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ジョーダンサイキョー流道場


 次の日。

 いつも通り準備を済ませてログインする。今日で四日目になるかな。

 ログインした場所はジョーダンサイキョー流道場の外だ。

 道場の中でログインするのも考えたがタカサ師範に止められたので外でログアウトしていた。

 まあプライバシー的な何かだろう。

 さっそく道場に入ろう。


「タカサ師範いますかー?」


 玄関を開けて呼びかける。

 こっちの時間だと朝八時くらいかな。問題はないはずだ。

 直ぐに返事が返ってきた。


「コハマル君かい」

「そうですよ」

「先に道場の中に入っちゃっててくれるかい。すぐ行くから」

「わかりました」

「暇だったら素振りでもしててくれ」


 姿は見えないがそう声が返ってきた。朝ごはんでも食べているのかな。

 言われた通りに道場の中に入り、自分の心刀を抜いて素振りを始めた。


「お待たせしましたコハマル君」


 しばらく振っているとタカサ師範がやってきた。

 服装は昨日と違い、青い色をした服を着ていた。


「道場用の服ですか」

「剣道着とか言われている服だね。コハマル君のもあるからこれに着替えちゃって」

「はい」


 渡された剣道着に着替える。

 着替えるのは簡単で、アイテムボックスに入れて置けば、装備変更で直ぐに着替えられた。

 学校で暇な時間に調べた賜物だ。


「いやいや、プレイヤーは楽だねぇ」

「そうですね」

「じゃあ稽古を始めようか」

「お願いします」

「・・・と、その前に。コハマル君は道場に通うのは初めてだったね」

「そうなります」

「初めに教えておくことが一つある」


 教えておく事・・・ステータスのあれかな。


「心刀使いのプレイヤーは道場に通わないと解放されないステータスがあるよね」

「今も『?』になってますね」


 ステータスをチラ見して答える。


「その項目には『刀気』という言葉が入る。刀の気と書いて刀気だ」

「刀気ですか」

「まずはそれの解放から行おう。刀を構えてくれ」

「はい」

「構えたら刀に向かって『刀気解放』と唱える」

「刀気解放・・・・・・」


 言われた通りにやってみたが、特に変わった様子はない。


「これでいいんですか?」

「ステータスの項目はどうなっているかな」


≪   ステータス   ≫

≪体   熟練度 32 ≫

≪腕全体 熟練度 26 ≫

≪足全体 熟練度 76 ≫

≪刀気  熟練度 10 ≫


 見てみるとちゃんと『刀気』の項目が追加されていた。


「追加されてました」

「じゃあ刀気の所をタッチしてくれ」


 タッチすると下にステータスと同じような項目が現れる。


≪刀気  熟練度 10 ≫

 ↓

≪体   刀気度  0 ≫

≪腕全体 刀気度  0 ≫

≪足全体 刀気度  0 ≫

≪ポイント    10 ≫


「なんか出てきましたけど」


 ステータスとは違い熟練度ではなく『刀気度』という項目になっていることと、一番下にポイントというものも出てきた。


「ポイントはあるかな」

「10ポイントあるみたいです」

「じゃあ体、腕、足に1ポイントずつ振り分けてみてくれ」

「・・・・・・振り分けました」

「これでプレイヤーであるコハマル君も、心刀使いの技を覚えられるようになったはずだよ」

「そうなんですか」

 

