ、黒鐘!」
「えっ! うそ、あれ黒鐘?」
「人殺しの黒鐘?」
そしてなぜ俺が注目を浴びているか。それは髪を黒くし、オールバックをやめたからだ。別に、命のダサい発言を気にした訳じゃないぞ。ただの気分転換だ。てゆーか、金髪のオールバックダサくないよな? あと俺は人殺しなんかしてねー、ぶっ飛ばすぞ。
クラスでの視線は止むことがない。落ち着かねー。ヒソヒソ話が聞こえてくる。
「黒鐘君って、意外とイケメンだよね」
「スタイルもいいよね、筋肉質だし」
「私、連絡先聞いちゃおっかな」
ま、まぁ悪くないかな。たまには。しかし、同時に殺気も感じる。
「黒鐘の野郎、なんだよ。ギャップ萌えか。ギャップ萌え狙いなのか!」
「この前、中庭でゴミ拾いしてたらしいぜ」
「マジか!? 女子に注目あびれるなら明日から俺もするぜ!」
と、まぁ忙しい状況になっている。ただ髪型変えただけだっつーの。
「でか男、おはよう!」
「おはよう。って、でか男は止めろ!」
命は驚いた顔をしている。俺が髪型変えたのそんなに変か。
「普通に挨拶返したの初めてだよね。驚いちゃった」
言われてみればそうかも知れない。
「それに腕の機械、蒼霧君のだよね」
例の変身アイテムを蒼霧から預かっていた。あのモヤシが持っていても使えないしな。
「まぁな、一時的に預かっているだけだ」
「ふーん」
なんだその眼は。仕方なくやっているだけだ。
「で、清徒会について何か分かったのか?」
清徒会の奴らは特別待遇を受けており、通常のクラスにはいない。授業はロイヤルクラスと呼ばれるところで行われているらしい。だから普段滅多に会わない。
「ごめーん、全然わからない」
だろうな。命と会話していると、クラスが急に静まり返った。
「清徒会に何か御用ですか?」
白い学ランに長い黒髪を後ろで結んでいる男が隣にいた。気が付かなかった。
「清徒会長!?」
命が声を震わせる。こいつが? このスカした野郎が? 丁度良い。
「あぁ、丁度会いたかったところでしたよ」
「私の熱烈なファンですか? サインはどこにしましょうか?」
いい機会だ。少し挑発しておくか。
「ちげーよ、あんたらの悪事を暴こうと思いましてね。蒼霧が言ってましたよ。裏でいやらしいことをしているって」
「面白い噂話ですね。良く見たらキミ、金髪の転校生じゃないですか? あの髪型止めたんですね、似合ってましたよ」
「そりゃどーも」
お前には分からんだろうな、あの髪型の良さは。
「会長も似合ってますよ、白い学ラン。白すぎてあんたの黒さが浮き出ないように気をつけてください」
清徒会長は不気味な笑顔を変えない。あまり効いてないか。
「ご忠告どうもありがとう。ああ、そうだ蒼霧君に伝えて置いてください、落ちこぼれはこの学校には要らないと」
「なんだと」
反射的に手を伸ばすが命に止められた。
「でか男、止めて!」
「落ちこぼれの友人も落ちこぼれですね。皆さんも気をつけてください。では」
笑いながら教室を去っていく会長を睨み付けることしかできなかった。
「なんでわざわざ来たんだろう?」
「蒼霧と俺達が接触したからだろう。清徒会長直々にってのが気になるが」
やるなら手下にさせればいいものを。それだけの余裕があるってことか、舐めやがって。蒼霧が清徒会に狙われないのも気になる。前ははぐらかされたが詳しく聞く必要があるな。
「また蒼霧の所に行くしかねぇな」
科学研究部へ行くと、蒼霧の他に眼鏡を掛けた学生が1人居る。白い学ラン、清徒会だ。きっちりとした七三分け、いかにも、がり勉って感じのやつだ。
「よっ! 蒼霧」
「おや、あなたは。 ふっ、落ちこぼれの元金髪か」
「お前こそ、清徒会がなんのようだ?」
「ライドブレイバーシステムを頂きに来ました。君たちには相応しくない。あの方にこそ相応しい!」
ライド......なんだって? 右腕に着いている変身アイテムのことか?
「じゃあ、どうぞ。なんて素直に言うか。つか、誰だよあの方って。」
「知る必要はない。私との決闘に破れ全てを失うのですから」
「蒼霧! 命! 離れてろ!」
やべっ。どうやって使うんだ? あの時は必死すぎて覚えてない。
「では私も」
なんだあれ、注射器か? 首に刺しやがった。遠くで蒼霧が何か言ってるな。
「黒鐘君! 右手を天に掲げ叫んで下さい! ブレイブソウルインと!」
なん......だと......。高校生になってそんな台詞を言わなければいけないのか。恥ずかしすぎる。でもやらないと、2人が危険だ。黒鐘 勇牙、男を見せるときだ。
「ぶ、ぶれいぶ、そうる、いん」
「声が小さいでーす!」
やればいいんだろ!
「ブレイブソウル! イン!」
右腕の変身アイテムが輝き、光が身体を包んだ。全身に機械のスーツが装着される。両腕を見ると黒地のアンダースーツに紺色の装甲が着いている。顔を触るとフルフェイスのヘルメットみたいになってるな。
がり勉の姿も変わっている。赤い甲殻に覆われ、右腕はハサミになっている。さしずめ、カニ男か。
「これで私も認められる、エデンナイツに!」
「泣くことになっても知らねーぞ!」
こうして清徒会との戦いが始まった。