VSデデルマン 決着
≪迫るコハマルに対して横移動を始めるデデルマン≫
≪デデルマン選手のいつものムーブですね≫
横に逃げていく様に距離を遠ざけるデデルマンに角度を変えながら最短距離で向かって走る。
見た感じだと体を少し傾けた方向にスライド移動する技に見えた。
走っているような速度だが、体は殆ど上下には揺れず、正面を向いたまま、正眼でこちらに刀を構えてスライドして行く。
ホバーと言われるのも良くわかる移動技だ。
けど、そこまで優秀な技という気もしない。
面白い移動技なのはわかるが、今の所それだけ、という印象だった。
となるとやはり、実況が言ってたことが気になる。
「(便利な技とか言ってたし、やっぱり縮地に関係した技なんだろうな)」
跳躍から斬りかかろうとした時のタックル。
縮地にも飛斬と同様にタメみたいな行動がある。
踏み込むための一瞬の準備。
それがさっきのタックルの時にはなかった。
あったのは裾が膨らむ事。
それと同時にタックルされた感じだった。
裾が膨らむのが『低空飛翔』だとシンタロウさんから聞いている。
「(ホバーしている時は準備無しに縮地が出来るとかそういう事、だと思う)」
確証はないが、縮地を直ぐに打てるのは確定だと思う。
距離が詰まる。
徐々に速度が上がっていくデデルマンさんの進行方向に向かって踏み込む。
デデルマンさんがホバーしながら、くるりと横を向いた。
刀を振るそぶりはない。
目の前を通過しようとするデデルマンさんの頭を狙って振り下ろす。
「っ!」
振り下ろす直前にデデルマンさんが前から消えるような速度で通り抜けて行った。
縮地の移動だ。
刀を上段に構え直しながらデデルマンさんの方に向き直る。
裾が膨らみ、ホバーしながらこちらに向きを変えるデデルマンさんが見えた。
≪デデルマン選手、上段からの打ち込みを縮地で躱しました!≫
≪わざわざ横向いてから使わんでも出来るはずなんですがね≫
・・・・・・実況のゼニキンさんの方だっけ?
この人ずっと喋っていてくれないかな。
低空飛翔のヒントがポロポロ出てくるし・・・
「ネタばれすんな実況!」
実況席の方を向いてデデルマンさんが吠える。
と同時にこちらを正面にしながら後方へとホバー移動をし始めた。
僕は追いかけるために走り出した。
さっきのヒントだと、低空飛翔している状態だと、移動している方向には縮地が撃てるとかかな?
真正面を向きながらやばくなったら縮地で避けれると・・・・・・
良い技じゃん低空飛翔って、僕も覚えたくなってくるな。
まあそれは試合が終わってから聞いてみるとして──
「──速いな」
デデルマンさんを追いかけているのだが、S字を描くように後退を続けるデデルマンから、徐々に放されてしまっていた。
「まだまだ上がるよぉ」
リングの端っこギリギリを大きく旋回して遠ざかると、反対側のリング端の彼方まで逃げていった。
流石に今の僕じゃ追いつけるスピードじゃない。どんだけ速くなれるんだその移動技は・・・
「そろそろ行くよ!」
それでも追いかけて行こう走り出して僕はすぐに立ち止まった。
デデルマンさんが弧を描きながら低空飛翔でこちらへと進路を変えたのだ。
≪さあデデルマン仕留めにかかるか!≫
≪十八番の初見殺し~≫
ゼニキンさんは懲りてないな──ってそんな場合じゃない。
速度が尋常じゃない!
