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プロローグ

「とーちゃん、なんか面白いゲームない?」

「面白いゲームって・・・この前色々とゲーム貸しただろ」

「だいたいクリアしたよ」

「いや早いだろ。二十本くらい渡したはずだ。まだ一週間たってないだろ」

「一日数本クリアしてたら終わってた」

「RPG系は一日じゃ無理だろ」

「RPGは苦手で、途中でやめちゃうんだよね。けど何本かはクリアしたよ」

「一日でか」

「日曜日にやるようにすればわりといける。貸してもらったのレトロゲームだったし、短いやつもあったから、四本はクリアしたよ」

「RTAやってるみたいだなそれは」

「それでなんかない?」


 尋ねた僕に、とーちゃんは腕組みをしてうーんと唸った。


「なんかないと言われてもな。俺のコレクションのレトロゲームはもう底を尽きたぞ」

「レトロじゃなくてもいいよ。面白いのがいい」

「そりゃゲーマーなら誰だって面白いのやりたいわな。よし、ちょっと待ってろ」


 とーちゃんは居間から出ていくとすぐ戻ってきた。

 VRゲーム用の機材を持って。


「VRゲーム? それ、なんか前に使ったやつと違うような」

「そうだ。最新のダイブ系VRゲーム専用ヘッドギアだ。これを貸そう」


 片手でヘッドギアを持ち上げてにやりと笑って見せた。


「最新のって・・・かーちゃんになんか言われるんじゃ」

「心配してくれるのか。嬉しいものだな、俺はいい息子を持った」

「恥ずかしいセリフすぎる。勘弁して」

「胃袋も財布の中身もかーちゃんに握られたが、優しい息子がいればとーちゃん頑張れる」

「・・・息子として色々と察してしまったんだけど。すでにバレてた?」

「般若の顔で怒られた。お小遣い一日500円」

「小中学生並みだね」

「若返った気分になるぞ。良いものだ」

「ああはい・・・愛ってすごいね」

「そうだろうそうだろう」


 うんうんと頷きながら笑うとーちゃんの顔は、微塵も後悔などしていないようだった。

 とーちゃんはハマっているのだろう。かーちゃんを愛することに。


「・・・どうやったらそんなにハマれるんだろう」


 小さなつぶやきを漏らす。

 

「何か言ったか」


 どうやら聞こえなかったようだ。


「なんも」

「そうか」

「・・・で」

「で?」

「面白いゲーム」

「ああ、そうだったな。まずは運ぶか」


 言うなり機材を僕の部屋までとーちゃんは運んだ。

 そこから二人でVR機材のセッティングをする。


「枕の横にヘッドギア置いておくぞ」

「ありがとうとーちゃん。んで面白いゲームは?」

「面白いかどうか分らんが良いと聞いているのがある」

「どんな」

「ダイブ系ММОRPG」


 にやりと笑うとーちゃんの言葉に、ジト目になって見返す。


「RPGは苦手だってさっき言った」

「まあ聞け。そのゲームの良い所を教えよう」

「・・・・・・」

「そのゲームはゲーマーの友達が遊んでるゲームなんだが、大手の作ったダイブ系ゲームに勝るとも劣らぬほどのグラと操作性なんだそうな。あとNPCの行動ルーチンがすごいらしい」

