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初級大会開始


 唸るシンタロウさん。

 ビビル銀々次郎さん。

 この二人の対処をどうするか考えてみたのだが・・・・・・

 別にこのままでもいい気がしてきた。

 静観しようかな。


「うーん」


 けど、シンタロウさんが怒っているのは僕を銀々次郎さんが挑発してきたからだ。

 暴力を振るったりはしない気がするけど、シンタロウさんに迷惑をかけるのもダメだよね。


「もうやりたいことはやったんではないですか銀々次郎さん」

「お、おう」

「後はこちらで何とかしますから、今日の所はお引き取りください」


 しっし、と手で払う動作をしながら言う。


「了解だ! 挑発したからな! 覚えとけよ!」

「はあ・・・・・・わかりました」


 捨て台詞を履いて銀々次郎さんが逃げていった。


「何だったんですかね、今のは」

「そろそろ放せよコハマル」


 そういやまだ引き留めるために服を掴んだままだった。


「ああ、すみません」

「何だったんだ今の馬鹿野郎は」


 逃げてった方向を見ながらシンタロウさんがふんと鼻を鳴らした。

 シンタロウさんも同じ意見か。


「自分から言ってましたし、挑発をしに来たのはわかるんですが」

「試合前に挑発して何になるってんだ」

「二人とも知らないみたいですよ、ズワイガニさん」


 と、先ほどまで離れて成り行きを見ていたギャーテーさんとズワイガニさんがやってきた。


「ああいう盤外戦術があるらしいんですよ」


 ギャーテーさんがそう言う。


「そんなのあるんですか?」

「試合で相手に突っ込んで来てもらいたい人がやるやつらしいです。ズワイガニさんがそう言ってます」


 ギャーテーさんがそう言うので、ズワイガニさんの方を向く。


「やばい・・・マジでいるのかあのクソ戦法する人・・・」


 なんかうつむき気味になって何かつぶやいていた。


「あの、ズワイガニさん、ちょっと聞きたいんですが」

「ん、え、なに?」

「さっきの人の事なんですが、盤外戦術だとか」

「ああ、いや、多分おそらく間違いなくそうだよ」


 いやどっちだよ。


「いやまさかあの盤外戦術をここで見れるとは思わなかった」

「有名な戦術なんですか」

「『挑発カウンター野郎』って言われてるプレイヤーが居ましてね。試合前に相手を挑発して怒らせて、向かってきた所をカウンターの技で返り討ちにする。そんな戦い方ばかりしていたプレイヤーがいたんですよ」

「そうなんですか」

「その人は別の国のPVPで有名だった人なんですけど、やりすぎてアカウント停止にさせられたそうです」

「挑発行為をしていてアカウント停止になったと?」

「運営から大会前に挑発行為をすることをやめて下さいと言われてもやり続けて停止になったみたいです」

「ずいぶんとお詳しいですね」

「ネットにその人のホームページがありまして、ゲームのプレイ日記なんかを載せてたので。それがまた面白い内容なんですよ。関わらない限りは、見る分には面白い。そんな人なんで」

「なるほど」

「今は他ゲーやってるみたいですので、先ほどのギンギンさんがその人という事はないでしょうが、影響を受けて挑発プレイしているのは間違いないと思います。態度がとっても似てましたし」

「腹立つプレイヤーの真似っこか。タチが悪いやつだな」


 むすっとした顔でシンタロウさんが呟いた。


「まあ、真似だとしても、運営としてはやって欲しくないプレイスタイルですから、報告すれば停止はなくても厳重注意的なことはしてくれるんじゃないですかね」

「どうしますかね」


 ちらりとシンタロウさんを見る。

 シンタロウさん的には不快な思いをしたのだろうし、通報しといた方がいいかな。


「俺は別にどっちでもいいぞ。通報なんて面倒だろ」


 僕の視線に察してくれたシンタロウさんがそう言った。


「そうですか? じゃあ、今回は止めておきます」

「まあ、あんなプレイスタイルだと他の誰かに通報されるでしょうし放置でもいいと思いますよ」


 頷きながらズワイガニさんが言う。

 そんなズワイガニさんの顔を見てシンタロウさんが近づく。


「最近こっちで始めたサブキャラか」

「え」

「他の国のPVP情報なんて普通知らないだろ。おおかた別の国でも遊ぼうと思って作った心刀使いキャラなんじゃないかと思ってな。他の国に初狩り(しょがり)目的で来たんなら容赦しねえから」

