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ダンジョンに入る前の確認


 ギャーテーさんのパーティワープでダンジョンのある所にやって来た。


「ここにダンジョンがあるんですか」


 見た所、森の中のひらけた場所みたいなのだが。


「この先にあるよ」

「コハちゃんダンジョンは初めて?」


 ゼニキンさんに尋ねられたので僕は肯いて答えた。


「初めてです。ダンジョンどころか外でモンスターと戦うのも初めてになります」

「マジかよ! 道場には通ってるんでしょ」

「通っていますよ」

「じゃあ今まで道場で修業し続けていたって事? それだとお金とかどうやって工面くめんしたの」


 道場の入会金の事かな。


「少しの時間、話をしたらお金貰える依頼、というかバイトがありまして、それで道場の入会料を貰いました」

「なんじゃそのバイトは・・・・・・え、その時は十万Cだったよね道場の料金」

「そうですね。ほんとポンと貰った感じです」


 ほんと、デデルマンさんには足を向けて寝られないよね。


「そのバイト一発で十万以上稼げたって事」

「そうです。ちなみにもうそのバイトはないですよ」

「そーなのか。ちなみにどんくらいの時間、お話したの」

「一時間なかったと思います」

「高給過ぎる! NPCからお金貰ったんじゃないよね」

「プレイヤーからですよ」

「ブルジョワプレイヤーからのバイトか・・・俺もあやかりてぇ~なぁそういうの」


 バイトを持ちかけたのがデデルマンさんだと言う事は黙っておこうかな。

 PVPの大会中に言い合ってたりしてたし。

 まあ、仲が悪いって訳ではなさそうにも感じるんだけどね。

 とりあえず、聞いておかなきゃいけない事とかありそうだな。


「何かダンジョン攻略の時に覚えておかなきゃいけない事とかありますか?」

「覚えておかなきゃいけないことねぇ」


 ゼニキンさんが他の二人に視線を向ける。


「まあ、色々あるな」

「そーですねぇ。コンシューマのRPGとかと違う所とか?」


 二人ともなにやら思い当たる所があるようだ。


「つーか向かいながらぼちぼち話しとこうや」

「よろしくお願いします」


 そんな訳でダンジョンに向かって歩き始めた。


「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・あの」


 黙って歩く三人に思わず呟く。


「説明をお願いしたいのですが」


 一番近くのゼニキンさんにそう言った。


「・・・これ、俺が説明する流れ?」

「よろしく」

「ゼニキンさんが説明するもんだと思ってました~」

「おーけーわかった。説明不足なところあったら補足頼むよ」

「了解だ」

「おけです」

「そうだなぁ・・・まずはPPプレイヤーポイントかな」


 ああ、あったなぁそんな名前なの。

 確かチュートリアルの時に説明されたモノだったはず。


「名前は覚えてますが、使った事ないですね」

「PVPだと使わないからね。簡単に説明するよ」

「はい」

「PPは10ポイント初めから持ってる。軽傷に1ポイント、中傷には3ポイント、重傷の場合は5ポイント使う事で傷を回復することが出来る。全身回復だから複数の傷も1回で回復できる。10分で1ポイントPPが回復する。まあこんな所か」

「傷の回復に使うポイントでしたね」

「その他の使い道もあるが、ジダイに居続けるなら気にしなくていいかな」

「他の使い道ですか」

「他の国だと自分のステータスにブーストを掛けたり出来るようになるスキルを教えて貰える場所があったりするけど、ジダイにはその覚えられるところがないんよ。だから気にしなくていいって話」

