ガンジョウさんと四つのお話
「話があると言う事か」
「そういう事になります」
「・・・・・・わかった。では休憩室に行くか。出てすぐそこにある」
「わかりました」
「着替えてくるから先に行っていてくれ。案内は──」
「自分がします。オフですし」
デデルマンさんがそう言ってにっこり笑った。
「そうか、助かる。では先に行っていてくれ」
着替え室は訓練場の中にあるみたいで、ガンジョウさんは奥の方へと歩いて行った。
「じゃあついて来てコハマル君。そっちの三人はどうするかな?」
訓練場に残るのかとデデルマンさんが尋ねた。
「ついて行ってもいいですか」
そうズワイガニさんが尋ねてくる。
デデルマンさんが、どうする? と言った視線をこちらに向けた。
一応、内密な話と言えばそういう話なんだが、どうしようかな・・・
「私たちも一緒について行っていいかな、コハマル君」
「私たちと言いますと」
「僕もよろしく」
「ギャーテーさんもですか?」
同心組に入りたいと言っている二人がついて来たいと言う。
入りたいのならここで見学していた方が多少は顔も覚えられたりしそうだけど、何か理由がありそうだな。
「さっきデデルマンさんに聞いてみたらさ、同心組に入る方法で一番確実なのが与力のガンジョウさんに許可をもらう事らしいんだよね」
「そういう話~」
そういう事か。
「なるほど・・・わかりました。シンタロウさんはどうしますか」
「んー・・・一人で道場に居ても意味ないしな、一緒に行くよ」
「了解しました。ただちょっと、今回ガンジョウさんに会いに来た目的の話は、余り人に聞かせない方がいい内容かもしれないので──」
「聞かなかったことにするから心配しなくても大丈夫だよコハマル君」
割って入るようにズワイガニさんが笑みを見せながら言う。
・・・・・・休憩室の外で待ってて下さいと言おうとしたんだけどなぁ。
言わせないってぞ・・・って事か、ズワイガニさん。
どんな話をするのか興味深々と言った感じだ。
「まあ・・・他言無用でお願いします」
多分大丈夫だろう。
畳の休憩室で座布団に座って待っていた僕たちの所に、ガンジョウさんがやってきた。
「それで、話とは?」
サムライな姿だ。
訓練場の時は稽古着って感じだったなそう言えば。
前と同じ黒い男装と言った感じの格好だった。
「話は・・・・・・四つほどあります」
ちょっと考えてから僕はそう言った。
とりあえず最初はズワイガニさんたちの事にしよう。
「同心組に入りたい人が居まして、そちらにいる二人です」
「へ、あ、ギャーテーって言います」
慌てて答えるギャーテーさん。
「・・・ズワイガニです」
いきなり話を振られて驚いている風ではある、が落ち着いて答えるズワイガニさん。
「ガンジョウさんに許可を貰えれば入れるという事らしいので、どうでしょうか」
「いいぞ」
あっさりとした返答だった。
「与力をしているガンジョウだ。これから宜しく頼む」
「よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします」
三人が頭を下げあって、許可が下りた。
ギャーテーさんが感謝の視線を送ってくるので肯いて答えた。
一個目は終了だな。
「後で同心組の仕事内容などを教えるから、すこし待っていてくれ」
「それは自分が話しておきますので」
「そうか、頼んだぞデデルマン」
「お任せを」
「・・・それで次の話は?」
催促されたので話を続ける事にする。
「ここの、訓練場でしたっけ」
「まあそう言われているな」
「道場化とか出来ませんかね?」
「道場化・・・?」
「プレイヤーの心刀使いは道場での稽古だと、成長が早いんですよ。ですが、ここは道場ではないので効率の面で道場で鍛錬している人に劣ってしまうんです」
