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三日目


 今日一日考えてみたのだが、やっぱり『とーちゃんチャンネル』で配信していこうと決めた。

 自分のチャンネルを作って配信するのは面倒くさいし。

 今はまだ、今はまだその時ではないと熟考の末の結論だ。

 ベナミヤにダイブする。


 とりあえず何しようかな。

 といっても、やりたいことは一応決まっている。

 ヤルゼさんに勝てるようになること。

 三か月前からやってるって言ってたからそれ以上に努力するか、何か別の方法を考えなければいけない。

 格闘ゲームが好きな友人に聞いてみたが、初心者が上級者に勝つのなら、一に『知識』、二に『センス』らしい。


『知識がないと、どんなにうまくても一定以上強くなれないのが今の格ゲーだよ。まあ飛びとか玉撃ちはセンス必要かもだけど。相手の出す技とこっちの出す技の相性とか、距離によって相手が出してきやすい技は何か、それに対してこちらは何を出せば勝てるかとか。色々と調べて実戦で出せるように技を振る練習とか、それから実戦でちゃんとキャラを動かせるかとか。頑張って少しずつ覚えていけばその内その勝ちたい人にも追いつけるんじゃない? どんくらい強いのか知らないけど。センスは知識の後。知識をどれだけ早く身に着けられるかがセンス。センスなくても知識をずっとやって、体にしみ込ませるように努力し続ければ必ず強くなるよ。強くなるには努力だよ。努力はチートだからね』


 努力はチートはそいつが好きなプロゲーマーのマイナーな名言らしい。


『PVP? 格ゲーじゃないの? とりあえずどんなのか教えて・・・・・・・・・『飛斬』と『縮地』ねぇ・・・聞いた限りだと縮地は置き技で良さそう。来る場所わかってるならそこに合わせて技ふっとけばいいんじゃない? 飛斬はタメがある飛び道具みたいだから飛び越えればいいでしょ、多分。まあ色々試してみれば・・・・・・え、一発当たっただけで勝敗着いちゃう場合があるの? だったら話は単純かなぁ。先に一発あてる技を覚えればいいだけ。不意打ちか初見殺しな技があればそれ覚えれば一勝は出来るんじゃない。ま、がんばれば?』