「なるほど」


 そんなスキルを覚えられたりするのね。


「補足、いいか」


 と、ジャンクさんが片手を上げる。


「どーぞどーそ」


 両手を下に出してゼニキンさんが少し後ろに引く。


「PP使用スキルはジダイでは覚えられないと言われているが、覚えられる所が発見されていないからと言う話もあるよ」

「あー、なるほど」


 その場所がまだわかっていないだけ、かもしれないと。


「確かにそだな。まあ、今は回復のために使うポイントと考えていいって事」

「わかりました。あ、そういえばダメージエフェクトの回復とかありましたよね」

「あー、それあるね。ダメージエフェクトは1ポイントで回復できる」

「了解です・・・・・・あの」

「ん?」

「ダメージエフェクトって何なんですかね?」


 僕は素朴な疑問を尋ねてみる。


「軽傷、中傷、重傷って種類がありますし、ダメージエフェクトってこのゲームにいらないんじゃないかって思ったんですが」

「運営に尋ねるべき質問だな・・・・・・一応回答しよう」


 ゼニキンさんが答えてくれるようだ。


「ちょっと僕も気になりますねぇ」

「運営が回答した答えとかあるのか?」


 ギャーテーさんとジャンクさんも少し気になる様子だ。


「いや、そういうのじゃない。掲示板の書き込みにある模範解答みたいなものだよ」

「どんな回答なんです?」


 尋ねるとゼニキンさんは指を一本立ててこう答えた。


「『ダメージエフェクトは『出血』の表現規制』だという回答文だったよ」

「表現規制?」

「ゲーム的にグロテスクな物とかに規制をかけられてたりするでしょ。このゲームには血を流す描写が一切ないの」

「確かに、見たことないですね」


 確かに、大会の時も色々斬ったけど血は出てなかったな。


「血の表現がダメージエフェクトって事ですか」

「そうなんじゃないかって話。まあ信憑性は高いよ。軽傷時にエフェクト出てもすぐ消えるし、中傷以上の時に傷口に包帯とかを巻き付けるとエフェクトの進行が遅くなったりするらしいよ」

「初めて知った・・・」


 ジャンクさんも知らなかったらしく、目を見開いていた。

 結構面白い話だな。


「知り合いが検証した話ではあるけど鵜呑みにはしちゃいかんよ。まあ、モンスター倒した後でPPが枯渇していて回復できない時の、最後の手段として覚えておけばいいんじゃない」

「なるほどな」


 顎に手を当てて納得のご様子。


「まあともかくコハちゃんや」

「はい」

「PPの仕様は話したから、パーティプレイで使用する場面の話をしよう」


 ここからが重要な所って感じだ。


「はい、お願いします」

「戦闘時に中傷以上の傷を負った場合、ダメージエフェクトの回復は即使用。とりあえずこれだけ覚えておいてくれ」


 ダメージエフェクトだけ回復すると・・・


「傷の回復は戦闘後にする感じですか」

「概ねそうだ。中傷時に傷まで回復してたらポイントが持たない。10分で1ポイントしか回復しないからね。場合によっては傷を回復しないで探索を続ける事もある」

「そうなんですか」

「中傷なら動きが制限されるけど動けるから、場所によってはポイント温存するのも手な訳よ」

「重かったり痺れたりするのは我慢して戦うって事ですね」

「そういう事。ま、ポイントMAXの時は直ぐに回復していいかな。補足あるお二人さん」

「特にないかな」

「右に同じ~」


 ギャーテーさんたちも納得な様なので、今言われたポイントで回復してやってみよう。


「あと覚えておく所はそうだな。モンスターとの戦闘についてか」

「お願いします」

「コハちゃん飛斬とか持ってる?」

「いえ、持っていません。というか技もまだ覚えていない状態でして」

「あー、PVPの時もそんな感じだったね。とりあえず今日は、ギャーテーと俺が飛び道具持ちだから、まずうちら二人で先制攻撃するのが基本と考えてくれ」


 ギャーテーさん飛斬系の技持ってるのか。

 ちらりと見ると、ピースを返された。


「うち等が攻撃を放ったら即座に獲物に向かって斬りこんで欲しい」

「向かって来るのを待ったりとかはしないんですか」


 タゲ取ったら向かってきたモンスターを相手にするのが基本かと思っていた。


「向かって来ないんだわこれが。だいたい逃げていくから、その前に倒さないといけない訳」

「そうなんですか」

「まあ、向かって来るモンスターもいるよ。肉食系のモンスターとかは向かって来るけど、今回行くところは草食系が多い所だから」

「草食系は逃げていくと」

「そういう事」

「なんというか、現実に寄せている作り何ですかね?」

「現実に寄せているなら肉食系も逃げるでしょ。飛び道具撃ってくる奴みたらライオンでも逃げ出すと思うよ」


 それは、確かに。


「なるほど、二人が飛び道具撃ったら斬りかかればいいんですね」

「そういう事」

「聞いてると、狩りって感じがしますね」

「その認識で合ってると思うよ。とりあえず今日は狩りに行くって感じだよね」

「なるほど・・・・・・ダンジョンに行くんですよね」

「そうだよ。ああ、洞窟の中で狩りをすると思ったかぁ。違うからね」


 洞窟の中で戦う物だと思っていたが、違ったらしい。


「ダンジョン入ると森に飛ばされるから」

「・・・・・・ワープするんですか」

「そうだよ。ここ以外のダンジョンもそういったダンジョンが多いみたいだね」

「そこはファンタジーですね」

「だねぇ。ま、やってれば慣れると思うよ」

「わかりました・・・・・・まだ何かありますか」

「そうだねぇ・・・・・・はぐれない事とか」

「孤立しない様にと」

「そう。後、これはダンジョンの外でも一緒な事だけど、人型モンスターには出来る限りケンカを売らない事」


 人型モンスターにはケンカを売らない?


