豪商の『アクゼン屋』
僕とネコバンバさんが、隣の体験会の所までやってくると、ちょうど老人の人がやっていたバルーンビスケットが終了した所だった。
「いやー、これは難しいですねぇ。十回も出来ませんでした」
歩きながら見ていたけど、ご老人はバルーンビスケットを上手く斬れず、早々に終わってしまった様だった。
「お次の方はどなたですか」
「オレオレ」
「ではお渡しします」
ご老人は、そう主張するプレイヤーにバルーンビスケットを渡した。
その人がバルーンビスケットを始めた所で、くるりとその場で向きを変え、こちらを向く。
「ここの責任者の方ですね」
近づいて来た僕に、ご老人はそう言った。
横にネコバンバさんも居るのにね。
まあ、バルーンビスケットの体験会云々で言うと、僕が責任者で合ってはいる。
「えーと、一応そうです。コハマルと申します」
小柄で微笑みを見せるご老人に、僕は頭を下げて挨拶をした。
よくよく見ると、背を丸めずに真っすぐ立っている人だった。
杖も持っていない。
一本筋の通った、とか言う感じで、足腰が丈夫そうな人だなと僕は思った。
「これはこれはどうもご丁寧に。『アクゼン屋』という万屋を細々とやらして頂いております、カネナシと申します」
同じように頭を下げてカネナシさんは僕にそう言った。
「アクゼン屋のカネナシさんですか」
「はい。どうぞ宜しくお願いいたします」
アクゼン屋って・・・・・・漢字だと『悪』と『善』でアクゼンなのかな?
良く見ると服にも漢字でそう書いてある様だし、それで合っているみたいだ。
商売事をする名前じゃない気がするけど、ネコバンバさんが言うには豪商だという話だ。
「バルーンビスケット・・・あれは中々にいい物ですねぇ。普段、私は店から外へ出ませんで、運動不足気味でしてね。良い運動になりそうなので一つ欲しくなりましたよ」
そう言ってニコニコと笑顔を見せるカネナシさん。
恵比須顔って言うのかな。
話している最中もずっとにこやかに、今やったバルーンビスケットの事をカネナシさんは語った。
「気に入って頂けて何よりです」
「オークションで競売にかけると聞いております。数日後にオークション、楽しみに待たせていただきますね。では・・・」
「待てやこら」
その場から立ち去ろうとするカネナシさんを強い語気でネコバンバさんが引き留めた。
「おや・・・・・・なんで御座いましょうか?」
「さっきのアホはお前が寄越したんやろ。白状せえや」
ネコバンバさんは迷惑者たちの事を言っているみたいだ。
このご老人・・・・・・カネナシさんが体験会の邪魔をさせるために寄越した人たちだったと言いたい訳か。
それっぽいけど、なんて答えるのかな・・・・・・ちょっと様子を見よう。
「・・・・・・」
「なんや、黙ったままか? ほんなら肯定と受け取るがそれでええか?」
「・・・・・・今、少し考えてみたのですが」
「なんや?」
「どちら様でしたでしょうか? 思い出せませんで申し訳ない」
そう言ってぺこりとカネナシさんは頭を下げた。
「こっ・・・・・・何度も会っとるやろがい!」
「そうでしたか。見た通りの老いぼれで御座いまして、最近記憶も抜け落ちやすくてですね、大事なこと以外は直ぐに忘れてしまうんですよ」
・・・・・・これはあれだな。
カネナシさん、ネコバンバさんの事からかっているっぽいな。
大事な事以外って言ってるのも、ネコバンバさんの事は大事な事ではないという挑発なんだと思う。
「・・・・・・露店街の代表として、オークションでの商店街側からの出店の打ち合わせとか一緒にしとったはずやけどなぁ。思い出せんかぁ、歳は取りたくないものやねぇ」
