PVP大会開始前
時間になってログインしてみると、タカサ師範が玄関の前に立っていた。
起きてるし・・・
「おはようございます」
「おはようコハマル君。いい朝だね」
「まあ、朝と言えば朝ですが」
こっちだと午前八時くらいだっけ。起きてても不思議じゃないか。
「まだ時間ありますけどもう行くつもりですか」
「そうだよ。コハマル君を待ってたんだ」
「なるほど、この時間でも入れるんですか」
「PVP大会の闘技場だったら日付変わったら入れるよ」
ふむ、午後二時(こっちの午前零時)には入れるという訳か。
「時間になるまでだったらPVPの闘技場の外で模擬戦とか出来るよ」
「そうなんですか」
「そうなんですよ。では、さっそく行こうではないか」
なんかテンション高めだな。
遠足前に小学生とかのテンションだ。
「もしかして寝てないとかないですよね」
「横にはなってたから大丈夫」
「・・・ってことは寝てないんですね」
どんだけ楽しみにしてたんだこの師範は・・・まったく。
歩いてクリスタルの所までやってきた。
クリスタルに触れると移動先に『PVP大会専用闘技場』というのが追加されていた。
タッチしてワープする。
ついた場所は大きな闘技場が見える場所だった。
ちょっと歩けばすぐにつく位置にある。
「あれですか」
一緒にワープした師範に闘技場を指さして尋ねる。
「あれです」
「結構高いですね」
「観客席が階段状に出来てるからね。高さはそのせいだよ」
「見下ろす感じに見るわけですね」
「といっても観客席を埋め尽くすほど人が来るわけでもないからね。最前列で見ることが出来ると思うよ」
「それはいいですね」
後で動画を見て確認も出来るし、ちゃんと試合は見ておこう。
「歩きながら話そうか」
「わかりました」
師範の横を歩きながら闘技場に向かう
「それでどうするのコハマル君」
「・・・大会に参加するかって話ですか」
「入る前に決めとかないとだからね。まあ時間あるから外でPVPやっててもいいけど」
「うーん」
今の所、大会に出る気がない。
道場で覚えられる技を一つも覚えていないのが一番の理由だ。
「まあ考えとくといいよ。私はちょっとあっちで話してるから」
「あっち?」
師範の指さす方を見ると、何人かのサムライの集まりがこっちに手を振っていた。
「お知合いですか」
「道場師範の集まりだよ。まあ、同好の士といった所かな」
同じような趣味の人たちという訳か・・・
「ニヤニヤしにきた人たちですか」
「言い方~。まあそうなんだけどね。んじゃ後でねコハマル君」
タカサ師範が行ってしまった。
僕はどうするかな。
「PVPの観戦でもするか・・・というか出来るんだっけ?」
ヘルプ見たりPVPの画面をにらめっこして、数分後に何とか観戦の方法を見つけた。
「範囲指定して観戦をタッチ」
タッチすると範囲内で今行われている対戦の項目が出てきた。
○○VS○○みたいな感じのが、ずらりと並ぶ。
何個かある項目から一つ選んでみると、視界が変わった。
「おおっ」
対戦が行われているのは石で出来たリングの上。
自分が立っているのはリングを囲む観客席だった。
「これって闘技場の中なのかな」
多分だが、位置を設定したPVPの様だ。
大会前だから、練習として闘技場のリングで戦うようにしているのだろう。
とりあえずPVPを見てみる事にする・・・・・・
今見ている二人は結構長く対戦を続けてくれた。
そのおかげで大会のルールがだいたいわかった。
リングは一段高く作られているのだが、端から外に出た場合リングアウト負けになるみたいだ。
端からたたき出されたプレイヤーが降参してギブアップのボタンをタッチしているようだった。
一試合は三分ほど。
それ以上長くなる場合は引き分けとなっていた。
大会だと引き分けではなく、なにか違う形で勝敗を決めるのかもしれない。審判とかのジャッジとか。
そこら辺はわからないが、一試合が三分というのはあっている気がした。
まあ大会が始まればわかる事だし、その時ちゃんと確認しよう。
≪観戦を終了します≫
唐突に、そんな音声が聞こえた。
どうやら一人がPVPを切り上げたらしい。
元の場所に戻ってくる。
時間を見ると午後七時半。
大会開始三十分前だった。
「コハマル君」
タカサ師範が声をかけてきた。
「いないから帰っちゃったかと思ったよ。PVPやってたのかな」
「いえ、観戦してました。暇だったので」
「暇だったらPVPやってれば良かったのに」
「見てるのが面白くて対戦する暇がありませんでした」
「本当に集中すると止まらないよねコハマル君は」
そうなのかな・・・まあそうかも。
「そいつがお前さんの所の弟子か」
と、タカサ師範の来た方からぞろぞろと、心刀使いの人たちがやってきた。