「ゴブリンとかですか」

「ゴブリン、オーク、トロールとかもね。ここのダンジョンはゴブリンくらいしか出ないけど」

「どうしてダメなんですか」


 ゴブリンなどはRPGの雑魚モンスターとして有名どころだと思うけど。


「まあ実りが少ないってのもあるけど、一番の理由は危険だからだよ」

「・・・・・・弱いモンスターなのでは?」

「一匹一匹は弱いけど数いるからね。PPの使用を避ける為にも戦闘は出来る限りしないつもりだよ」

「群れているから戦わないと」

「プレイヤーが無敵のキャラクターって訳じゃないでしょ。リスクは少ないに越したことはないよ」

「なるほど」

「ちなみにゴブリンたちも心刀使いとは出来る限り戦わない様にしている感じだよ」

「そうなんですか」

「多分うちらはゴブリンたちにとっても実りが少ないんだろうね」

「実りが少ないですか」

「物盗んだりするからゴブリンは」

「なるほど・・・・・・」


 自分も含めた全員の服装を見てみる。

 初期装備のままと言った感じに見えた。


「そういえばPVPの時も思いましたけど、装備買ってる心刀使いの人って少ないんですかね」

「少ないだろうね」

「何故でしょうか」

「いや、わかるでしょコハちゃん。お金がないのよみんな。道場に通うお金や飯代でカツカツなの」

「・・・・・・確かに」


 聞かなくてもわかる事だったな。反省しとこ。


「装備って高いんですかね」

「くっそ高いよ。サムライの鎧は100万C以上するから」


 それは当分買えないな。


「まあでも道場の料金も下がったし、装備買って鎧姿のサムライが大勢街中で歩いているのを見かける様に、いつかはなるかもね」

「兜くらいは自分も買いたいですね」


 頭を守る物は何かしら持っておきたいなと、PVPの時に思ったし、お金貯めたら一番買いたいものだな。


「・・・・・・コハちゃん。兜も20万Cしたりするけど持ってるの?」


 高いなぁ・・・ほんと。


「・・・当分無理ですね」

「まあ、地道にやってくしかないね」

「今日のダンジョンは稼げるんですか?」

「んーと、時給1万Cくらい?」


 時給は味噌汁一杯分と。

 そう考えると中々美味い気がする。


「レアアイテムが出れば数倍稼げたりするかな」


 そういうのもやっぱりあるのか。


「頑張ります」

「さて・・・・・・着きましたよと」


 丁度、話が終わったところで目的地に着いたみたいだ。

 森の中の一本道を歩き続けて着いた場所には、ちらほらと人が見えた。

 少し露店がたってたりしているが、こんな場所で商売が成り立つのかな。


「食べ物は持って来てる?」

「食べてきましたけど、おにぎりは持ってますよ」

「おーけー。持ってない時は、ダンジョン前で商売してる人たちがいるからそこで買っていってね」

「儲かるんですかね、ここでの商売って」

「店によるけど、料金が町より高めに設定されてるのよ。ポロイ商売って奴」

「ああ、なるほどです」


 観光地料金みたいなやつか。

 海の自販機とかで飲料水が2倍近くの値段で売ってたりする。


「お、誰も居ないみたいだね」

「着いたわけですか」

「そ、ここが入口」

「・・・・・・」


 周りを見渡す。

 露店の立ち並ぶ中心地に立っているのだが、入口らしきものが見当たらなかった。


「どこが入口なんですか」

「下見て」


 言われて下を見ると、


「ドアノブ?」


 地面に突き刺さったドアノブが真下にあった。


「ひねって見て」


 言われるがままにドアノブを捻りながら、顔を上げた。

 丁度、ギャーテーさんとジャンクさんが立っている方向を見上げる。

 にやにや笑っていた。


「あっ」


 ドアノブを捻ると、地面に四角い穴が出来て、僕はその中へと落ちて行った。

 それはもう無様に転がり落ちていく様に。


「ちょえっ!」

「コハちゃ~ん、ナイスリアクショ~ン。すぐ行くから待っててねー」


 落ちながら聞こえてきたのはゼニキンさんのそんな声だった。

 これがダンジョンの入り口か。

 ヒュンと来るから勘弁して欲しいモノである・・・・・・


ここまでお読みいただき有り難う御座います。




ギャーテー君はあまり喋れませんでした。

人数多くなると、どうしても喋らせるのがむずかしくなりますね。

それでいて全員喋らせようとすると、話が進まなかったり・・・

バランスが難しい所です。

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