「そうなのか?」
知らなかったらしく、ガンジョウさんはデデルマンさんの方を向いて尋ねた。
「そう、なっております」
「知らなかったなぁ、むぅ」
ガンジョウさんが腕組みをして唸った。
「ですので、ここの訓練場を道場に出来れば同心組の人も助かると思うんです。早く強くなれるわけですから」
「道場化か・・・」
「誰か師範になれる人が居れば、その人にここの師範になって貰い、技を教える環境が整えば道場として使えるんじゃないかと思うんですけど」
「師範になる資格は私が持っている」
「そうなんですか」
「ジョーダン師範・・・先代のジョーダン流の師範から目録を貰っている。道場を開く許可証のような物だ」
「免許皆伝ってやつですか」
「そういう奴だ」
「すごいですね。僕とあまり変わらない位だと思ってたんですが」
「歳の事か? まだまだ若いぞ」
そう言って薄く微笑んで見せた。
「(くっそ可愛いんじゃあああああああ!)」
デデルマンさんから脳内チャットが飛んできたが、今は無視だ。
「でしたらガンジョウさんがここの道場主として、訓練場を道場として開いてはどうでしょうか」
「訓練の効率が上がると言うのならやってやりたいが、出来るのか」
「正直わかりません」
実は特に調べてきて言っている内容ではない。
出来るんじゃないかと思って提案している事だ。
「・・・・・・」
「わかりませんが、道場を持っていない人が道場を開いたり出来ると言う話は聞いた事あるので、ここでも出来るんじゃないかと思ったんです」
「なるほどな」
「後で調べてみて下さい。ヘルプとかで調べれば書いてあるかもです」
「どうやら出来るみたいです」
空間をポチポチといじっているデデルマンさんが顔を上げてそう言った。
「調べてたのか」
「話を聞いて直ぐに。ガンジョウ与力が道場の主として、どんな技を教えるかも含めて登録し、道場の入会料を払いさえすれば、ここの訓練場でも道場として機能するみたいです。後でやり方をお教えしますので、お時間を頂けますか」
「・・・・・・いつも助かる、デデルマン」
「と、とんでも恐れ多いです!」
ガンジョウさんに感謝されてデデルマンさんの日本語がバグっている。
とりあえず二個目の話はこんな所か。
「いい対案を感謝する、コハマル君」
「いえいえ、それで次の話ですが」
「うむ」
「これは自分の個人的な質問なんですが、ガンジョウさんがやった、相手を正面に捉える、技術のことです」
「ああ、あれか」
「一週間近くジョーダン流道場に通ってますけど、そう言った技術を教わるような機会がまだないんです」
「そうなのか」
「ジョーダン流道場に通っていた人はだいたい覚えている技術だったと話していたと思います」
「そうだな。ちゃんと出来る奴は十人はいたな」
「そうなんですか」
結構多いな。
先代の時代は優秀な道場だったんだな・・・
「ですが、今の訓練のままだとその技術を覚えられる気がしないんです。何か特殊な訓練とかしてませんでしたか」
「それが聞きたい内容という事か」
「そういう事です」
「ふむ・・・・・・」
しばらくの間、顎に親指を当てながら考え始める。
「(くほおおおおおおおおおお!ぽおおおおおおずううううううううう!)」
申し訳ないが無視。
「・・・・・・あれかな」
ぽつりとガンジヨウさんが呟く。
「何か特殊な訓練してましたか?」
「訓練というか遊びなのだがな。だが、あれのお陰で出来るようになった技術かもしれない。そう思い至るものがある。当時のタカサさんがどっからか持ってきた上段打ちを続けて打ち続けるオモチャなんだがな」
「オモチャですか」
「確かバルーン・・・・・・『バルーンビスケット』とか言う名前だったはずだ」
バルーンビスケット・・・・・・なんだろそれ?