一瞬で目の前に迫る。
とんでもない速度を維持しながら左わき腹目掛けて横薙ぎが飛んでくる。
「くっ」
僕は迎撃よりも防御を選んでいた。
刀が走ってくる場所を刀身を押さえながら刀で防ぐ。
がきんっと大きな音が鳴り、後ろに弾かれた。
「んがっ」
瞬時に体制を整え、傷を確認。
傷なし。
直ぐにデデルマンさんの通り過ぎた方を向く。
流石に速度が乗りすぎていた。
端から少し離れた場所とはいえ、リングアウトしていてもおかしくない。
端で止まることが出来たとしたら、こちらのチャンスだ。
直ぐに飛び込んで上段を撃ち──
「────いないっ」
デデルマンさんの姿が見当たらない。
リングアウトしていたとしてもここから見えるはず──
「──まじっ!」
とっさにリングの端に向かって飛び込んだ。
瞬間、後ろ脚に電流が流れたような痺れが襲った。
地面を転がりながら自分が立っていた場所に向かって刀を構える。
そこに横薙ぎに刀を振り終わったデデルマンさんが立っていた。
今は低空飛翔状態ではなく普通に立っていた。
「今の避けるかね普通」
「避けれてません・・・」
「反応早すぎでないコハマル君? 初見で足しか斬れなかったのは初めてなんだけど。動画とかで俺の動き、実は知ってたとか?」
「動画は見てません・・・」
「センスしか感じないねコハマル君からは」
「どうも・・・」
褒められてるが、何とも言えない気分だった。
僕は斬られた足を見る。
右足の太ももから下がダメージエフェクトで黒く光り、徐々に上へと侵食していた。
片足を両断された訳だ。立つのも厳しいか・・・
「・・・・・・色々とわかりました」
今の瞬間、こういう事が起こったのではと、僕は推測した。
横薙ぎで通り過ぎたデデルマンさんは、僕が斬られていないか傷を確認して振り返る時に、縮地で僕が背を向けた方向から僕の後ろへと移動した。
とっさに自分の傷を確認してしまい、デデルマンさんから目を逸らしたのがいけなかった。
消えたように見えて動揺した。判断が遅くなって斬られた。
やられたとしか言いようがない。
そして、低空飛翔の特性も、わかったと思う。
「低空飛翔している時は、進行方向関係なく、全方向に瞬時に縮地で移動が可能って事ですか?」
真っすぐリング外へと向かっていたデデルマンさんが、あの速度でとっさに方向転換してこちらに向かって来るにはそれしかない気がした。
後ろまで移動していたのだ。縮地での移動しかないはず。
低空飛翔状態に限り、縮地をする方向の制限がなくなる。
どんなに速度が乗っていようと関係なく、行きたい場所に移動できる技。
それが低空飛翔。
・・・・・・そりゃ強い技って話だ。
「ほぼ当たりだな。付け加えるなら」
「向きも関係ないと」
デデルマンさんが笑みを見せる。
「当たりだ」
デデルマンさんが低空飛翔を始め、くるりと後ろを向く。
そこから縮地。
僕の横をデデルマンさんが後ろ向きのまま通り過ぎ、そっと首筋に刀を当てられた。
斬るつもりはない様だった。
「まあ、これが俺の独自技だな。コハマル君が技を覚えて大会で当たるのを楽しみにしてるよ」
「・・・・・・ちょっと今のままじゃ勝てる気がしませんが」
片手を上げて実況の方を見た。
完敗だったなぁ・・・・・本当にどうしたものか。
今はまだ対処法が浮かばないけど・・・・・・
「死力は尽くします・・・・・・ギブアップ」
「待ってるよ」
僕が降参を告げると実況も了承してくれた。
≪おおーっとコハマル選手ギブアップの模様です≫
≪デデルマンかっこつけすぎだろ。マジうざい≫
「うっせーゼニハゲ」
≪剥げてねぇよコルアアアア! 聞こえてんぞ! お前リアルの俺を知ってんのかコルアアアア!≫
デデルマンさんが実況のゼニキンさんと口喧嘩をしている所で、僕の初めての初級大会は終わりを告げた・・・・・・
ここまでお読みいただき有り難う御座います。
エイプリルフールに「三日後にまた」と書いたので二日後に上げようと思ってたんですがダメでした。
これからも三日に一本ペースでやって行こうと思います。よろしく。




