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子供が結婚式に居てもつまらないものである



 結婚式が始まった。

 僕は用意された席に座って動かないのが仕事だ。

 まあ、結婚式の段取りとか知らないし、流れに任せて待っているしかないんだよね。

 新婦と新郎が来ている客の席を回り始めた。

 どうやらお酒を注いでいるようだ。

 そういう習わしなのかな?

 まずはお客さんに対しての感謝の意味を込めて、お酒を注いでいく的な。

 左側の席の人たちには新婦のテュコさんが。

 右側はタカサ師範が多少の談笑も交えてお酒を注いで回っている。

 新郎新婦は左右の席の真ん中の、開いているスペースで客の席を回り歩いていた。

 僕の席は左側、テュコさんが回ってくるルートだ。

 僕の場合、未成年であることを告げていたので、初めからアルコールの入っていない飲み物が席の前に置いてあった。

 なので、僕の所はスルーして次に行くのかと思ったのだが、新婦のテュコさんは立ち止まって膝をついた。


「あなたがコハマルね。来てくれてありがとう」


 お酒は注がないが挨拶はして行くみたいだ。


「コハマルです、初めまして。ご結婚おめでとうございます」


 魔女であるテュコさんは見た目、ちっちゃい女の子と言った感じの子だった。

 長生きする種族らしいから見た目通りの・・・・・いや、それは考えないでおこう。


「あなたのお陰よ。本当に感謝してるわ」


 ん・・・なにがだろうか?


「お陰と言いますと?」

「結婚できたのはあなたのお陰」

「そう、ですか?」

「ええ」


 ・・・そうなのかな?

 まあ、魔女の町までタカサ師範を連れて行ったのは僕ではあるし、そう思われても間違いではないかも、かな。


「ずっと結婚したいと思っていたけど、どうすれば上手く行くか、判断できなかったわ。行動には移せなかった。あなたが道場に来たことで時間が動き出したの。いつかお礼をするつもり。覚えておいて」

「お礼ですか」

「ええ、本当に感謝してるの」

「はあ・・・あ、いや、はい。わかりました」


 生返事をしてしまったので改めて言い直す。


「じゃあまたね」


 そう言って隣の席にお酒を注ぎに行ってしまった。




 新郎新婦が来ていた人たちに飲み物を注ぎ終わると、二人から来た人たちへの感謝の言葉を述べた。

 タカサ師範が喋ると祝福も込められているヤジが飛び、笑いが起きていた。

 しばらくして、色々と段取りを済ませた後に、みんなで宴会みたく、食べ歩いたりし始めた。

 新郎と新婦の周りにはそれぞれ親しい人たちが集まって楽しそうに話し合っている。

 タカサ師範の周りには二十代くらいの若い人たちが集まっていた。

 ガンジョウさんもフクローさんも居るのが見える。

 テュコさんの周りには、数人ではあったが、魔女の人たちが集まって何かを話している。


「来てくれるとは思わなかったわ。みんな、ありがとう」


 テュコさんのそんな言葉がかすかに聞こえた。

 他にも年配の人たちがここに入るが、タカサ師範に挨拶を済ませると、年配の人たちで集まってお酒を飲み始めていた。

 多分、タカサ師範のお父さんと付き合いが長い人たちなんじゃないかな?