「初めて聞いたオモチャの名前ですね」
「おそらく、そのオモチャで遊んでいて出来るようになった技術だと思う。今もあるかわからないが、タカサさん・・・タカサ師範に尋ねてみるといいだろう」
「ありがとうございました」
良し、自分が次にやる事は決まった。
そのオモチャでガンジョウさんと同じ技術を身に付ける。これだな。
「それで最後の話は?」
「ああ・・・そうですね」
ちらりとデデルマンさんを見る。
「(ん・・・なに?)」
脳内チャットで尋ねて来る。
「普通に喋ってもいいのでは?」
「まあ、そうだな。んでなにかなコハマル君」
「いや・・・やっぱり何でもないです」
「そう?」
先に謝っておこうかとも思ったが、別に謝る事ではないかな。
「ガンジョウさん、ちょっとこれを見て貰っていいですか」
そう言ってシステムからポチポチと操作し、とある動画を再生した。
周りの人が見られる状態で。
「ちょっ!」
立ち上がるデデルマン。
どうにか動画を止めようと手を伸ばしてきたので、
「はい、デデルマンさん」
とある紙を伸ばした手に掴ませた。
「!」
「・・・どうかしたかデデルマン」
「いや・・・何でもありません」
尋ねる、ガンジョウさんにデデルマンさんは紙を懐に入れながら、静かにそう言った。
「そうか」
首を傾げるガンジョウさん。
また、可愛いと言っていい仕草だったが、今度はデデルマンさんからの脳内チャットは送られてこなかった。
さっきデデルマンさんに渡したのは、僕の手配書だ。
ブカツさんに返し忘れてたけど、丁度良かった。
悪ふざけだったとしても、ガンジョウさんに見せられる内容ではない手配書である。
デデルマンさんはそう思っている事だろう。
今、渡してしまって良かったのかという話だが、今この場にあるだけでもいいと僕は思った。
動画を止めようとしたり、ガンジョウさんに見せない様にしたりするなら、デデルマンさんに渡した紙の話をしようと考えている。
まあ、怒られるだろうし、下手したらクビって事もあるかもしれない。
だからデデルマンさんは動けない。
釘を刺したと言った感じ、そういう状況にした訳だ。
動画はそんな思惑とは関係なく流れていく。
「これは、何の動画だ?」
「あ、動画って物は知ってたんですね」
「こういう技術はこの国にもあるんでな」
「そうなんですか」
「プレイヤーが来れる場所には置いてないが、大きなスクリーンで色々と流してたりするぞ。それでこの動画は何なんだ」
「これは僕の録画していた動画です」
「コハマル君の動画?」
≪「あのっ、すみませんっ!」≫
動画から僕の声が聞こえてくる。
この動画はガンジョウさんと出会った日の動画である。
≪「ちょっと尋ねたいことがありまして、決して怪しいものではありません!」≫
「これは・・・・・・コハマル君の視点の動画か」
「そうなります」
「初めて会った時のやつだな」
「そうです」
「これが見て欲しいもの、か?」
「その通りです。見て欲しい部分はもう少し先ですね」
動画は先へと進み続ける。
≪「お味噌汁好きですかっ?」≫
「ふふっ・・・」
お味噌汁の下りでは、小さく笑い声を漏らしたりしてるガンジョウさん。
そして、問題のシーンがやって来た。
≪「こうで・・・こうっ・・・良し、コハマルと言ったな」≫
≪「あ、はい、そうです」≫
≪「こうだっ・・・・・・矢印が出ているはずだが見えるか≫
≪「はい、見えます」≫
≪「よしっ出来たか・・・良かったぁ」≫
「あ」
「ここですね」
ぽちりと動画を停止する。
停止した動画には優しげな微笑みを見せるガンジョウさんが映っていた。
「・・・・・・」
「とまあ、こういう動画です。ぶっちゃけ盗撮動画って言ってもいいですね。そういう仕様ではあるんですが」
「・・・・・・」
「盗撮って言う言葉はこっちにはありますかね? まあ他の人に気づかれずに撮影していることを盗撮と言うのですが」
「・・・・・・」
「それでこの動画をどうするかを聞きたくて見た貰った訳なんですけど」
「・・・・・・コハマル君」
「はい」
「動画・・・・・止めたままにせずに消して貰えるか」
俯いているガンジョウさんがそう言った。
耳が赤い。
ああ、そうか、やってしまった。
「あー、そうですね。済みませんでした」
言われて動画をこの場から消す。
止めるだけじゃなくて消しとけば良かったか。うっかりしてた。
笑顔の所でずっと止めてたわけだし、恥ずかしかっただろうな。そりゃそうか。
気を取り直して話を続けよう。
「この動画をガンジョウさんにどうするか決めて貰おうと思って、今見て貰った訳ですけど・・・どうしますか」
「何故・・・動画を撮っている?」
「撮っている理由は・・・まあ、このベナミヤの世界に来るために必要な日記みたいな物だと思って貰えれば、それであってます」
「そうだったのか・・・・・・その・・・今の動画を消しても良いのか?」
「一つくらい消しても大丈夫です。消さなくても他の人が見れない設定にするとかも出来ます。その辺はガンジョウさんに決めて貰って構いません」
「なるほど・・・・・・何故見せたのか聞いてもいいか」
「ガンジョウさんはああいう表情を他の人に余り見せませんから。まあ恥ずかしいかな、と思いまして。動画に残っていると赤の他人にも見られる可能性がある訳ですから」
「だから動画を消すのかを尋ねた訳か」
「そうなります・・・・・・どうしますか?」
「・・・・・・っ!」
すっぱーん!