ネコバンバさんも言い返す気満々みたいだな。
「商店街側の代表がこれやと、出店の管理も上手くまとまっとらんのとちゃうか? なんなら商店街側の出店も仕切りますがどうですかね?」
「ああ、思い出しました。よくよく考えれば露店街側の代表の方でしたね」
「白々しいわ、このアクゼン屋が」
「露店街の『ネコさん』でしたね。いつものように「にゃ~」と鳴いていないので気づきませんでした」
「ネコさんと訳すな! ネコバンバや! それにいつもそんな猫みたいに鳴いとらんわ!」
「そうでしたっけ? いや~、記憶力が曖昧でしてねぇ」
「ウチをからかうのも、その辺にしときや」
ふと、後ろに気配を感じ振り返ると、腕組みした商人風の人たちがネコバンバさんの後ろに集まっていた。
何人かはオークションの話をした時に集まった商人の人たちだった。
ネコバンバさんの後ろからカネナシさんに圧をかける様に睨みつけている。
「・・・・・・何してるんですか?」
気になって、前に会った事がある人にこっそりと尋ねてみる。
「ネコバンバにチャットで呼ばれてな。『ウチの後ろに集まれ』とさ」
「・・・・・・ぱっとみヤクザの親分見たいですね、ネコバンバさんは。ご老人をいじめる様な構図にも見えますけど」
「普段はしねえがアクゼン屋が相手だからな。少しでもビビらせときたいのは俺も一緒だよ」
「・・・・・・みなさんもカネナシさんと仲が悪いみたいですね」
どうやらここに居るプレイヤーの商人の人たちはカネナシさんと因縁が何かあるみたいだ。
あんまし深入りはしたくない話な気がするなぁ。
「おやおや。人を集めて何をするおつもりで?」
「別に何かをするつもりはないで。ただちゃんと返答をして貰お思うてな」
「返答と言いますと?」
「あのアホ共はあんたの差し金やろって話や」
「まず、その『アホ共』が何なのか、私は知らない訳ですが。その人たちが何をした訳ですか?」
「・・・・・・説明したるわ」
ネコバンバさんは先ほどの三人組がやった事をカネナシさんに説明した。
バルーンビスケットをタダで貰おうとしていた事や、刀を抜いて斬りかかった事とかだ。
「・・・・・・なるほど、良くわかりました。最後はコハマル様がバルーンビスケットで覚えられる心刀技術で相手を打ち据えて捕まえた訳ですね」
様付けて呼ばれるのは小恥ずかしいな。
一瞬、視線が僕に集中したので、恐縮しながらお辞儀をしておいた。
「そや、わかったか? 全部あんたの仕込んだことやろ」
「違いますよ・・・・・・と否定しても納得して頂けないんでしょうね」
カネナシさんがネコバンバさんの周りに集まった人たちを見廻りながらため息を吐いた。
「さあ? どうやろなぁ」
「否定し続ければ暴力にでも訴えそうな顔をしてますよ、ネコさん」
「訳すな言うとるやろ」
「歳のせいか舌も回り辛くなってましてねぇ。名前の簡略化はご勘弁願いたいですねぇ、ネコさん」
「・・・・・・ならこっちも『アクさん』言うがええよな。悪徳商人らしい名前やし、呼びやすいわ」
「別にかまいませんが・・・・・・ネコさんも若くなかったんですねぇ」
「なんやと?」
「舌の回りが良くないから訳して呼ぼうとしている訳ですよねぇ。まあ、お互い老人という事で仲良くやって行きましょう」
・・・・・・これはダメだな。
何を言ってもカネナシさんの言い返しにやられている感じだ。
「このボケホンマ!」
掴みかかりに行く様にネコバンバさんが一歩前に足を出した所で、間に割って入る人が居た。
「暴力を振るうのは、流石に止めないとなんでね」
