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ほったらかされたゲチェナキッズさんは・・・・・・


 ──ゲチェナキッズ視点──



 ありのまま、今起こった事を話すぜ。

 ダイブ系ММОRPGでゴブリンと協力してPKプレイヤーキルしようとしたらプロレス技を食らっていた。


「ヤブガラー!」

「ぐええええええ!」


 激痛で叫び声を上げる俺に、しつこくプロレス技をかけ続けるこいつ。

 心刀使いのコハマルだ。

 今は仮面を着けたことでヤブカラ族になっている。

 何がやばいって技かける速度が速すぎる。

 足掴まれた時に反撃しようと思ったんだが、攻撃しようとする間もなく地面にたたき落された。

 そこから引き起こしてのラリアットを食らって空中で回転しながら再び地面に落ちる。

 さらに引き起こされてバックブリーカーを食らった。

 背骨がボキボキとひどい音が鳴った。

 悲鳴を上げ続ける俺に関節技で、さらに体中ボキボキにされてしまった。

 物を梱包する時に使うプチプチになった気分だ。

 プチプチ出来る場所すべてポキポキにされた。

 普通なら死亡してリスポーンしている所だと思うのだが、何故か死んではいない。

 骨も折れていないし、重傷になってもいなかった。

 ただ、体はつま先から手の指先まで動かせず、ぎりぎり動くのは首だけ。

 草の中、仰向けに倒れた状態で、首を動かして横を見る。

 コハマルとヤブカラ族が並んで地面に座っているのが見えた。

 体が動かない俺をほおって背を向けている。

 ・・・・・・何かあるのか?

 そう思っていると、奥から何かが近づいてくるのが見えた。

 草の間から見えたそれは、祭りなどで使われる神輿の様な物だった。

 中心に仮面を着けたヤブカラ族らしき人が見える。

 仮面の文字は・・・・・・


「・・・・・・『王』かよ」


 ヤブカラ王・・・・・・初めて見たわ。

 神輿の中心に座っていてわかりにくいが、身長は普通のヤブカラ族と比べてあまり変わらない。

 一つ違いがあるとすれば他のヤブカラ族に比べて、仮面が大きい事だ。

 中心の『王』の文字を囲うように何やら見たことのない文字が刻まれている。

 近づいてきた神輿は、コハマルのすぐ近くで止まった。

 すたっと俺の頭の近くに誰かが飛び降りて来た。

 『王』だ。

 角度的に文字は見えないが仮面の大きさでそれがわかった。

 つか、強者のオーラがすごいんですけど・・・・・・

 冷や汗が引っ込むレベルで王の恐ろしさが伝わってくる。

 何も言わず、王は手に持っている王笏おうしゃくのような杖をかかげた。

 あ・・・俺、死んだわ。

 今まさに振り上げた王笏を振り下ろそうとした王の──


「・・・・・・」


 手が止まった。


「・・・何で?・・・・・・うおっ」


 殺さないのか、と思った所で、倒れている俺の両足を誰かが掴んだ。

 その場から逃げ出すように誰が引きずられていく。

 ちらりと足の方に目を向けると・・・


「《やっべぇ! マジヤバイ!》」

「《こええー!》」


 二人のゴブリンが俺の足を抱えて引きずり走っていた。


「《・・・・・・何やってるのお前ら?》」

「《助けてやってんだ! 黙って引きずられてろ!》」

「《そうだぞヒューマン!》」

「《いや別に、俺は死んでリスポーンしてもいいだろ。お前らが死んでレベルダウンする方が問題なんだが》」


 ヒューマンのデスペナに比べてゴブリンのデスペナはかなり痛い。

 数レベル下がったりするから死なない様にやってた訳なんだがこいつらよぉ・・・


「《逃げろって言っただろ》」

「《逃げ遅れちまったんだよっ》」

「《そうなんだよ》」

「《いや、だからって助けに来なくても──》」

「《なんか体が動いちまったんだよ!》」

「《自分でもびっくりだ》」

「《・・・・・・そうかよ》」


 死にそうな仲間を見て、とっさに行動しちまったってか。

 そんな行動をするゴブリンが居るなんて他のプレイヤー共は知らんだろうな。


「・・・・・・まったくよぉ」


 引きずられ続けていて、手が動くことに気づいた俺は、アイテムボックスからモーモウンのCクリスタルをいくつか取り出し、皮のアイテムに変換した。

 引きずられながら体を起こし、変換したモーモウンの皮を手から離さないようにしながら、股下から通して尻の下に敷く。

 引きずられる速度が少しだけ上がった。

 雪が積もった坂道とかで使うソリみたいにした訳だ。


「《これで少しは引きやすくなっただろ。さっさと逃げ切っちまおうぜ》」

「《動けんなら自分で走れ》」

「《そうだぞ》」


 そう言いながら小さめの石を俺の顔に投げて来た。

 フレンドリーファイアはしないので痛くはない。

 怪我するほど強く投げてこなかったがな。

 文句は言う物の、二人のゴブリンは足を放そうとしなかった。


「《もう今日は疲れたからお前らに任せるわ》」

「《仕方のないヒューマンだ》」

「《まったくだ》」


 そう言ってるけど何処か楽しそうなんだよなこいつら・・・・・・まあいいけどねぇ。

 と、後方から声が聞こえた。


 ヤブカラァ・・・・・・


「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」


 多分さっきの王だな・・・・・・追っては来ていない。

 今日は見逃してやる、的な感じに聞こえた。

 しっかしボスっぽい重々しい声だ事。

 ・・・・・・もしかしてだけど、俺を助けようとしたゴブリンたちが見えたから俺を殺さないで置いたとか?

 理由は良くわからないけどねぇ・・・・・・何となくそんな気がした。


「《・・・・・・あれ?スピード上がってね?》」


 さっきより、引きずられる速度が増していた。


「《・・・上がってないぞ》」

「《上がってない》」

「《お前らびびってんじゃね? 追って来ねえよ、心配すんなって》」

「《楽観的すぎるぞ》」

「《なー》」

「《・・・・・・ま、いいか。じゃあ拠点まで頼むねぇ》」

「《仕方ない奴だ》」

「《まったくだ》」


 ぶつくさ文句垂れ続けるゴブリンたちに引きずられながら、なんとか俺は逃げ延びる事に成功した。



「《なるほどなるほど、わかった了解だよ》」


 ワープして拠点に帰ってきた俺は、他のゴブリンに状況を教えて貰った。

 今回の襲撃の被害は怪我したゴブリン数人。

 得た物は一人は自爆して狩れなかったので、心刀使い二人分の経験値。

 まあ、そこそこの結果だな。


「《場所移すか?》」

「《そうだねぇ。そうしようか》」


 ここでの狩りも警戒されるだろうし、他の所に行ってみっかな?

 ・・・・・・その前にちょっとやっておく事が出来たかねぇ。

 それをやってから狩場移動するかねぇ・・・・・・期待薄だけど試してみる事にしよう。



ここまでお読みいただき有り難う御座います。



ちょい短めです。

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