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道場街を見て回る その二


 突っ込み所は多々あるがまあちょいと聞いとけ。


 ある時、このベナミヤの世界に外の神『ウンエー』がやってきた。

 ウンエーはベナミヤにいる神々にお願いごとをした。

 そちらの世界に異世界人『プレイヤー』を送りたいと。

 ベナミヤの神々はいきなり現れた外の神のお願いを一度は断った。

 しかし、ウンエーは諦めず、誠心誠意心を込めてお願いを続けた。

 ベナミヤの神々も最後にはウンエーの熱意に打たれ、話し合いの末、一年間の準備期間の後に異世界人を迎える事となった。

 期間は十年。

 その間、ウンエーの力を使い、ベナミヤの世界に様々な祝福を施した。

 まず一つ目の祝福として、この世界の住人達から怪我による死を取り除いた。

 プレイヤーと同じ、リスポーンする祝福を与えたのである──


「≪──ってな感じよ。ヘルプに載ってるから続きが気になるなら見るといいぞ≫」

「≪なんか、色々と言いたいことはありますが、何というか、かなり端折ってる内容な気がします≫」


 外の神『ウンエー』って・・・また安直な。

 それに熱意に打たれてとか言ってたけど、なんか裏がありそうな内容に聞こえた。

 どういう裏かはわからないけど・・・ヘルプでちゃんと読めばわかるかな。


「≪だなぁ。まあ一番わかりにくいリスポーンする理由は載ってるから≫」

「≪こういうの説明ってゲーム始めた時とかに流れるものだと思うんですが≫」


 そういえばオープニングとか特になかった。


「≪ヘルプを見ないとわからん情報になってるな。知ってるプレイヤーは半分くらいじゃね?≫」

「≪修正案件なのでは?≫」

「≪オープニングを作った方がいいってか。運営に修正依頼をするときはシステムからどうぞ≫」

「≪・・・自分がですか≫」

「≪俺はめんどい≫」

「≪・・・気が向いたらってことで≫」

「≪OK。とりあえずチャット切るか≫」


 ヤルゼさんと僕は、二つ目の道場で見学をしている最中だ。

 見学しながらリスポーンの話をするのは不味いので、パーティの機能で喋らずに説明するとヤルゼさんが言い出した。

 『脳内チャット』という機能だ。

 頭の中で思ったことを相手に伝える機能で、パーティを組んでいれば遠くからでも聞けるらしい。

 ちなみにパーティでなくても『フレンド』になっていれば脳内チャットを使えるらしい。

 フレンドもシステムから行える。


「・・・で、どうだ。ここの道場は」


 脳内チャットを切ってヤルゼさんが話しかけてくる。


「そうですね・・・」


 屋外にある練習場所を見渡して僕は答えた。

 弓道の練習場や、警察の射撃訓練場の様な所だ。

 門下生たちが離れた位置にある巻き藁に向けて技を振るっていた。


「ファンタジーな技が覚えられる道場って感じですかね」


 少し遠くに立ててある巻き藁に向けて抜き打ちを放つ。

 居合切りだ。

 巻き藁とは離れた距離にあり、切っ先も届いていないはずだが、ずさっと音がして上の部分が崩れ落ちた。

 よくよく見れば居合切りをした瞬間に、何か風のような物が巻き藁へと飛んでいき、あたっているように見えた。


「漫画とかじゃサムライ系キャラが良く使うメイン技じゃね?」

「あー。なんか見た事ある気がします。斬撃を飛ばす技ですか」

「『飛斬ひざん』って技だ。見た通り遠距離攻撃の技だな」

「遠くの標的を斬れるのは便利そうですね」

「不意打ちにも使えるからモンスターとかに気づかれていない場所から攻撃できる。ソロでフィールド出るなら覚えておいて損なしだ。ただ連続で使うのはちょっときついかな」

「きついと言うと、МPとか消費するんですか」


 そういえばHPはないとチュートリアルで言ってたけどМPについては聞いてなかったな。


「心刀使いはМPないぞ。技を使う時はその技を使う場所が疲れる」

「疲れるんですか?」

「軽傷負った見たく重くなる。飛斬の場合は腕だな。さっきの道場の縮地だと足だ。直ぐに自然回復するが技使いすぎると動けなくなるから気をつけな」

「技を使うと負荷がかかり、部分的に動きづらくなるってことですか」

「そういうことだ」


 なんとも力ずくで技と呼べるものを捻りだしている感じがする。


「道場に通わなくても鍛えていればこういう技覚えられたりするんじゃないですか」

「一応がんばれば覚えられるらしいが、一度も道場で教えて貰ってないとプレイヤーは覚えられないみたいだな」

「え、何でですか」

「あー・・・道場に通えばわかるから。俺からはちょっと言えない内容なんだよそれ」

「はあ」


 何か隠しているみたいだけど、道場に通えばわかるということは伝わった。