「あはは・・・・・・シンタロウさんも初級に出ていいレベルではないのでは? 強そうに見えますが」

「大会優勝してないからな。優勝したら上行くよ」

「僕もそのつもりです」

「デデルマン以外にも厄介なのがいるもんだな・・・」

「そうみたいですね・・・」


 ・・・・・・なんか、効果音で言うと、ゴゴゴゴゴッ、とかなってそうな空気になって来た。


「コハマルさん、なんかやばいね」


 隣に来たギャーテーさんがシンタロウさんたちを見ながらつぶやいた。


「そうですね」

「何というかあれだね。格闘漫画のワンシーンみたいな空気になって来たね」

「ギャーテーさん、ちょっと楽しんでません?」

「わかる? いやこういう場面に出くわすのがダイブ系ゲームも醍醐味でもあると思うんだよね。初めて間もないけどこんなイベントが見られてワクワクしてるよホント」

「なるほど」

「コハマルさんは始めてどのくらいなの」

「一週間くらい・・・・・・正確には八日目ですかね」


 日曜に初めて日曜日になったから八日目であっているかな。

 そういえば、お腹が空いたりしてくるんだっけかな。

 お腹を擦ってみたが、今は特に問題なさそうだった。


「俺もそのくらい。大会で当たったらよろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします」

「あの二人には当たりたくないけどね」

「まあ、そうですね。強いみたいですし・・・けど」

「けど」

「負けるつもりはないですよ」


 対処は難しくても、技を避ける練習はしてきたし、間合いに入れば何とかなるかもしれないしね。

 上段の打ち込みの速さだけなら、そこそこ速いと言えるくらいにはなっている。


「やってみなくちゃですよ、ギャーテーさん」

「・・・・・・そうだねコハマルさん。自分も頑張ってみるよ」


 ぐっと力こぶを作って見せるギャーテーさん。


「しかしコハマルさんは見た目に反して強気だね」

「最近、そういうの良く言われてる気がします」

「さっきデデルマンって人を顔掴んでたし」

「あれは成り行きでああなった感じですよ」


 そんな会話を続けていると、上の方から会場中に響く声が流れた。


≪それでは第40回、ジダイPVP初級大会を始めまーす≫


 上の方を見ると、スピーカーのような物が見えた。

 そういうのあるのかこの世界。

 あたりを見渡すと、遠くの方にマイクを持って椅子に座る二人組が見えた。


≪今回も初級大会実況を担当しますコンソメと申しまーす。初心者の方どうぞよろしく≫

≪相方のゼニキンです≫

≪ゼニキンさん今大会は参加者が過去最高となりましたがいかがですか≫

≪いかがですかって・・・・・・まあ、某心刀使いのせいですね≫

≪お陰。そこはお陰って言いましょうねー≫

≪・・・・・・そうですね≫

≪とある心刀使いのお陰で今大会は他の国からプレイヤーがたくさんジダイにやってきましてねぇ。ヒューマンの参加者が数十倍になったそうですよー≫

≪なるほどー、すごいですねー≫

≪先ほどヒューマンの方々にインタビューしてみたんですが「PVPが一番盛んな国の大会に出てみたかったので、今回の騒動は有難かった」とおっしゃっていました≫

≪迷惑をかけるヒューマンプレイヤーも多かったみたいですがね。他の国だからと羽目を外しすぎないでいただきたいものです≫

≪先ほどからテンションが低いのはその当たりですかゼニキンさん≫

≪まあそうです。さっさと終わって欲しいものですよ、この『祭り』は≫

≪『祭り』の原因の心刀使いは今もなお逃亡中との事ですが、どう思いますか≫

≪どう思うかですが?≫

≪確かお知合いだとか言ってませんでしたか?≫

≪ここで言うなおい! どうなるかわかって言ってんのか!≫

