2-12 誰もが一度は万引きして店主にビームをぶっ放されたでしょう
「へんたい、そっち頼むよ」
「頑張ってるな、へんたい。外した座席はバリケードにでもするか」
俺は今ゴンとともちゃん先生とともにバスを改造している真っ最中だ。まずは内装をいじれるように座席をちまちまと取り外す作業をしている。
「ゴンちゃん、ともちゃん、へんたいちゃん、差し入れっす」
「おー、どうも」
「私はあとでいい。作業がひと段落してからな」
店内から現れたキャシーが差し入れたミニ缶のエナジードリンクをゴンはすぐにプシュ、と開けてグビグビと飲み干した。
「なあ、いい加減へんたいって呼ぶのは止めてくれ」
風呂の一件からずっとだ。ずっと俺はへんたいと呼ばれているんだ。俺に落ち度があるとはいえいい加減うんざりしてくる。
「もう無理っす。名前の表示欄もへんたいっす。残念ながらもう変わりません」
笑いながらキャシーはそう言って俺に朝専用の甘い缶コーヒーを渡してくれた。
「昔やってたゲームで店の物を万引きして店主にビームでぶっ殺されて、名前が変更されてヒロインにすらどろぼーって呼ばれるのを思い出したよ。あいつもこんな気持ちだったんだな」
「でもグラコンプするなら万引きしないとダメなんすよね。ちなみにリメイク版でも出来るそうですよ」
まあしばらくは仕方がない。許してもらえただけありがたいし当面は我慢しよう。
俺は缶を開けてコーヒーを味わおうとする。だが直後、一番の難敵が店から現れる。
「……ふん」
マルクスは俺の顔を認識するや否やそっぽを向く。ここ数日針のむしろというか居心地が悪くて仕方がなかった。
「仕方ないっすねぇ。ここはなんでもいいので仕事をして好感度を回復しましょう。ちくわカレーでも見つければ喜ぶかもしれませんよ」
「なにッ!?」
マルクスは愛するその単語に反応する。本当にちくわに目がないらしい。
「そんなもんあるのか?」
一般的にちくわはカレーの具材にはなりえない。ほかの地域では冷蔵庫の端っこで賞味期限切れ寸前なのを見つけてとりあえず消費するためにカレーにぶっ込む事はあるかもしれないが、鳥取県民はちくわが好きなので純粋に食べたいがためにカレーに入れる……奴もいる。
「はい、地元のアニメとコラボしてコンビニで期間限定で売ってたはずっす。今もあるかは知りませんが一生懸命探してマルちゃんにプレゼントすればいいんじゃないでしょうか。ね、それで許してくれますよね?」
「わ、我はそんな単純では……ないぞッ!」
マルクスは言葉とは裏腹にかなり揺さぶられているようだ。というか裸を見られた恥辱よりもちくわへの愛のほうが上回るとかどんだけちくわ好きなんだよ。随分と安い裸だな。
「ちくわカレー、か。ふむ……」
だがいい加減この状況もなんとかせねばなるまい。
キャシーの言うとおり物資の調達も兼ねてコンビニに寄ってみるか。名誉を挽回するため失態の埋め合わせをしておこう。




