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15-51 VS 星龍 荒木流星

 ――久世透の視点から――


「シリアスどこ行った世界観ァン! ワーオ、気付けばいつもどおりな光景! さすがだな!」


 俺はホシミドリの背中で思わず笑みをこぼしてしまう。先ほどまでピンチだったのに巨大なもちもちやらガチムチやら変態砲で、戦場は違う意味で混沌としたものになってしまったのだ。


「まったくだ、きっと当主も口をあんぐりと開けて絶句しているに違いない!」

「ああ、だが残念ながらうちはこういう路線だからな! これが俺達の世界観ァンだ!」


 マルクスも笑いをこらえながら弾丸を連発する。その攻撃は変態どもに右往左往するアメノトリフネの連装砲を破壊し、少しずつだが突破口が開きかけていた。


「というかお父さんもなに変態と一緒に飛んでるのさ!」

「ピィィ、助かるけどなんかちょっとこういう勝ち方はなんか嫌だな」


 ゴンとピーコの表情にも笑顔が戻りお気楽ムードが漂いかける。うん、ギャグに傾いてるからこれなら勝てる! ええぞ、ええぞ!


 しかしそう思ったの束の間。当主たちはどうにかシリアス路線に戻そうと必死に抵抗を続けていた。アメノトリフネの甲板で星のように強い光が瞬き、そこから龍が出現したのだ!


「すごくキモイ! なんだこの変態はー! 変態は戦場に来るなー!」

「のおっす!?」


 空間が振動しキャシーは思わずホシミドリの背中で這いつくばった。その龍の子供っぽい声はルミナリエスの流星と全く同じだったことからきっとあれは流星が変身したものなのだろう。


 その偉大な姿は普段のお子ちゃまな見た目とは似ても似つかない、まるで皇帝と大国を守護する応龍の如くとてつもない圧力を放っている。彼女はその細長い身体をうねらせアメノトリフネの周囲を飛び回り、俺達や変態目掛けて口からエネルギー弾を連発した。


「のーん! 龍神様は変態に大層お怒りみたいっす!」

「うむむ、もう少しで近寄れるところだったんじゃが」


 悔しがるホシミドリは回避に専念し俺達はその隙に流星に銃弾を浴びせる。だがその鋼のような鱗にはかすり傷程度のダメージしか与えられなかった。


「お前らも帰れ! リウは変態の相手で忙しいんだ!」

「ピー!?」


 流星はかんしゃくを起こした子供のように激しく暴れる。さらに空からは隕石が降り注ぎ、容赦なく俺達に襲い掛かったのでもう攻撃するどころではなくなってしまう。


 落下した隕石により鳥取の市街地は破壊しつくされる。現実の隕石とまではいかないがとてつもない質量の巨岩により建物は木っ端みじんになった。


 だが俺はまだ余裕の笑みを崩さない。なぜならまだ頼もしい味方は存在するのだから!


『変態以外もちゃんといるぞ!』


 どこからともなくダンディな声が聞こえてくる。そしてやってきたのは正しい意味の飛行する編隊だ。


 静間さん率いる連合軍の戦闘機部隊は隕石を華麗にかわし、ミサイルや機銃で星龍を攻撃する。流石の彼女もそれなりにダメージは受けてしまったらしい。


「ダンディさん!」

『だからダンディは止めろ!』


 ここからではコックピット内部の声が聞こえないが彼はそんな事を言った気がした。だが俺は助けに来てくれた事よりも彼がまた空を飛べるようになった事が嬉しかったんだ。


 彼もまたあの事件の犠牲者である。悲劇を乗り越えた彼はもう一度翼が生え、恋焦がれた空に戻る事が出来たのだから。


『ワイルドおじさんもいるぜ!』


 そんな彼と肩を並べるのはロシアの戦闘機だ。ミリタリー関連はよく知らないがあれはSu-57だろうか。静間さんの曲芸の様な飛行と見事にタメを張り、攻撃を華麗に回避しながら彼と一緒に流星へミサイルを撃ちこんでいった。


『まさかまたお前と一緒に空を飛ぶとはな。昔はよくじゃれ合ったよなあ!』

『あれはじゃれ合いじゃなくて、世間一般では領空侵犯と言うけどな!』


 っていうか多分あの中にいるのはロシアさんだよな? やっぱり声は聞こえないけどなんかあまり聞いてはいけない会話をしていそうな気がするし、取りあえずスルーしておこう。


「ほっほっほ、仲良きことは良きかな良きかな!」


 そしてさらにもう一体龍が現れ流星の身体に噛みつく。無論、阿津姫さんだ。


 彼女は流星と比べると一回りサイズは小ぶりだが、曲がりなりにも龍神でありその力は計り知れない。俺はその強さを瀬戸大橋の戦いで身をもって知っていた。お願いしますよ、阿津姫さん!


「痛ッ! 離れろ、離れろ、って!?」


 鋭い牙が身体に食い込み流星はひどく痛そうに暴れ必死で抵抗していた。だが、彼女はさらなる増援に気が付いてしまう。


「アゴファイアーッ!」

「ギャース!?」


 突如として襲来した香川編のアゴの化け物はその鋭い顎で流星の身体を貫く。すぐにマップを確認すると廃墟のビルの屋上に彼を使役する父さんがいる事に気が付いた。


「父さん……!」

「ここは僕らに任せて早く先に進むんだ、トオル!」


 彼が生きていてくれただけでも嬉しいのに、こうして身の危険を顧みず俺達を助けに来てくれて思わず泣きそうになってしまう。


『これで終わりだ!』


 そして最後に飛翔した深紅の機神兵が突撃し、流星に強力な斬撃を浴びせて致命傷を与える。これで勝負は決まったようだ!


「うう……ごめんな、もう腹ペコで動けない」


 流星は光の粒子となり粉々に崩れ去って消滅した。残すはアメノトリフネだけである!


「頃合いか、一気に突っ込むぞ、しっかりつかまれ!」

「ああ!」

「ピィ!」

「はいっす!」

「うむ!」

「おうよ!」


 ホシミドリは最後の力を振り絞りアメノトリフネに突撃する。途中、レーザーの雨が激しく降り注ぐが彼女はそれをひらり、ひらりと、まるでレーザーのほうが避けているかのように回避したのだ。

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