≪おおっと、実況席周りをヒューマンが囲み始めましたー。こりゃあ大変だ≫

≪知り合いなだけだ! あいつの居場所なんか知らんぞ! 知ってたら金持ちのヒューマンに情報売りつけるわ!≫

≪ゼニキンさんの守銭奴節も見られた所で、大会のルール説明をさせて頂きます≫


 ヒューマンに囲まれてわちゃわちゃになりながらも、実況のコンソメさんがルールを説明し始める。

 シンタロウさんに聞いた通りのルールだったので、流す感じに聞きながらギャーテーさんに尋ねた。


「ヒューマンの参加者が増えたって言ってますが、何があったか知ってます?」

「いや、俺は知らないなぁ」


 首をかしげるギャーテーさん。

 他の二人はどうだろうかと、僕は尋ねたみた。


「お二人は知ってますか」

「何がだ」

「ヒューマンが多い理由ですよ。なんかあったみたいですが」

「掲示板のあれだね多分」


 ズワイガニさんがこちらに向き直って言った。


「ヒューマンの隠し職業みたいなのが見つかったんだけど、その情報を持ってるのが心刀使いでね。その心刀使いを探すために色々な国のヒューマンがやってきてるって訳だよ」

「そうなんですか」

「そうなのか」

「そうだったんですか」


 ズワイガニさん以外は知らなかったみたいだ。


「みんなもっと掲示板とか見た方がいいよ。なかなか面白いし」

「暇な時は金策してるからな」

「文字読むのが億劫で・・・・・・」

「鍛錬してたいですね」


 三者三様の返答にズワイガニさんは肩を落とした。


「金策と鍛錬だったらやりながら見れるでしょ」

「え、見れるんですか」

「見れるよ、ほら」


 そういうとズワイガニさんの前にウインドウが出てくる。

 こちらに見えるようにウインドウを回すと、どこかのサイトの掲示板のようだった。


「他人に見せる設定にすれば、こういう事も出来るよ」

「ゲームやりながら見れるんですね」

「知らなかったな」

「初耳です」

「ヘルプとかに書いてあるから、ちゃんと見た方がいいよ。動画も見れるし、見せる事も出来る」


 結構便利かもしれない。

 後々でやりたいことも増えたな。


≪あっと、すみませーん。ちょっとヒューマンの方々。離れてくださーい。今大会の大事な特別ルールを話しまーす≫


 サイトの開き方を教えて貰った所で、実況席からそんなセリフが聞こえてきた。


≪今大会、人数が人数ですのでトーナメントをやっていると終わりが遅くなってしまうので、急遽、特別ルールを設けました≫


 特別ルールか。

 なんだろうかね。


≪すばり、バトルロワイヤルです。参加者全員をリングに上げて、その上位128名でその後トーナメントを行う事になります。よろしくお願いします≫

≪ウンエー神の許可も取ってますので、悪しからず≫

≪まあ、リングが狭いと言う話がちらほら聞こえますが、ご安心を・・・・・・はいドーン!≫


 コンソメさんがそういうと、会場が広かった。

 闘牛場クラスだった会場が完全に球場や競技場みたいな大きさに変わっていた。

 会場中から「おおっ」と声が上がっている。

 ただ、一番声か大きいのは実況の人のようだった。


≪やべえ! まじやべえっ! 頼んだ通りやってくれたけど、ウンエー神マジすごいわ!≫

≪・・・コンソメさんや≫

≪あー、はいはいなんです≫

≪次、機会があったら俺にやられて≫

≪いいですよー。あ、それとですね。今回の大会参加費ですが、特別ルールの事もあるので、今回に限り参加費無しとなりました≫

≪ウンエー神の許可も取ってありまーす。良かったね≫

≪では大会は2分後に開始いたしまーす。よろしくお願いします≫

≪よろしくお願いします≫


 いきなりバトルロワイヤル大会になったのだが・・・・・・