「くっ、アクゼンの護衛か」
「一応雇われ護衛ってやつだ。やるってんなら俺が相手をしないといけない訳よ」
肩を竦めながら心刀使いの男はそう言った。
「ほぉーん。そうか」
「結構強いですよ、彼」
護衛の後ろから顔を出して、カネナシさんはそうネコバンバさんに言った。
「アクゼン屋さんや。そう言う挑発まがいの事をするのは止めて頂きたいんだけど」
「本当のことを言っただけですよ」
「まったく・・・・・・」
心刀使いは頭を振ってやれやれとため息を吐いた。
「・・・・・・ええで」
「ん、なんだって」
ネコバンバさんの呟きに心刀使いが尋ねる。
「そっちがそいつを出すのなら、こっちも切り札を出すって言うとるんや!」
大声でネコバンバさんはそう言った。
・・・・・・ん、もしかして。
「出番やで! コハマルはん!」
「・・・・・・チョップ」
相手を指さして、さあ行けと煽るネコバンバさんに、チョップをかました。
「あたっ! コハマルはん、相手はあっちやろ! なんでウチを殴るんや!」
「何で僕が出る流れになってるんですか」
「こっちで一番強いからやろが」
「やるなら勝手にやってくれませんかね。それに国の中で暴れたらさっきの三人組見たいに捕まりますよ」
「そんなん・・・・・・通報されんかったら平気やろが」
「僕が通報しますよ。面倒くさいですけど」
流石にこれ以上訳わかんない事に巻き込まれるのは勘弁だしね。
「ネコバンバ。そろそろ引き時だろ」
「流石にこんな事で捕まるのは馬鹿らしいと思うぞ」
集まって来た露店街の商人の人たちも、暴走気味なネコバンバさんを引き留めようとしている様だった。
「・・・・・・はあ・・・わかった。今日の所はこの辺にしとくわ。散れ、散れ」
いいながら後ろの商人たちを追い払う様に、手で物を払う仕草をする。
ばらばらと、集まっていた商人たちは解散して言った。
「コハマルはん、これでええんか」
渋い顔をしながらネコバンバさんが尋ねてくる。
「変な争いにならなくて良かったですよ」
「そうか? 俺はコハマルとやり合っても良かったけどな」
と、護衛の心刀使いの人が僕にそう言ってきた。
「・・・・・・嫌ですよ。普通に負けると思いますし」
「やってみなけりゃわからんと思うぞ。バルーンビスケットの点数勝負でもいいが」
「それだと100%負けると思いますよ」
「・・・・・・なんや? 知り合いか?」
横で話を聞いていたネコバンバさんが、話している僕たちの様子にそう尋ねて来た。
「まあそうですね。一度会ったことがあるんで」
「こっちは忘れられてるかなと思ったんだが、そうでもなかったか」
「バルーンビスケットであんな点数出した人を忘れたりしませんって」
確か『368斬りバルーン』とかだったはず。
今の僕には雲を掴むとかそんな感じの記録だよなぁ・・・・・・
「自分も忘れられていると思ってたんですけどね」
「結婚式の時、タカサ兄やんがずっと話してたからなぁ『今の弟子は良い子だぞ~』ってさ」
「えー、それはちょっと、恥ずかしいですね・・・・・・お久しぶりです、フクローさん」
「まあ、そこそこ久しぶりだな」
そう言ってにかりと笑って見せた。
護衛の人は、タカサ師範の結婚式の時に会ったフクローさんだった。
確か、時々護衛の仕事をしてるとか言ってたけど、今日がその日だった訳ね。
「アクゼン屋さんの護衛だったんですね」
「今日はな。他の所の護衛をやる時もあるよ」
「そうなんですか・・・そう言えば雇われ護衛とか言ってましたね」
「一日だけ護衛をする仕事の事だな」
何と言うか、フリーター見たいなものなのかな?
