同心組の訓練場に行こう
デデルマンさんに連絡した所、外のクリスタル前で待ち合わせる事になった。
師範への挨拶も直ぐに済ませ、闘技場からジダイの北側城壁前のクリスタルまで戻って来た。
デデルマンさんがこちらに気づいてやってくる。
「お疲れコハマル君」
「お疲れ様です」
闘技場の席で見せていた落ち込んでいる様子はない。
どうやら立ち直っている様だった。
「強かったよコハマル君。正直予想外なレベルだった」
「負けちゃいましたけどね」
「本番も負けないからね」
・・・技を早く覚えてって事ですよね。
「その時はお手柔らかに」
「絶対に手は抜かないから」
「コースアウトしてくれると助かるんですが」
「そう何度も何度もドジらないよ」
「ちなみに大会の参加回数とか聞いてもいいですか」
「・・・・・・」
何でそれを聞くの?とでも言いたげな目で訴えかけてくる。
「あ、やっぱいいです」
「察してくれるのは嬉しいけど、なんかグサッと来たよコハマル君!」
聞かなければ聞かないで傷つけてしまうかぁ。どうすればよかったかなぁ・・・
「いやコハマル君、そんな困った顔しなくてもいいよ。冗談だからさ」
俯き気味に考えているとデデルマンさんがそう言ってくれた。
「そうですか、わかりました」
「後ろの彼らも一緒に行くって事でいいんだよね」
デデルマンさんが本題を切り出す。
「はい。よろしくお願いします」
先ほど、チャットで連絡した時に同心組に入りたい人が居ることは伝えておいた。
デデルマンさんが一歩前に出る。
「初級開始前に顔は見てたけど名乗ってはなかったね。デデルマンです。よろしく」
「ギャーテーと言います」
「ズワイガニです」
「シンタロウです」
自己紹介完了。
「優勝と準優勝の二人とは、またすごいメンツだね」
「バトロワの時に落ちましたが、ギャーテーもトーナメントまで行けば上位に入れる奴です」
一人はぶられた様に言われたからか、シンタロウさんがそうフォローした。
「ちょっ、そんなすごい奴アピールはいいよシンタロウさん。すごい奴ではないし」
「バトロワ時にはとても助けられましたしね」
「ちょっとズワイガニさんまで、勘弁してっ」
ズワイガニさんにもそう言われて、ギャーテーさんは恥ずかしそうに苦笑いを浮かべる。
「そうなの? コハマル君の周りは人材豊富だねぇ」
「たまたま道場の師範たちに無理矢理大会に出さされたメンツってだけなんですけどね」
そういえば賭けとかもしてた感じっぽかったな。
四人の中では三番目の順位だし、タカサ師範は損をしたのだろうか。
まあ、それはそれでいいかな。
「やっぱ道場通いの方が強くなれるのかねぇ」
「熟練度に補正かかってるみたいですし、そうかもですね」
「そうなんだっけ?」
「道場のヘルプに書いてある、とか聞きましたけど」
タカサ師範が言ってたはずだ。
「道場かぁ・・・同心組は訓練場があるからそっち使うしなぁ」
「訓練場は道場ではないんですか?」
「違うな。同心組が訓練したり、通報があった時に待機していた同心がワープするための場所って感じかな」
「ワープって訓練所にいなきゃ出来ないんですか」
「いや、同心組の正装してれば飛べる仕様だ」
あのピンクの半被か。
そういえば今日はしてないな。
「今日着てなかったのはオフだからですか?」
「大会中にワープするのは色々と不味いだろ」
「まあ確かに。けどオフの日とかが出来るなら道場に通うのも出来るのでは」
「そうなんだけどなぁ・・・やっぱ道場より訓練場なんだよなぁ」
しみじみとそう言うデデルマンさん。
なんか察せられるな。
『あの人』関係って事か・・・
「ガンジョウさんが訓練場にくるからですか」
「それだね。まさにそれ」
さも当然と言いだけな顔を向けられた。
まあ、デデルマンさんが幸せならそれが一番なことかもしれない。
今のままでも強いしね。
「メンバーはここに居るだけでオッケー?」
「そうなります」
「んじゃ、案内するからついて来て」
歩き出すデデルマンさんにみんなでついて行く。
「しかし、いっぺんに四人も同心組に入れられるかなぁ」
デデルマンさんがそんな事を言い出すので、ちょっと訂正しておく。
「自分は入りませんよ」
「俺も入らないですよ」
シンタロウさんも入らないつもりなので便乗してそう言う。
「コハマル君は約束があるからわかるけど、シンタロウくんも?」
「この後で飯食いに行くんで、まあ見学って事で」
「了解した。じゃあ三人か」
「二人ですからねデデルマンさん」
自分で約束がある、と言っておきながらこれである。
「ギャーテー君と・・・ズワイガニ食べ放題──」
「長いのでズワイガニでいいですよデデルマンさん」
「おう了解」
「・・・・・・?」
少し気になってズワイガニさんの名前を確認する。
そういえば名前言われたから確認してなかったな。
ズワイガニさんの頭上、名前の所には『ズワイガニ食べ放題ツアー幹事』と書いてあった。
長い名前だったんだな・・・というか名前なのか?