 耳を傾けると、タカサ師範のご両親は他国に旅行に行っているらしく、今日の結婚式には来れないとか何とか話が聞こえた。


「・・・・・・」


 そして、僕は一人、ぽつんと座って料理を食べている。

 美味しい料理なんだけど、ちょっと寂しい気もした。


「・・・・・・うーん」


 なんというか、場違いな感じがしてきたんだけど、どうしようかな・・・・・・

 そもそもタカサ師範以外の人をそこまで良く知っていない僕がここに居るのってどうなのだろう。

 ああやって話の中に入って行くのもなんだし、席でご飯を食べているだけ、と言った感じだった。


「弟子のコハマル君だね」

「え?」


 そんな僕を見かねてか、男性が声をかけてくれた。

 歳は若く見える。ちょっとぽっちゃり系な人だった。

 ガンジョウさんやフクローさんと同じくらいなんじゃないかなと、僕は思った。


「コハマルです。どうも」

「こんばんわ、センキロウです・・・隣良いかな」

「あ、はい」


 さっきまで隣で座っていた人は新郎のタカサ師範の近くに行っているのか、今はいない。

 少し体をずらして横による。


「よいしょ・・・・・・暇そうだね」

「ええ、まあ」


 やる事は食べる事だけですしね。


「子供には退屈だろうしね・・・・・・ああ、コハマル君はプレイヤーなんだっけ」

「そうです。それが何か?」

「プレイヤーは見た目で年齢わからないって話だから、子供と決めつけたのは違ってたかなって」


 気を遣いながらセンキロウさんはそう言ってくれた。


「僕は見た目通りですよ。お酒も飲めないお歳ごろです」

「そうか。それじゃやっぱり退屈だよね」


 まあ・・・ねぇ。


「そうですね・・・・・・言わない方が良いかもですが、そうです」

「もう少ししたら式も終わって外に行くみたいだから、そこまで我慢してて」

「・・・この後、外に行くんですか」


 二次会みたいな感じなのかな?