「本当なら一日だけと言わずに、正式に護衛として雇いたいんですがねぇ。首を縦に振ってくれないんですよ」
カネナシさんが何処か残念そうにそう教えてくれた。
「そうなんですか」
「毎日護衛するのなんて俺はヤダからな。修行できなくなるし」
「確かそんな事も言ってましたね」
お金が無くなった時だけ仕事する的な事を言ってた気がする。
自由人って感じなんだろうな、フクローさんは。
「んで、アクゼン屋さんや。もういいの?」
「そうですね、そろそろ帰りましょうか・・・・・・と、その前に」
カネナシさんが僕の前までやって来た。
何だろうか?
「二三質問させて頂いても宜しいでしょうか」
「ええ、いいですけど・・・・・・」
「今回の一件、損をした人は誰でしょう?」
損をした人?
「損をした人が誰かですか?」
「はい」
「えーと・・・・・・」
何でこんな事を聞くのかはわからないけど、ちゃんと答えておいた方が良いかな。
「・・・バルーンビスケットの体験会で遊んでいた人たちですかね?」
「何故そうお思いに?」
「例の三人組を相手にしていた事で気分を悪くした人も居ますし、三人に時間を取られたって思う人も居ると思います」
遊べる時間には限りがある訳だしね。
そう言う意味では、損をしたのは体験会に来た、今いる人たちだと思う。
「では得をした人は誰でしょう」
「得をしたのは・・・・・・バルーンビスケットを売る側の人、ですかね」
「それは何故?」
「最後、僕が前方対峙歩行術で縮地を使って来た相手を対処したからです。見てた人には有効なスキルだとわかって貰えたと思いますし」
まあ、見ていた人もあまり多くはなかっただろうから、そこまで得をしたとは言い切れないかな・・・・・・どうだろうか?
「なるほど、わかりました。では最後にもう一つ」
「はい」
「私はこの件で、何か得をしましたか?」
うっすらと。
恵比須顔のカネナシさんの目が一瞬、開いたように見えた。
寒気が走る。
「えっと・・・・・・」
寒気は一瞬だけだったが、少し身じろいでしまった。
今は、質問の返答を考えよう。
カネナシさん・・・アクゼン屋さんが得をした所か。
・・・・・・特に思いつかないんだけど、何か得をしたのかな?
ネコバンバさんは、三人組を寄越したのはアクゼン屋だと言っているけど、どっちかと言えば、得をしたのはバルーンビスケットを売る側のネコバンバさんの方が得をしたように見える。
けど、アクゼン屋さんの今の言いようだと、何かを得していると言っている様な気がするんだけどなぁ・・・・・・
ネコバンバさんが得をした事で、アクゼン屋さんが得をする何かがあるのか?
「・・・・・・ちょっとこっちからも質問良いですか」
今のままではわからないので、ヒントを増やすべく、そう聞いてみる事にした。
「もちろんいいですよ」
「ネコバンバさんと・・・というかプレイヤーの商人と仲が余り良くないみたいですけど、何があったんですか?」
「ああ、その事ですか。簡単に話しますと商店街にある店に悪さを働いたので、お金でボコっただけですよ」
軽く左右の拳を振るってアクゼン屋さんはそう話してくれた。
「お金でボコった、ですか」
「プレイヤーの商人の方でも商店街でお店を開く事が出来るんですがね。その為にはその土地を店主から買わなければいけないんですよ」
「なるほど」
「プレイヤーの商人の方々は出来るだけ安くその土地を買おうとしましてね。色々と悪さを働いた訳です」
「・・・・・・立ち退きを強要するような事をしたって事ですか?」
「そういう事です」
完全にヤクザな事やっていた訳か、ネコバンバさんたちは。
「そう言った行為をするプレイヤーがいると、私の所に相談が来まして、それで私が一肌脱いでみた訳ですね」
「なるほど・・・・・・そんな事があったんですね」