「ズワイガニは略称だったんですね」
「ああ、名前見てなかったのかコハマル君」
「今見ました」
「あはは・・・」
苦笑いを浮かべながらズワイガニさんが言う。
「サブキャラだからどんな名前でも良かったんだけど、当時の精神状態がこんな名前を入力しちゃう状態でね・・・・・・まあ、察して」
「はい・・・」
人生、色々あるんだろうなぁと思いながら黙る事にする。
「あっ、デデルマンさん、ちょっと尋ねたいことがあるんですがいいですか」
話を切り上げたズワイガニさんがデデルマンさんに声をかけた。
「なに?」
「同心組に入る方法ってなんで秘匿されてる、と言うか広まってないんですが、何故なんでしょうか」
「ああ、それはね──」
二人で話し始めたので、先ほどから態度がちょっと大人しめなシンタロウさんに声をかけた。
「シンタロウさん」
「ん」
「デデルマンさんに敬語使ってますけど」
「あ、それ、僕も気になった。もっとずかずか言うかと思った」
ギャーテーさんもそう感じてたらしく同意してくる。
「初級大会に出てる人だけど有名だしな。動画で見たことある人だし・・・気を遣うだろ」
「気を遣ってるんですね」
ちょっと意外な気がする。
自分たちにはかなりずかずか来た感じだったし、そう言う事も出来るのか。
「俺だって少しは気を遣ったりするぞ。それに二人は同心組に入るかもなんだろ。だったら印象が悪くなるようなことは、入る気のない蚊帳の外の俺はしない方が良いだろ」
「・・・・・・デデルマンって人に気を遣っていて、ズワイガニさんと僕の事も考えてくれてたって事?」
確認するようにギャーテーさんが尋ねる。
「・・・・・・そう言われると痒くなるからやめろギャーテー」
そう言ってシンタロウさんは頭を掻いて誤魔化した。
シンタロウさんのいい人エピソードが溜まっていくなぁ。
「番長はやっぱ良い人!」
ギャーテーさんが笑顔で言う。
「耳伸ばすぞこら」
「あはは、あいた、ああっ、またびりびりしてくるぅ」
摘ままれた耳を上に引っ張られてギャーテーさんが笑っている。
微笑ましい光景、とでも言うのかな。
「コハマル・・・そんな目で見るな」
注意するようにシンタロウさんが言う。
「え? 変な目してました?」
「何というか、子供を見守る親みたいな目だったぞ」
「ええー」
そんな目をしていたのか・・・垂れ目に設定したせいかな?
「あっ、コハマル君の中身、女の子説!」
思いついたようにギャーテーさんが声を上げる。
「ねえだろ・・・・・・いやあるのか?」
「ないですから、もう」
そんな話をしながら僕たちはデデルマンさんの後を歩いて行った。
ここまでお読みいただき有り難う御座います。
一日を終える予定でしたが、まさか訓練場までたどり着かないとは・・・・・・
次回は大会の日が終わる所まで書くつもりです。
よろしくお願いします。では次回・・・