「とりあえずこのメンバーで固まりませんか」


 ズワイガニさんがそう申し出た。


「バトルロワイヤルが始まったら集まって戦うんです」

「徒党を組むってか」


 シンタロウさんが言う。


「別に悪だくみをする訳じゃないんですからその言い方はどうかと。共闘と言いましょうよ」

「まあ他の奴らもやる事だろうしな」


 シンタロウさんも納得しているようだ。


「このルールおそらくヒューマンの人たちの方が有利な気がします」

「というと?」

「団体でジダイに来たヒューマンの人たちはその分仲間も多くいるはずです」

「ヒューマンの方がパーティで来ている分、仲間探ししなくても共闘できる奴が多く集まれるって話か」

「そういう話です」

「なるほど・・・・・・あっ、パーティか!」


 何かを感づいたシンタロウさんが叫んだ。


「実況のコンビがまたやらかした臭い! 誰かパーティ作れるか! 俺はやった事ない」

「僕は作れますが」

「ズワイガニ頼む! 始まったら多分ランダムで飛ばされる!」

「──なるほど!」


 シンタロウさんとズワイガニさんが焦って何かやっている。

 そんな二人を呆然と見つめるギャーテーさんと僕。


「どういうことコハマルさん」

「さあ、良くわかりませんでした」

「コハマル!」


 呼ばれてシンタロウさんに顔を向ける。


「今からズワイガニのパーティに加入してくれ! ギャーテーもだ! もうすぐ始まっちまう!」

「はい、わかりま──」

「コハマル君!」


 いきなり肩を掴まれて引っ張られた。

 振り返ると、挑発してきた銀々次郎さんがいた。


「あれ、銀々次郎さん?」

「共闘しようコハマル君!」

「ええっ、先ほどあんな挑発してたのにですか?」

「俺、友達いないんだよ!」

「悲しい話ですね」

「そうなんだよ・・・じゃなくて一人じゃ生き残れないでしょ? だから知っている人と組もうと思って」

「さっきちょっと話した程度ですが」

「袖すり合うも他生の縁って言うでしょ! 俺とコハマル君は前世で兄弟だったかもしれない!」

「兄弟が仲が良いとも限らないのでは?」

「確かにそうだけど──」

「コハマル君!」


 後ろからズワイガニさんに呼ばれて振り返る。


「パーティ組んで! 早く!」


 いつの間にか目の前にパーティ要請のウインドウが出ていた。

 早くと言うので押そうとして──


「頼むよコハマル君!」


 銀々次郎さんが手を掴んできたので押せなかった。


≪ではバトルロワイヤルを始めまーす≫


 実況のその一言と共に、僕たちは闘技場のリングへとワープした。



「・・・・・・」


 今になって気づいたが、パーティを組んでいれば同じ場所にワープしたんじゃないだろうか。

 シンタロウさんが実況がやらかしたとか言ってたけど、パーティを組めばそういうことが出来たという説明をしなかったことなんだろうな。

 刀を抜いて上段に構える。

 周りには心刀使いとヒューマンの冒険者。

 今にも誰かが飛びかかってきそうな状況にげんなりしながら、僕はつぶやいた。


「これは終わったのでは?」


 最後に銀々次郎さんが掴んでこなければこんな事にはならなかったかもしれない。

 けど、悪気があってやった事じゃないんだろうなぁ。

 後であったら謝ってきそうだ。


「オルァ!」

「ふっ!」


 そんなことを考えながら迫ってきたヒューマンの剣士に向かった刀を振り下ろした。



ここまでお読みいただき有り難う御座います。



今回で十万文字達成みたいですね。

これからも頑張っていきます。

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