ちらりとネコバンバさんの方を見る。
苦虫を嚙みつぶしたような表情をしているので、概ね話している内容で合っているっぽいかな。
「ネコバンバさん、何か言い返す事はありますか?」
「・・・・・・そうやなぁ。言っとる内容はあっとるけど、これだけは言わせて貰うわ」
「言い返せる内容なんて、ないと思いますが?」
「ウチらは確かに悪かった。けどその悪を潰した奴らが悪やない訳ではないんやで、コハマルはん」
「・・・・・・毒を持って毒を制する、って事ですか」
この場合は悪を持って悪を制する、かな。
「こいつのせいでジダイに居た七割のプレイヤー商人が辞めたり、他の国に移ったりした訳や」
「ネコさん達の自業自得だと思いますがねぇ」
「うっさいわボケ」
吐き捨てる様に言ってそっぽを向くネコバンバさん。
「・・・・・・何と言うか、嫌いなんですか? プレイヤーの商人が」
ふと、思いついた事をそのまま尋ねてみた。
話を聞いていた限りだと、アクゼン屋さんはどうにも、プレイヤーの商人に対してかなり厳しくしている様に感じた。
「そうですねぇ・・・・・・嫌いですね、プレイヤーの商人は。心刀使いの方や他の職業のヒューマンの方などは嫌ってはいませんけど、商人は別ですね」
あっさりとそう言い放つアクゼン屋さん。
「嫌いな理由って、今の話の事があったからですか?」
「それもありますけど、いきなり現れて勝手を始めるんですよプレイヤー商人は。管理している側としては迷惑以外の何物でもないですからね」
「管理、と言いますと」
「まあ、商店街の方の元締めみたいなものをさせて頂いてまして」
「なるほど」
「悪の元締めや」
ネコバンバさん、ちょっと黙ってて。
「じゃあプレイヤーの商人はいらないって訳ですか」
「現状はそうですねぇ。こちらのルールに従って頂ければ教えもしますし働かせもしますけど、そういうの嫌だという人ばかりですので」
「ジダイのNPC商人の人たちにとっては、いらない存在な訳ですね」
「困った人たちですよ。先ほど見たいに脅しをかけてきたりで」
「なるほど、じゃあ最終的に・・・・・・あ」
そこまで言って、思い至った。
「・・・・・・なんや? どしたん?」
「いやあの・・・・・・最終的に得をするかもなぁと思いまして」
「得をする?・・・・・・何が得やねん」
「えっとですね。現状、プレイヤーの商人はジダイで商売をするのが厳しい状態ですよね」
「そうやって言っとるやろ」
「それが続く場合、ジダイからプレイヤー商人が居なくなると思うんですよ」
「なにを言うとるんや。ウチは戦い続けるつもりやで」
「別にネコバンバさんが残るくらいならいいんですよ。けど、締め付けが強くなったら他の人は別の所に行くと思いませんか?」
「まあ・・・人数は少なくなる可能性はあるけど」
「そうなった場合、オークション、少なくなった人数で管理できますか?」
「・・・・・・へ?」
ぽかんと口を開いて固まるネコバンバさん。
飛躍しすぎな話かもしれないけど、アクゼン屋さんはちょっとずつ、プレイヤー商人を減らそうとしているのではと僕は思った。
「さっきの後ろに商人の人たちを呼んだのですけど、アクゼン屋さんはそうするとわかってたんじゃないですかね。前に同じような事をしたとかありません?」
「・・・・・・アクゼン屋が来たら、大体あんな感じなのやっとるけど」
「あれどう考えてもネコバンバさん側の印象が悪くなると思いますよ? 見ている人は少なくても、見ていた人はどっちが悪者かって考えたらネコバンバさん側をそう見ると思います。ネコバンバさんがやろうって言って始めた事なんですか? あの集まって圧をかけるのは」
「いや・・・・・・他の奴が提案してやり始めた事やったはず・・・多分そうや」
「その人は今、商人やってるんですか?」