俯き気味だったガンジョウさんが体を起こすと、自分の顔を音が鳴るくらい強く、両平手で叩いた。
「ガンジョウさん?」
「消さなくて良し!」
顔から手をどけて、力強くガンジョウさんが言い放つ。
「えっ、いいんですか?」
「日記のような物なのだろう。毎日動画を残していると考えていいか」
「まあそうですね。ベナミヤに来た場合はいつも撮ってますけど」
「ならば消すには及ばず。己が気持ちだけでコハマル君にとって大切な物を消すのは流石に忍びない」
やっぱり恥ずかしい気持ちはあるんだな。
「いや、そこまで大切という訳でも──」
「流石ガンジョウ与力! 懐が大きい!」
今だ、とばかりにデデルマンさんが舵を切りにかかる。
消さない流れで終わらそうとしているようだった。
「我ら同心組、ガンジョウ与力にどこまでもついて行く所存で御座います!」
「いきなりどうしたデデルマン」
「いやもう何というかガンジョウ与力の心意気に撃たれた次第でありまして!」
熱弁するデデルマン。
と、そこに放送が──
≪商店街にて心刀使いのプレイヤーが刀を抜いての斬り合いが起こりました。十秒ほど後にワープします≫
唐突にそんなアナウンスが部屋内に響いた。
なるほど。事件が起こるとこんな感じに放送が入るんだな。
「ナイス! っじゃない。こいつはやばい。事件みたいですよガンジョウ与力!」
デデルマンさんはこれ以上僕に話をさせたくない様で、本音が少し漏れていた。
「あ、ああ。慌ただしくて済まないコハマル君。何かあればまた後日」
ガンジョウさんも行くようだ。
「動画の件は気が変わりましたらいつでも言ってください」
「わかった、ありがとう」
「くっ・・・・・・」
立ち上がったガンジョウさんと、覚えていろよ、といった顔をしたデデルマンさんが目の前からワープして消えていった。
「・・・・・・ふう」
思わずため息を吐く。
何となくであるがちょっと疲れた感じだ。
「もう喋ってもいい?」
ギャーテーさんがこちらを窺いながらそう尋ねて来た。
「大丈夫ですよ。というか、長々とつき合わせてすみませんでした」
「いやー、最後の方、めちゃめちゃ楽しかったよコハマル君。デデルマンさんの顔芸とかすごかった!」
満面の笑みで答えるギャーテーさん。
「そうですねぇ。四つ目の話は他人事だからか、なかなか楽しめましたねぇ。コハマル君のいい人っぷりと動画を停止し続けるやらかしとか良かったですよ」
にやにや笑いで答えるズワイガニさん。
「あれはワザとではないんです・・・・・・ちょっとやっちゃったとは思いますけど。今度また謝らないとですね」
「もしかして・・・・・・」
と、シンタロウさんがぽつりと呟く。
「どうかしましたか」
「いや・・・もしかしてガンジョウ与力って女性か?」
「そうですよ」
「やっぱりそうなのか」
なんか考えにふけっている。
「おやおや~、もしかして惚れましたシンタロウさん」
「はあっ?何言ってんだズワイガニ」
「なんかそういう反応だったんで、からかってみました」
「そんなんじゃねえよ・・・ただちょっと、色々と大変だなと思ってな」
ガンジョウさんの格好とか見て、何か思う所があったりしてるようだった。
「ほーん、そうですか」
「あれぇ・・・・・・なんかPVPしたそうな顔してるよなぁ、ズワイガニさんよぉ」
「いやいや、初級大会優勝者に喧嘩なんて売ったりしませんよ、シンタロウさん」
「そうは見えねえんだがあ」
「骨肉の争いが、今始まるぅ~」
ギャーテーさんも煽らないの。
「とりあえず外出ましょうか」
「あー、ですね。出ますか」
「そうだな・・・ここでPVPするのは気が引けるしな」
「PVPはちょっと待ってくださいね」
みんな忘れてるのかな?それはちょっと悲しいな。
「待つって」
「飯食いに行きましょうよ。今日のメインイベントですよ」
「飯がか?」
「ああ、約束でしたね。コハマル君のお勧めの店に行くの」
「ちょー楽しみだったりする」
「期待は超えてくると思いますよ、ギャーテーさん」
「自分でハードル上げるのか」