「ОBでも若い方の人たちは行くみたいだよ。年配の人たちは片付けをしてくれるらしいけど」

「なるほど」

「何人かは片付けを手伝うって言ってたけど、若い奴らは遊んで来いって先輩に言われたそうだ」

「・・・・・・新郎新婦も外に行くんですかね?」

「新婦は片付けを手伝うんだって。タカサの兄さんはついて行くらしい」

「タカサ師範・・・・・・」


 自分たちの結婚式だっていうのに新婦と離れていいのかなぁ・・・・・・


「まあ、自由人って人だけどね。『まったく』、とは言いたくなるよ」

「ですね・・・・・・センキロウさんは行くんですか?」

「いや、行かないよ。片付け手伝って帰るつもり」

「そうなんですか」

「うん。タカサの兄さんともそこまで親しいわけでもないしね」


 そうなのか・・・・・・ここにきている人はだいたい親しい人たちだと思ってたけど違うんだ。


「まあ、義理だよ。結婚式の招待状が来たから来たって感じだね」

「ですか」

「まあ、タカサの兄さんに会いに来たってよりは、結婚式に来る当時親しかった友人に、会いに来たって所だね」

「なるほど・・・・・・その知り合いとは話せたんですか?」

「今はタカサの兄さんの所に行って話してるみたいだからねぇ。まあ今度でもいいかな」

「そうですか」


 そう言ってセンキロウさんはタカサ師範の方を向いた。

 つられて見てみると、タカサ師範がお酒をがぶ飲みしているのが見えた。

 僕は、目を逸らす。


「・・・・・・話したい人ってガンジョウさんだったりします?」


 何となく、いつも忙しそうな、知っている人の名前を言ってみた。


「・・・・・・良くわかったね、なんで?」

「いや、まあ、当てずっぽうです。歳が近そうだったので」

「なるほどね。まあキョーちゃんとだけ話したい訳じゃないけどね。他にも話したい人は居るけど、その人も今、タカサの兄さんの所行ってるみたいだし」

「なるほど・・・フクローさんとかもですか?」

「そうなるね・・・というか良く知ってたね、フクローの事」

「さっきちょっと道場で話しまして」

「アイツの方が話したい奴かな・・・・・・キョーちゃんより会う機会がないよ」

「そうなんですか」

「修行馬鹿だよアイツは。目標があっていつも鍛えてる感じでね。だいたいは国の外に居るから本当にたまにしか会えないんだ」

「なるほど」


 そう考えると、国の中に居るガンジョウさんの方が会う確率は高いって訳か。


「んー・・・・・・だいたい今タカサの兄さんの周りに居るのは、残って遊んで貰ってた奴らだね」


 新郎席の方を見ながらセンキロウさんはそう説明してくれた。


「親しくして貰っていた人たちって訳ですね」

「そうなるね」

「・・・センキローさんは残って遊ばなかったんですか?」

「あまり体力がある方じゃなかったんだよ。稽古が終わったらぐったりしながら帰ってた」

「なるほど」

「ああ・・・当時、三馬鹿って言われていたよ」

「・・・・・・三馬鹿?」

「フクローとタカサの兄さん、あとキョーちゃんも」

「えっ? ガンジョウさんもですか」


 三馬鹿って・・・・・・あのガンジョウさんが?

 三馬鹿に数えられるような人に見えないんだけど・・・・・・


「当時のキョーちゃんは何かあると正義感が暴走してね。色々な所に殴りこみかけてたよ」

「そんな、まさか」

「ほんとほんと。他の道場に道場破りしに行ったりしてたよ。まあ、大体はフクローとタカサの兄さんにそそのかされてだったみたいだけどね」


 タカサ師範とフクローさんが噓を吹き込んで、ガンジョウさんがその嘘で暴走していたと・・・・・・


「凄い話ですね」

「だね。一番のやばい話はね──」

「面白そうな昔話だな」


 席の向こう側から声を掛けられて、思わず背筋を伸ばす。

 いつの間にか近づいていたガンジョウさんが、目の前で仁王立ちしていた。


「ガンジョウさん・・・こんばんわ」


 さっき道場で会っているけど、一応あいさつをしておく。


「そうだな。こんばんわコハマル君。ああ、バルーンビスケットだが渡しておいたから」


 そう言えば返してもらうの忘れていたな。


「あー。メンテナンスとかでしたね」

「うん、二~三日くらいだと言っていたかな」

「なるほど、わかりました」

「さて・・・・・・センキ」


 ガンジョウさんの視線がセンキロウさんの方を向いた。


「やあ、キョーちゃん久しぶり」

「久しぶりだな」

「タカサの兄さんと話していなくていいの?」

「私をあだ名で呼んでいる話が聞こえたのでな。来てみた訳だ」

「そうなんだ。今はキョーちゃんって呼ぶ人居ないの?」

「居ない、な・・・まあ、もうみんな大人だ。あだ名で呼び合う様な歳でもないだろう」

「こういうのはどんな歳になっても呼び続けるものだと思うけどね。それでねコハマル君」

「はい?」

「キョーちゃんがやった、一番のやばい話はね──」

「だからそれを喋るなと言っているんだ!」


 ガンジョウさんがセンキロウさんの襟を掴んで無理矢理立たせた。


「ちょちょちょ、キョーちゃんちょっと! 暴力は良くないんじゃない? お役目的にもさ」

「こんなのは暴力に入らん」


 つるし上げる様に胸ぐら掴んで立たせるのは暴力ではないらしい。

 なんか、さっきの話に合った暴走したガンジョウさんって感じなんじゃないだろうか。

 というか、もしかして・・・・・・


「酔ってるの、キョーちゃん?」

「酔ってない」


 グイッと引っ張られて、センキロウさんは席を跨いで向こう側へと行ってしまった。


「来いセンキロウ。タカサさんに挨拶はちゃんとしたのか?」

「いやしたよ。酒注いで貰う時に」

「それじゃ足らないだろう。もっとやっとけ」

「引っ張りすぎ! 力強い・・・・・・こ、コハマル君。話はまた今度。機会があればね」

「はあ・・・・・・」


 そのまま引っ張り続けてガンジョウさんたちはタカサ師範の所に行ってしまった。


「・・・・・・」


 また一人になったな。

 ・・・・・・飯でも食っとこ。





ここまでお読みいただき有り難う御座います。



毎度毎度の誤字脱字報告ありがとうございます。感謝!


今回は場つなぎ回みたいな感じですね。





・・・・・・多分明日も投稿します。

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