「とーちゃんはやってないの」

「やってない。やる前にそのゲーム用に買ったVR機材が見つかって怒られた訳だ」

「なるほど」

「反省したと言っておいて、そのゲームをやってる所がかーちゃんにバレてみろ。ヘッドセットごと俺の顔面は瓦割の瓦のように粉々に砕け散るだろう」

「空手家だもんね、かーちゃん」

「まあ、俺の愛は砕け──」

「脱線。脱線してるよとーちゃん」

「あっ、わるいわるい・・・ともかく、友人が俺に勧めてくるくらいにはハマってるゲームらしい」

「ハマる・・・ねぇ・・・」

「興味出てきたか?」

「それだけの情報で興味なんてわかないよ。ストーリーとかは?」

「特にないらしい」

「へ?」

「特にないと言う訳でもないそうなんだが、それ以上のことを知りたいのならやって確かめてみろ、と言われた」

「んー・・・あんましやる気にならないなぁ」

「そして何よりもとーちゃんがお前にお勧めする最大の理由が・・・」

「理由が?」

「・・・・・・只だ!」

「・・・タダ?」

「そうだ!」

「え・・・VR機材以外に何も買わなくていいってこと?」

「そうだ!」

「大手でも確か課金制がくそたっかいソフト買わされるダイブ系ММОが?」

「課金だと月三千円から一万円。ソフトは三万から八万ってところだな」

「それがタダ?」

「そうだ」

「くそ怪しくない?採算どこで取ってるのそれ」

「そんなものとーちゃんわからんよ」

「むぅ・・・」

「お前、何かやりたいゲームがある訳じゃないんだろ。だったらやってみればいいじゃないか」

「・・・タダだし?」

「そうだ。お前自身の小遣いも、俺自身の小遣いも痛まない無料ゲームだ。実に素晴らしい」

「まあ、確かに」


 何かしらやりたいゲームがある訳でもないのに、小遣い使ってゲーム買うのはまあ無しだ。

 小中学生並みになったとーちゃんにタカってゲームを買って貰うのも忍びない。

 それなら無料ゲームで遊ぶのもいいんじゃないかという話。

 お金を使わずってことなら、選択肢ないようなもんだ。


「まあ・・・・・・やってみるよ」


 タダだしね。


「そうか、楽しみにしてるぞ」

「うん・・・・・・え、楽しみって?」

「動画サイトに配信しながらやってくれ。後で見たい」


 そんなことを言われ思わず大声になってしまう。


「いやだよっ! やった事ないし恥ずかしいし喋れないよ!」

「準備は全て済ませてある。チャンネルもあるぞ」


 そう言って、スマホで動画サイトのチャンネルを見せられた。


「『とーちゃんチャンネル』って・・・適当すぎでしょ」

「分かり易くコミカルで親しみを持てる名前だろ」

「とーちゃんと同じセンスの人が、同じ名前でやってそう」

「いいじゃないかそれならそれで。だが、人気が出るのは俺の方だ!」

「蛇口全開にしてるみたいな自信だよねホント。周りの人が溺れちゃうよ」


 長いため息を吐いた僕の肩をポンポンとーちゃんは叩いた。


「さっき話した通り、しばらく俺はそのゲームで遊ぶことが出来ない訳だ。だが、ゲームが出来ないからと言ってそのゲームの動画を見てはいけないとは言われていない」

「他の人が配信している動画見ればいいじゃん」

「チャンネルがあるのに配信しないでプレイするなんて勿体ないだろ」

「知らないよ。とーちゃんのチャンネルでしょそれ」

「別に人気が出るような配信をしてくれと言っている訳じゃない。俺が暇な時にナガラ見したいから配信してくれと言ってるんだ」

「個人的理由すぎるでしょそれ」

「まあそうだ。な、良いだろ。機材貸すんだし取引ってことで、頼むよ息子」

「取引ねぇ・・・」

「な、な、な?」

「・・・・・・まあ良いけど」


 この後、ものすごく粘ってきそうなとーちゃんを相手するのが疲れてきた僕は渋々ながら了承した。


「ふふん、楽しみにしてるぞ。やるゲームはすでにダウンロード完了してある。ほかのソフトは入れてないからすぐ分かるはずだ」

「りょーかい」


 その後、とーちゃんは配信のやり方を僕に教え、部屋を出て行った。


初投稿です。

明けましておめでとう御座います。

続きは二~三日中に上げれると思います。

お読みいただき有り難う御座いました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とうちゃんまじ感謝、 たしかに高そうなVRゲームを子供の小遣いで買うのは無理があるように思ってたんだよなア、納得できてよかった。 [気になる点] 大手に対してプレイ無料で食い下がってる感じ…
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