「あ、そう言えば同心組の仕事内容とか聞いてなかったですね」
「あーそういえば」
「まあ次来た時でいいんじゃね。もう入ってるようなもんだろ」
「それもそうですね」
「コハマル君、紹介ありがとねっ」
「いえいえ、本当にただ紹介しただけですから・・・・・・」
そんな雑談をしながら僕たちは『めし処もちや』へと向かった。
「「「「頂きます」」」」
皆が手を合わせて持ってこられた食事を食べ始める。
黒米旨い、魚も旨い。
「確かにうまいな」
「これはいけますねぇ」
「シンタロウさんゴチです。確かに値段高いだけあるねぇ」
「ズワイガニも金出せよ」
「優勝者が奢るのが丸いと思うので出しません。まあお代わりする場合は自分が出しますかね」
「ズワイガニさんも出来る人~」
皆が思い思いの話をしながら食事は進んでいく。
僕はというと黙ったまま黙々と食べ続けている。
「静かに食い続けているな、コハマル」
「まあ黙って食べるのが食事への礼儀とかいう話もありますし」
「美味しいから黙る。良くあることだよね」
「そうですね。皆さん騒ぎすぎなければおやじさんに怒られないと思いますので」
言いながら最後の味噌汁に口をつける。
「ふおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「・・・・・・叫び始めたんですけど」
「一番うるさいのがコハマルになったんだが」
「これ・・・大丈夫なんだよね」
ギャーテーさんに心配されてしまった。
大丈夫ですよギャーテーさん。いつもこんな感じになります。
筋肉が動きたがっている。静まってくれ!
「体全身が震えてるんだが、本当に大丈夫かコハマル?」
「・・・・・・今、完全に大丈夫になりました」
「それ多分、大丈夫じゃない奴ですよね?」
「もう大丈夫でっす。落ち着きました」
味噌汁が全身を駆け巡る。
全ての細胞が生きている事にありがとう、と言っている。
最高としか言いようがない!
「けどやはり抑えられないいい!」
「頼むから、静かに飯を食ってくれ」
「体の震えは止まりましたけど、頭だけ振動し続けてますね」
「なんか高速でヘッドバンキングしてるみたい」
「いや、小刻みだから真冬とかで寒さに震えてる感じが近いんじゃね?・・・って何を分析してんだ俺は」
セルフ乗りツッコミが出来る人だったんですねシンタロウさん、侮れないですね!
「ガンギマリってこういう事を言うんですかね」
「発光とかし出しそうだよね。漲りが凄い」
「今、僕の頭の中は、光で一杯です!」
「その実況は止めろ、な?」
「・・・・・・ああ」
実は少しだけ、そうかな、と思っていた。
けどいつも通り、そんな事ないという結論になるものだと疑っていた。
けど、やっと理解が追いついた。
こんなことを思える日が来ようとは思ってなかった。
「シンタロウさん、ズワイガニさん、ギャーテーさん。今はっきりと確信しました」
「何を?」
自分の宣言にシンタロウさんが聞き返す。
「何かにハマったことのない僕ですけど、このVRゲームにはハマったかもしれません」
「味噌汁でか?」
「まあVR飯の美味さで、ずっとプレイしてる人とかもいますしね」
「確かに美味しいよここの味噌汁」
「そうでしょー!そうでしょーとも!」
「テンションが怖えよコハマル」
そんな会話を交わしながら、楽しい食事を済ませて、おやじさんに少し怒られ、最高で長い一日が終わりを告げるのだった。
ここまでお読みいただき有り難う御座います。
長かった・・・・・・
短く出来なかった。三話分くらい書いた気がする。
次も三日後に、よろしくお願いします。
おまけ
後日、他の店に連れてきてもらったコハマル君。
コ「うまい・・・」
シ「美味いだろ。五分の一の値段でこれならこっちに通った方が良くないか」
コ「確かに美味しいんですが、ここの味噌汁は光が溢れたりしないんですね?」
シ「味噌汁飲んで普通、光は溢れねえんだよ」
コ「実に惜しいですね。あの光がいいのに」
シ「これはダメだ・・・・・・末期だな」
ではまた。