「ビギナー案内する時にその内容を説明したんだが、道場の人に咎められてな。それは道場で教える事なので言わないでください、って感じだ」

「重要な内容なんですね」

「心刀使いには重要なことだな。別に言ってもいいと思うんだが、道場で教えて貰えないとプレイヤーは技を覚えられないようになってる、とか? 知らんけど」

「そういう仕様があると?」

「かもしれないレベルだがな・・・そろそろ出るか、次行くぞ」

「わかりました」


 見学させてくれた道場の人にお礼を言って二人で外へ出た。


「次はどこに行くんです」

「次はPVP広場だな」

「対人戦ですか?」


 この世界に来て一日目の初心者にPVPは敷居が高いのではないだろうか。


「心刀使いにとっては重要な所なんでな。教えない訳にはいかん」

「重要というと」

「まあ・・・・・・」


 言いかけてヤルゼさんがお腹をさすった。


「その前に飯に行こうか。腹減ってきた」

「空腹とかあるんですね、このゲーム」

「あるぞ。腹が減るとお腹がピリピリし始めるからわかりやすいぞ。ピリピリしてない? お腹」

「特には」


 お腹に手を当ててみるが特にそういった感じはしない。


「あ、そか」


 何か思い出したらしく、ヤルゼさんがぽんっと手を叩いた。


「ビギナーは最初、お金持ってないから救済として一週間くらいお腹減らないようになってるんだったかな。腹が減り始めるとピリピリが次第に強くなって、歩くのも大変になるからな。アイテムボックスとかにおにぎり一つは入れて置かないとフィールドでは死活問題だから覚えておくといい」

「ヤルゼさん持ってないんですか」

「ん、何を?」

「おにぎり」

「持ってるぞ」


 あれ、持ってないと思ったけど持ってるのか。


「それを食べればいいのでは」

「国の中にいる時はちゃんとした食堂で食べたいのよ」


 そんなもんだろうか。


「おにぎりだと一時間くらいしか持たないからな。食堂で食べれば一日中食わなくて平気なんだよ」

「一日一食ですか」

「長時間プレイするなら食堂一択。それに食堂のダイブゲーム飯は旨いぞぉ」


 今から食べに行く店を思い出してかヤルゼさんがにやにやしだした。


「そうなんですか」

「嫁の飯よりダイブゲーム飯って良く言うだろ」

「ダイブゲーム、あまりやらないんで知らないです」


 こういうММО系は初めてだし。


「あら、そうなのか。本当に初心者って感じなんだな」

「なので色々教えて貰えてありがたいです、ホント」

「ははっ。いいって事よ」


 ヤルゼさんについて行き、ワープに使ったクリスタルの前まで来た。


「元の城壁前のクリスタルまで飛ぶぞ」

「わかりました」


 パーティワープで再び最初のクリスタルまでワープした。


「ヤルゼさんに色々と教えて貰って思ったんですけど」

「なんだ?」

「チュートリアルって全然教えてくれてなかったんですね」


 今思い返してみれば、この世界での知識は、半分以上ヤルゼさんから教えて貰った内容だ。


「戦闘とかは教えてくれただろ。ММОのメインみたいな物だし。他の事はこの世界に来てからちょっとずつ知って欲しいという運営からのメッセージなんだと俺は思ってる」

「なるほど」

「まあ・・・あんまし評判は良くないけどな。修正して欲しいって奴も掲示板にいたなぁ」

「やっぱりですか」

「ただ、俺はあのチュートリアルに満足してる組だがな」

「え、そうなんですか・・・どの辺がです」

「チュートリアルの音声あるだろ。あれがめちゃくちゃ良かった!」

「えー・・・」

「超好みの声だった! 声優さんはわからなかったが個人的に聞きに行くレベルで好きな声やってん!」

「しゃべり、最後なまってますけど」


 なまるくらい好きだったと・・・


「いやホント誰なんだろうなぁ、気になっちゃうなぁ」

「はあ・・・・・・」


 浮かれながら歩き始めるヤルゼさんの後を少し離れた位置から僕はついて行った。

 と、いきなりヤルゼさんが振り返る。


「今から行ってみるか! クリスタル近いし!」

「先に食堂の案内でお願いします」

「いやほれあれだよコハマル君。パーティ編成中なら同じチュートリアルの空間に行けるかもしれないじゃん。パーティワープ機能でさ、それの検証だよ。たぶん誰もやってないだろうし、ちょっとだけ検証させてくれないかコハマル君や」

「なんか長くかかりそうなのでパスでお願いします」

「そんな~」


 ヤルゼさんの背中を無理やり押して、賑やかな商店街へと入っていった。

ここまでお読みいただき有り難う御座います。


次は31日の予定です。

来月からちょっとだけ書くの早くできるかもです。ほんのちょっとですけど。

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