 投げやりに終わったが、アドバイスは活かそう。

 不意打ちか初見殺しの技。そんな技があればそれを覚える。

 知識も蓄える。wikiで心刀使いの技を覚えられる道場を色々見てみる。

 目ぼしい道場があったらそこに通う。


『不意打ちや初見殺しの技でやるなら特化した方がいいかもね。その技だけは出せば当たるくらいに鍛えるとか』


 最後にこんなことも言っていた。

 特化させるのもありだな。まあ、やってみよう。

 ・・・・・・と言っても──


「まずは稼がないと、かな」


 道場に通う為のお金をまず手に入れないと駄目だよね。

 十万Cとか言ってたっけ。


「とりあえずクエストをやろう」


 クエストで稼いでお金を貯めよう。

 まずはそれからだ。

 今いる場所は昨日ログアウトした西側の城壁出入口の近くだ。

 そこにあるクリスタルで北側にワープしてプレイヤーハウスに入る。

 何か僕にも出来そうな依頼はないか探してみると、簡単そうなのがあった。


「配達クエストね」


 物を指定された場所に持っていくクエストだ。

 国の中の場所に持っていくクエストがあり、これなら今の自分にも出来そうだと思った。

 まあ、報酬は安いけど・・・


「まあ、塵も積もれば山となるというしね」


 まずは出来るクエストをクリアしていくことにした。



 配達クエストの中身は単純な物だ。

 クエストを受け付けると荷物がアイテムボックスに入れられるのでそれを届けるだけ。

 指定されている場所がわからない場合でもナビゲートしてくれるシステムがあるので商店街に届ける場合は特に簡単に済ませられる。

 ただ、道場街へのクエストはナビが途中で切れてしまうのでかなり迷った。


「ゴールを作ってない迷路みたいだ・・・」


 近場を歩いている人などに聞いたりして何とか荷物を届けることが出来た。

 その分報酬も高かったのが嬉しいところだ。

 だいたい二時間くらいやったかな。

 街中の配達クエストがなくなったので外に出るクエストも受けてみる事にした。

 ちょっと気になるクエストもあったし。


「魔界の入り口まで届けるクエストか」


 西側の森の中に入口があるらしく、そこまで届けるクエストだ。

 外に出るクエストは軒並み高かったが、他の国へ行く配達クエスト以外で、一番高いのがこのクエストだった。

 西側城壁をフリーフィールドで抜けて、目の前の田んぼを迂回し、奥の森へと入った。

 モンスターがいるかと思ったのだが、あまり見かけない。

 時々、プレイヤーらしき人はいた。木の根っこから何か採取している様子だったが、そのままスルーして進んだ。

 森の中はナビも効かなかったので、カンだよりにその辺を走って回る。

 軽く走る程度ならそこまで疲れないらしく、スタミナ消費による重たさとかは感じない。足全体のステータスが高かったお陰かもしれないな。


「・・・・・・お」


 駆け足程度で走り回っていると、何やら色とりどりなものが見えた。


「あそこかな」


 近づいてみると色とりどりなものはバラの花だった。

 バラの茨が三メートルくらいの高さまで生い茂っており、それが横にずっと続いていて中心を囲うように出来ていた。

 バラで出来た城壁。僕にはそう見えた。

 この中が魔界の入り口かな。

 横にそって歩きながら入口を探してみる事にする。


「心刀使い、のプレイヤーかね君は」

「はい?」


 ふいに後ろから声をかけられて振り返る。

 少女が小首をかしげて立っていた。

 十代半ばくらいに見えたが、声はどことなく大人びて聞こえる声だった。


「そうですが・・・・・・えっと」

「プレイヤーがこんなところに何の用で来てるんだい」

「配達クエストで魔界の入り口まで行きたいんですが、この中に入れなくて」


 バラの城壁を指さすと、少女は首を横に振った。


「この中は魔界の入り口なんてないよ。魔界の入り口はあっちさ」


 バラの城壁とは別の方向を指さして少女は言った。


「そうなんですか。ありがとうございます」

「ちなみにここから南には行かない方がいい。魔女でも迷う『魔法の森』にたどり着いてしまうからねぇ」

「魔法の森ですか」


 ちょっと気になりはするが今はスルーだな。


「早めにここから去った方がいい。このバラの中にいる奴らに見つかったらひどい目にあわされる」

「はあ・・・・・・ここって何なんですか」


 バラの城壁を見ながら訪ねてみた。


「ここは魔女の町さ。国としてはジダイの一部だけどね」

「魔女の町ですか」


 確か、魔力が多いヒューマンの亜種とかいうやつだったっけ?

 しかし、何でこんな森の中に・・・


「プレイヤーの人は知らないかもしれないけど、魔女って奴は危険なのさ。森の中で暮らしているのはジダイに住む一般人たちを守るためでもあるんだ。あたし達としてはこんな場所でも住まわせてくれるだけありがたいけどね」


 察してくれたのが、少女がそう言った。


「ということは、魔女なんですか、お姉さんも」


 見た目少女だけど、話し方が大人びているので、僕はそう尋ねた。


「そうさ。お姉さんというよりはお婆さんよりだけれどね。けどお姉さん呼びでいいさ」

「はあ」

「生返事だねぇ。ところで、運んでる荷物は何なんだい」

「中身は見てませんが、これです」


 尋ねられたので、アイテムボックスから荷物を取り出して見せた。


「お弁当かね。警備の奴らの飯だろうさ」

「そうですかね」

「そろそろ向かった方がいいよ」

「そうですね、そうします」

「プレイヤーと話したのは初めてだったからね。ついついとどまらせて話してしまったよ」

「お気になさらず」

「話をしてくれた礼に、一つ魔法をかけてあげるよ」

「魔法ですか?」

「ああそうさ」


 そういうと、ステッキを取り出し、目の前でくるりと円を描いた。

 ぱっと光が出て、すぐにステッキをしまう。


「ここらはモンスターはめったに出ないけど、念には念をってね。姿が消える魔法さ」


 言われて自分の手を見ると、透明になっている様で見えなくなっていた。

 下を見たが足もない。完全に消えているようだ。


「モンスターが出ないのは魔女の町があるからですか」

「そうさね。森の入り口付近くらいしか出ないんじゃないかね」

「なるほど。ためになりました」


 見えていないだろうけど、お辞儀をして、僕は魔界の入り口があると教えられた方向に向かうことにした。


「では行きます」

「あまりここいらには近づかない事だね。魔女のおもちゃにされても知らないよ」

「わかりました。ありがとうございました」


 手を振ってくれる魔女の少女に別れの挨拶を済ませ、僕は走って魔界の入り口へと向かった。



 しばらく走ると数人のサムライ姿の人影が見えた。

 警備の人たちかな。

 何かを囲んで立っている様で、近づいてみると囲んでいる中心に大きな穴があった。

 あれが魔界の入り口なのだろう。

 近場まで来たが、こちらに気づいていない様なので声をかける。


「あの、すいませーん」


 一斉にこちらを見る。腰の刀をいつでも抜けるように全員が構えた。

 え、なんで?