 なんだかあっさりしすぎてて実感がわかない感じだ。


「ではさっそく道場の鍛錬を始めようと思うけど、何か質問はあるかい」

「そうですね・・・刀気って何なんです?」

「刀気は心刀の成長によってつく力だ。心刀を使えば使うほど刀気の熟練度が上がっていく。心刀使いにとって心刀は自分の半身だから一緒に成長していかないとね」

「半身ですか」


 キャラが成長すると心刀も成長し強くなる、というのはどっかで聞いたな・・・チュートリアルだったっけ。

 ただ半身というほど重要な物って感じはしなかったから気にしてなかったけど。


「あ、知らないか・・・そこの説明もいるね。じゃあプレイヤーではない、ここの住人の心刀使いがどうやって生まれてくるのかを少し話そう」

「お願いします」

魂大病こんだいびょうという病気がある。ジダイ独自の病気でね。生まれてくる子供の魂が大きくなって生まれてくる病気だ」

「そんなのがあるんですね」

「うん。その病気を持って生まれてくる子供は1年を待たずして亡くなってしまう。大きすぎる魂に子供の体が持たないのが原因だ」

「不治の病みたいな感じですか」

「当時はね、今は違う。魂大病の治療は今では確立されている」

「・・・・・・」

「その治療というのが『大きい魂を切り分けて他の物に移す』という方法だ」

「移す・・・・・・というと」


 僕は自分の心刀を見た。


「察しの通りだよ。魂の移し先は魔鋼まはがねと呼ばれる魔力などを通しやすい金属でね」

「それが心刀になる訳ですか」

「まあそうだね。魂が魔鋼に定着したら鍛えて刃物にする。初めは小刀くらいの大きさだけど、病気だった子が成長すると、それに合わせるように小刀も大きくなる。十代中盤くらいで完成。心刀使いの出来上がりって訳」

「病気の治療の結果、心刀使いが生まれるって話ですか」

「そうだね。プレイヤーにはあまり関係のない話かもしれないけど、そういった経緯で心刀使いは生まれてくるんだよ」

「魂の切り離しって、簡単にできるものなんですか」

「出来ないね。切り離しは魔人の人にやってもらう感じだよ」

「魔人ですか」

「魂とか魔鋼とかの事は魔人の人の方が詳しいからね。この国の産婆はだいたい魔人だよ」


 魔人が産婆の国か。違和感がすごいな。


「魔人ってイメージだと人間と敵対してるって気がするんですが大丈夫なんですか」


 チュートリアルの説明でもそんな感じなのが書いてあったはずだ。


「大丈夫だよ。この国のトップも魔人だし」

「あ、そうだったんですか」


 それは初耳だな。

 ここ、魔人の国だったのか・・・


「魔界から地上に出てきた魔人たちで作った国って話だよ。初めは魔人だけだったけど、行き場のないヒューマンや魔女、ドワーフを引き入れて完成させたそうな」

「そうなんですか」

「魔女に寛容なのもその経緯があったからだそうだよ。他の国では迫害されていることが多いからね」

「なるほど、わかりました」

「・・・・・・何の話をしていたんだったか」

「・・・刀気はなにかって話でしたね」

「ああ、そうだったね。脱線が過ぎたね。話を戻そう。心刀は半身、刀気の熟練度は心刀自体の強さを表している・・・といった感じだね」

「なるほど」

「プレイヤーの場合は心刀使いの技を覚えるために必要な、特殊な力だと思っておけばいいよ」

「わかりました。それで、1ポイントだけ振り分けた理由とかは?」

「それはね、心刀使いの技術を覚えるために振って貰ったんだ」

「技術ですか、技ではなく」

「心刀使いの技術の方は道場に通わなくても覚える事がある。けど、刀気を解放していないと覚えられない。と、書いてあった」

「書いてあったって・・・あの、何見てるんです?」


 目線を落としてタカサ師範が空間を指でポチポチしていた。


「ちょっと道場主用のヘルプをね・・・」

「ヘルプですか」

「ウンエー神が授けてくれた祝福でプレイヤーに人に教える時の用語や説明文なんかが載ってる・・・」

「はあ」

「熟練度とかポイントとか、こっちの住人には馴染みのないモノが多いから・・・」

「・・・・・・って事は熟練度とかはNPCの人は知らないものとかそういう事ですか」

「ステータスも開けないって言えばわかるかな」

「なるほど」


 あくまでもプレイヤーにわかり易く作られているゲーム的な物で、NPCの人たちはプレイヤーが来るようになってそういうものがある事を初めて知った・・・・・・ちょっと違うか。


