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終末だらずチャンネル~バッドエンドを迎えたゾンビに溢れた世界で、馬鹿な俺たち鳥取県民は動画を配信する。それでは皆さん、よい終末を~【完結】  作者: 高山路麒
第二部・後半

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11-37 権蔵の助けと己の小ささを知った露出狂

「紬ッ!」

「むッ!」


 だがそこに救世主が現れた。彼は全裸男に拳を打ち込むとその巨体を遥か後方へと吹き飛ばしたのだ!


「二人とも無事か?」

「え、あ、はい」

「ど、ども、お父さん」


 俺とゴンは力を振り絞ってどうにか立ち上がる。しかし全裸男もまたゆっくりとこちらに歩いて戻ってきたのだ。権蔵さんは険しい顔をして彼を眺める。


「久しぶりですね、三河みかわ元本部長」

「お前もな、権田原。まさかこのような場所で再会しようとは。だがお前なら生きていると思っていたぞ」

「えーと、知り合いですか?」


 聞かなくてもわかるが俺は念のために確認する。というか本音は聞きたくもないけど。


「ああ、彼は元愛知県警本部長の三河だ。駅前で全裸になり懲戒免職になって、そのあとどうしていたかは知らないが……まだ生きていたとはな。しかもまた全裸になって」

「それのなにが悪い!」


 で、またしても全裸男、いや三河元本部長は大声を上げる。


「人は文明を手にした事で服という拘束具をつけられた。それは自然の摂理に反している。神がアダムとイブを創造した時には服など着ていなかったではないか! 全裸になる事は尊い行為である! 私はある時天啓を得てそれに気が付いたのだ!」


 ……うわあ。うわあ。うわああああ。


「その神は一見軟派な不良だったが彼は私に噛みついたあと耳元でそう囁いてくれたのだ! 気が付くと私は駅前で全裸になって踊り、警察に捕まりすべてを失った。だが私は全裸になった事を何一つ後悔していない! 人は生まれた時は何も持たず、死ぬ時もまた何も持たずに神の元へと旅立つ! 全裸になる事は神に近付く行為なのだ!」


 そして三河は天を仰ぎ神へと敬意を表す。気のせいかそこにニヤニヤした修二の笑顔が見えた気がした。


 常人には理解出来ない主張が終わり俺は、


「ワァオ! ここにすごい変態がいるぞォ!」


 と、心の底からそんな言葉を漏らしてしまったのだ。この信念を持った変態にはただただ脱帽するしかない。


「紬、鏡を持ってこい! 出来るだけ大きな鏡を!」

「え、う、うん!」


 ゴンは父親から指示され意味も分からずその場を離れる。俺はというとダメージを受けてはいたがまだ戦えるので構えをとった。


「権蔵さん、俺はなにをすれば」

「一緒に時間稼ぎをしてくれ。後ろから援護射撃をしてくれればいい」

「了解しました」


 俺は生弓矢に変化させ後方に下がる。直後、権蔵さんと三河はぶつかり合い激しい乱打戦が始まった!


「この変態めが! お前のせいで警察の信用が地に堕ちたんだぞ!」

「全裸になってなにが悪い! 犯罪だというのか!」

「犯罪だよ! 猿でもわかるわッ!」

「そんな世の中は間違っている! 私は全裸になる権利を主張する!」

「なるほど全裸になる権利か! そんな人のために海外では全裸になれる地区があるそうだけどな! 友達が出来るだろうから今度行ってみるといいさ!」


 なんというかいい年したオッサンがケンカしているようにしか見えない。けれどお互い百裂拳をぶっぱなしこのまま空中に飛んじゃいそうだ。


「ハァッ!」


 あ、マジで空中に飛んだ。なんかあっちいったりこっちいったりサ〇ヤ人みたいなケンカをしてるよ。


 そういや、あのゴンの親父なんだよな、権蔵さん。このオッサンもそっち側なのか。


「だから世界観ァン!」


 俺は考えるのをやめとにかく銃弾をぶっ放す。権蔵さんが巻き添えを食らう事も気にせずただひたすらに。というかこんだけ強かったら俺たちが助けなくてもサンドワームの中から自力で出れた気もするけど……。


 いや、権蔵さんのこの設定はゴンが現れてからだ。彼もまたあのバカの犠牲者だと言える。どのような未来でも望むだけで手に入るというチートな能力の娘に相応しくなるよう父親もまた大幅に調整されたのだろう。


 まあ調整ってレベルじゃないけど。カンガルーのモンスターぐらいパワーバランスがぶっ壊れてるぞ。


「お父さん、鏡持ってきたよ!」


 そこに姿見を持ったゴンが戻り、権蔵さんはこう叫んだ。


「よくやった、紬! そいつを三河に見せつけろ!」

「うんッ!」


 そして娘は連係プレーで、父の言うとおり姿見で三河を映し出すッ!


「があッ!?」


 三河は絶望の表情になり爆発して地上に落下した。俺はなにが起こったのかわからなかったが、灰色になった彼は身体を持ち起こし天へと右手を伸ばす。


「わかっていた。私は……このような見た目なのにあまりにもアレが小さいと。権蔵、お前と一緒に銭湯に入った時の絶望を思い出してしまったぞ」

「……そうか。辛い事を思い出させてしまったな」


 このオッサンたちはなにを言っているんだ?


「だから私は……お前を激しく恨んだ。そして超えたいと強く願った。だがエロ本の広告に載っていたギリシャの大きくなる薬を飲んだが無駄だった。上〇クリニックに行っても一つ上の男になる事は出来なかった」

「違う! サイズなんて関係ない! 愛さえあればいいんだ!」」


 権蔵さんが優しくそう言うとどこからともなく感動的なBGMが流れ、どこからともなく小さな天使が舞い降りる。あとは犬がいれば完璧なんだけど。


「ふっ……もっと早くにその言葉を聞きたかった。私はなんと小さい男だったのだ。今更気が付いてしまったよ。全裸は……犯罪だという事に」


 本当に今更だな。


「礼を言うぞ。今度会う時は誰に見せても恥ずかしくない全裸になれるよう、大きな男になるとしよう。来世でまた会う時までさらばだ」


 改心した三河は天使に連れられ空を飛び、天に召された……という光景が見えた気がした。そこには安らかな表情で眠る全裸のオッサンがいるだけだった。


「ねえトオル。ナニコレ」

「俺に聞くな」


 今まででトップクラスの変態との対決に、俺はどっと疲れてしまった。


 でもどうしてだろう。変態と戦うのはやっぱり楽しいな。これぞ終末の世界の醍醐味なのかもしれない。


 ううん、多分違う。誰か世界観ァンを修正してくれ……。

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