「やってるかどうかはわからん・・・・・・他のキャラやるとかいっとったと思うけど」
「じゃあアクゼン屋さんに雇われた人だったかもですね。印象を悪くするために」
「え・・・・・・マジで?」
「妄想じみた憶測ですけどね」
「・・・・・・」
怖がっている様な表情でネコバンバさんがアクゼン屋さんを見る。
恵比須顔でアクゼン屋さんはこちらを見ていた。
「それで・・・・・・私はこの件で、何か得をしましたか?」
笑みを浮かべるアクゼン屋さんが、再び僕にそう問いかけた。
「得をしたって所は・・・・・・ネコバンバさん達の印象を悪くした所、ですかね。ネコバンバさんが商人を呼んで、ああやって圧をかけている所を他の人たちに見せるのが狙いだったんじゃないかと思いました。プレイヤーの商人の印象が悪くなれば、それだけ締め付けを増すことが出来るとか? 豪商だと聞いてますし、国に働きかけたりして、お金で殴るんじゃないですかね?」
「豪商とは。私はそこまでの商人ではないですよ、コハマル様」
「ですかね。最終的な目標としては、プレイヤー商人をジダイから締め出す事だと思います。その前にオークションの乗っ取りですかね」
「オークションの乗っ取りやとっ!」
驚きながら叫ぶネコバンバさんをあえて無視して、僕は話を続けた。
「現状だと露店街の商人でなんとか出来るみたいですけど、商店街からも食べ物の露店を出すみたいな事を聞いてますし、プレイヤー商人が減ってきたら運営もやり始めるのではないでしょうか」
「そうですねぇ、夢がある話ですね」
「まあ、九割九分が憶測みたいな話なんで、アクゼン屋さんは気にしないと思いますけど」
こういう憶測の話って、何だかんだ僕的には好きだったりするんで、考えちゃうんだけどね。
「いえいえ、中々面白い発想のお話でした。話に出て来たアクゼン屋も中々悪い奴ですねぇ」
自分でそう言っちゃうのか。
まあ、他人として捉えてる言い方だったけど。
「どっちかと言うとプレイヤー側が悪いから、そういう事をしているのではと思いますけど・・・・・・」
「そう思いますか?」
「憶測の話なんで、なんとも」
「そうでしたねぇ・・・・・・では、そろそろお暇させて頂きます。機会がありましたら商店街にある『アクゼン屋』をお尋ねください。万屋ですので色々と取り揃えております。欲しい物がありましたらお安く致しますので御贔屓に」
そう言ってぺこりと頭を下げると、アクゼン屋さんは護衛のフクローさんを連れて帰って行った。
いやー・・・・・・色々と疲れる時間だったなぁ。
「帰りましたね、アクゼン屋さん」
「・・・・・・」
ネコバンバさんに話しかけたが反応がない。
さっきの憶測の話で怖くなったっぽいけど、大丈夫かな?
「ネコバンバさん?」
「・・・・・・あいつこわっ!」
うん、それは確かに、僕もそう思う。
商人のラスボスって感じだったなぁ、アクゼン屋さんは。
「人を陥れる事しか考えとらんやんけ!」
「それはネコバンバさんも・・・って感じに思いましたけど」
「どないする・・・・・・いや、引くのは腹立つからせんけど・・・・・・せや、コハマルはん」
ぶつぶつと何かを呟き始めたネコバンバさんが、僕の名を呼んだ。
「なんですか?」
「あいつどっかで拉致ってこられへんかな? 死に戻りされると厄介やし、監禁して閉じ込め続けるんが最良やと思うんやけど?」
ずびしっ。
「あいたー!」
「何を言っているんですかぁ、懲りない人すぎますよ・・・・・・ほんとにもー」
立ち直って悪だくみを始めるネコバンバさんに、ため息を吐きながらチョップする僕だった。
ここまでお読みいただき有り難う御座います。
何とか書けたー。
時間もないので見直しは明日で・・・・・・最近こればっかな気がする。
ではまた次回・・・