前の方に年配のおじさんが。
その後ろに名前の見えるプレイヤーたちがいた。
「期待の新人だ」
自慢げにタカサ師範が言葉を返す。
「PVPはしてなかったみたいだが、大会で活躍できると思ってるのか」
「いい所までは行くと思うよ」
「どうだかなぁ」
「あのー。話が見えないんですが」
聞いている限りだと、僕が大会に出る前提で話が進んでいる気がする。
タカサ師範が僕を見た。
「コハマル君」
「はい」
「大会に出よう!」
「・・・・・・なぜに?」
「こちらに並んでるおっさん連中が──」
「「「おいっ」」」
手を向けて紹介するタカサ師範に、おっさんと言われた人たちが怒鳴った。
「おっさんと言うな。お前もいい年だろ」
「棚に上げんなタコ」
「そうだぞタカサ」
「・・・・・・こちらに並んでいるのは他の道場の師範をやっているやつらだ。んで、その後ろにいるのが最近こいつらの道場に通い始めた新人さん達だ」
後ろにいる新人と呼ばれたプレイヤーたちを見る。
何故か苦笑いをしている人もいた。
「いつも大会の観戦を一緒に見たりしている仲なんだがな、今日は偶然にも、新人のプレイヤーを一人ずつ連れてきている事がわかった。そこでお互いの道場の新人を初心者大会に出してみようという話になってね」
「なるほど。そういう話な訳ですね」
「そうなのだよ。こいつらは自分の道場の新人が一番強い、一番上位に食い込めると息巻くもんだから腹が立ってね。そんなことはない!うちの道場のコハマル君が一番強いと言ってしまったのだ」
「言ってしまったのだって・・・」
「だから勝とう!コハマル君」
「技一つも覚えてないんですが、忘れてませんよね」
「・・・・・・それでも勝てると思ってるよコハマル君」
今の間は何だって話ですよ。まったくもー。
「えー・・・初めまして」
とりあえず新人の弟子と言われている三人のプレイヤーに挨拶をする。
「コハマルと申します」
「ギャーテーっす」
「ズワイガニです」
「神魔神太郎だ」
一人だけかっこいい名前だな。
「かっこいい名前ですね、神魔神太郎さん」
「いや・・・ちょっと変えたいんだがな」
「神魔神太郎をですか」
「あだ名をつけられてな。そのせいで変えたい」
「あっ・・・察し」
ギャーテーがなにか察したらしい。
ズワイガニも肯いている。
僕は察せなかった・・・何かあるのだろうか?
「シンタロウとでも呼んでくれ」
「わかりました・・・皆さん大会に出るんですか」
「まあ・・・ねえ」
周りを見渡すギャーテーさん。
「見学のつもりだったんだけどね」
仕方なさそうに言うズワイガニさん。
「師範がお金出すと言っているからな。俺は出るぞ」
シンタロウさんは乗り気なようだ。
「お金出してくれるんですか」
振り返ってタカサ師範を見ると、目を逸らされてしまった。
「タカサ師範・・・」
「お金、ないぞ、私。知ってるでしょコハマル君」
「知ってますけど、1000Cくらいあるでしょ」
「コハマル君の方がお金持ってるでしょ。勝てば戻ってくるんだしまず自分で払いなさいね」
そういってタカサ師範は知らんぷりを決め込むつもりだ。
「・・・・・・賭けてたりしませんよね」
「ふぉっ」
「自分たちの順位でお金やらが動いたりすることがないかを聞いています」
「ないよ・・・多分」
素直な所はいい所だと思いますが、事と次第によるといういい例ですねほんと・・・
「・・・・・・」
ちらりと他の師範たちを見たか、目を逸らされる。
なんだかなぁ。
面倒くさくもなって来たし、大会の観戦は諦めて逃げてみるのも手かな。
それでいいか。
「野暮用を思い出したのでいったんログアウトしたいと──」
「話は聞かせてもらったよコハマル君」
がしっと肩に手を回された。
ぞっとして首を回すとさっきまではいなかった人が立っていた。
「お金は俺が出すよ。初級大会を一緒に盛り上げようじゃないか」
「・・・いきなり肩掴まれるとびっくりするんですが」
「驚かせちゃったか、悪かったよ」
にこやかに謝る、が肩から手を離してくれなかった。
「初級大会に出るんですか・・・」
「優勝したらもう出れないけど、まだ優勝したことないからね」
「そうなんですか」
「男子三日合わざれば刮目してみよって言うしね。強くなったか期待してるよコハマル君」
口調は優しげなのだが、視線だけは前会った時よりも、強く感じた。
そこに立っていたのは、同心組に入るよう誘ってきた、キョーコちゃん大好きのデデルマンさんだった。
ここまでお読みいただき有り難う御座います。
PVPの大会の闘技場に入れる時間を日付が変わってからに変更しました。
勢いで書いた設定だったりする部分は、後々で変更する場合があります。
ご了承ください。