「誰だ!」

「どこにいるんだ?」


 キョロキョロと警戒しながら周辺を見回している。

 ああ、魔女の人がかけた魔法がまだ切れてないのか。


「すいませーん。さっき魔女の人に姿が消える魔法をかけて貰ったので、そのせいで見えないんだと思います」

「そこにいるのか」

「はい、います。配達クエストの荷物を届けに来ました」


 そういってアイテムボックスから荷物を取り出す。

 荷物は見えているのでふわふわと荷物だけ宙に浮いているように見える感じだろう。


「クエストか。わざわざすまない」

「ここに置いても大丈夫ですか」

「ああいいよ」


 地面に荷物を置く。後は帰ってプレイヤーハウスで報酬を受け取るだけだ。


「見えないがおつかれさん。届けてくれてありがとな」

「いえいえ・・・あ、ジダイの国ってどっち側ですか? ちょっと方向が良く分からなくなってしまって」

「指させばいいかな、あっちだよ」

「ありがとうございます。では──」

「いやちょっと待った」


 帰ろうとしたところで、荷物の中身を調べていた人が呼び止めた。


「あー・・・・・・魔女にあったんだったな」

「はい、そうですが」

「荷物は見せたりしたか」

「しましたが・・・・・・」


 え、もしかして・・・・・・


「中身、すり替えられてるな」


 そういって荷物の袋を裏返した。

 ゴロゴロとそこらへんにある石ころがたくさん出てきた。


「えぇー・・・・・・」

「魔女についてどの程度知っている?」

「全然知りません。さっき初めて会って、魔女は危ないからもう来ない方がいいと言われました」


 ぺらりと音がして、裏返した袋から一枚の紙がひらひら落ちた。

 警備の人が拾い上げて紙を見る。


「見えるか? いいように遊ばれたみたいだな」


 いまだ透明なままの僕に向けて警備の人が紙を掲げた。

 そこにはこう書かれてあった。

 また来てね、と・・・・・・



 クエスト失敗の報告をするために僕は森の中を走っていた。

 透明化は走っている最中に切れた。

 その透明化の魔法も遊びの一つだったのだろう。

 頭の中に浮かぶのはさっきの紙に書いてあった魔女の人からのメッセージ。

 また来てね。


「・・・・・・ぷはっ」


 思わず笑いが込み上げた。

 クエストを失敗にさせられた事に対して、何故だが腹立たしい気持ちは沸いてこなかった。

 何とも言えない不思議な体験をした。そんな気分でいっぱいだった。


「いや・・・・・・しばらくは近づかない様にするつもりですが、何と言っていいかわかりませんね、ほんと・・・」


 なんだかんだ、楽しい気持ちになっている。

 機会が巡ってきたらまた会ってみたい。そんな心境だった。



 城壁の中に戻り、プレイヤーハウスでクエストの報告を済ませた僕は、所持金を確認した。

 -5080C。財布のカードにはそう書かれてあった。


「えっ!? お金マイナスいったりするのこのゲームっ!?」


 クエスト失敗によるペナルティがあるようで、報酬が高ければその分マイナスなようだ。

 外に出るクエストは軒並み高い。失敗した時のリスクも高い。

 合計2時間くらいの稼ぎと、楽しい気持ちが同時に吹き飛んだ。

 借金生活の始まりである。

 ・・・・・・まあ、直ぐに稼げる金額だと思うけど。

 お腹は・・・減っていないけど何故か飯を食べたい感じだよ。

 とりあえず、『めし処もちや』に行ってみようか・・・タダで食べられるし・・・

 道場の入会金が遠のいたことに、ガックシと気ながら、もちやへと歩き出した。


ここまでお読みいただき有り難う御座います。



書こうと思っていた内容があったのに、ちょっと違う事を書こうとしたら完全に脱線してゴールイン。

という感じにできた回でした。


良くあることだと思います。

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