「プレイヤー独自の能力って感じですか」

「そうだね。その独自の能力もこみで説明しなきゃだから大変なんだよね」

「はあ」

「・・・・・・ああーもう! もういいか!」


 いきなり大声を出すタカサ師範。


「あの、師範・・・大丈夫ですか」

「調べ物とか、細かな事とかあまり好きではないんですよっ。大雑把に感覚でいいんですよ心刀使いは!」

「豹変しないでいただけませんかね。怖いんですか」

「心刀使いの技術については体を鍛えていけば覚えられるものですっ。頑張ってください!」

「はあ、わかりま──」

「ついでにこの道場で覚えられる技についても教えておきますっ。ジョーダンサイキョー流奥義『滝斬り』です!」


 言うなり横を向いて上段に構えると、何かを放った。

 正直、前方に打ち込んだように見えたが、速すぎて何が何だかわからなかった。


「えっと、あの──」

「いずれ覚えられますっ。まずは上段の構えから素振りをやってて下さい!」

「どのくらいで覚えられるんですか」

「それは私が見て判断しますっ!」

「はあ」

「では頑張ってくださいっ」


 タカサ師範が道場から出ていこうとするので呼び止めた。


「あの、どちらに」

「仕事です」

「・・・道場が仕事では」

「維持費の為に外に仕事に出てるんですっ。お金になりますから!」


 身も蓋もない事を言う人だ、本当に・・・


「あの・・・行ってらっしゃいませ」

「他の所に行く場合に戸締りとか気にしなくていいので、では!」


 師範は道場から出ていった。多分服を着替えに行ったのだろう。


「・・・はあ」


 思わずため息が漏れる。

 ほったらかしにして出てっちゃったよ・・・

 通う道場を間違った気しかしない。

 これで強くなれるのか疑問で一杯だ。

 これが毎日続いたとしたらやる気がなくなって辞めるかもしれないな。

 そうしたら前にやっていたゲームでもまたやるかね。


「コハマル君!」

「あれ、タカサ師範?」


 着替えてきたタカサ師範が道場の入れ口から顔を出して呼びかけてきた。


「慌ただしくて申し訳ない」

「いえ別に、気にしてません」

「少し落ち着いたので言っておくことがあります」

「はい」

「私はコハマル君を最強の心刀使いにして見せます!」

「・・・・・・最強は言い過ぎでは?」

「そうですね。私もいますし」


 マジか、この人最強なのか。わからんかったわー・・・

 全然そうは見えないが自信は伝わってきた。


「強い心刀使いにする事は約束できます。ので、ここの道場で強くなるための鍛錬の仕方を教えておきます」

「・・・わかりました」


 真剣な表情の師範を見て、背筋を真っすぐにする。


「上段の素振りをして下さい。疲れたら道場の中を走ってください。それを繰り返してください」

「・・・・・・それだけですか」

「今はそれだけで、基礎体力をつける運動だと思って頑張ってください」

「・・・走るのは道場の中でですか?」

「外より中の方が効率がいいとヘルプに書いてありました。何かしらの祝福がかかっているのでしょう」

「道場内限定の祝福ですか」

「そうです。また、道場内ではスタミナの回復も早くなると書いてありました。手と足が両方疲れている状態にはならないと思います」

「なるほど」

「鍛錬に飽きた場合は、行きたい所に行ってください」

「・・・・・・いいんですか」

「そこまで束縛するつもりはありません。出来れば30分くらいは鍛錬していただけると嬉しいです」

「わかりました」

「夕方には帰ってくるので、時間がありましたら来てください。では行ってきます」


 タカサ師範は出ていった。

 ・・・・・・どうしたものかねほんと。


「とりあえず素振りだな」


 言われたように上段の素振りを始める。

 腕がピリピリとしてきてスタミナ切れてきたら道場内での走り込みだ。狭いからやりずらいけどね。

 後でヘルプで心刀使いにできる事とか調べるものやっておこうか。技やら技術やらと色々あるみたいだし。

 実際知らないことが多すぎるしね。

 何はともあれ、心刀使いとしての道場通い1日目が幕を上げたのだった。



ここまでお読みいただき有り難う御座います。



ちょっとずつやっていけばいずれ終わる。自分の座右の銘です。


ちょっとずつですがちゃんと話を進ませて最後まで書きたいと思います。

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