14-27 終末の工場見学
施設内部に入ってまず俺達は駐車場へと向かう。駐車場だけでもまるで某ネズミの遊園地のように広大な敷地面積を誇りそのほとんどが輸送用のドローンのためのものだった。
輸送用のドローンのサイズは軍用の大型輸送機ほどで、マップで確認すると大量の物資が積まれている。運転手はおらず機械が自動的に運転しているようだ。
車を停めるとすれ違うように大量のドローンが先ほどの扉から出ていった。きっとあれは全国各地のもふもふ君の店へと運ばれていくのだろう。
「こうじょうけんがくごあんなーい」
「あ、ああ」
みんなは呆気にとられつつももふもふ君に案内されて工場内部へと向かう。そして再び大きな扉をくぐり目の前に広がる光景に驚愕してしまった。
広大な工場の中央には吹き抜けになった空間があり、ドーナツ状のフロアが幾重にも広がっている。
バリアの様な半透明な壁がある巨大なエレベーターは中央の空洞を上下して、物資が入っているであろうコンテナが大量に積まれておりもふもふ君がえっほ、えっほと運んでいた。
俺はマップでこの工場の全容を確かめようとしてやめた。あまりにも情報が膨大過ぎて頭痛がしそうになったからだ。
「まさかここまでなんて。荒木の一族ってこんなものを簡単に作れるの?」
「うちの一族でもこれは特殊な部類に入ると思いますよ」
今まで見てきた中で最大規模なオーバーテクノロジーに、ピーコはもちろん同じ一族のキャシーも引いていたらしい。
「なるほど、これほどの規模なら今日本国内で生存している人すべての食糧を賄う事も出来ると思うデス。よく見るとデスパペットもいますね」
「ああ、本当だ」
「デスパペット?」
ナビ子の口から聞き馴染みのない単語を聞いたので俺は思わず聞き返したが、おそらくもふもふ君と労働している仮面をつけてローブを着た生命体の事だろう。
連中からは人間の反応もゾンビの反応もない。その衣服の内側には肉体すら存在しておらず得体のしれないエネルギーの塊だけがあった。なので生命体という表現も適切でないかもしれない。
見た目の雰囲気は一言で言えば当主のデザインを簡素にした感じだ。もしかすればデスパペットは当主の模造品なのかもしれないな。
「デスパペットは荒木の一族が作った兵器の一種だよ。人工的に作った幽霊と思ってくれればいい。戦いがメインの使用目的だがこうして肉体労働も出来る。昔、戦争に投入され大活躍したそうだ」
「へー」
ともちゃんはデスパペットについて説明するが俺はそう相槌を打つ事しか出来なかった。
人工的に作った幽霊ね。幽霊である以上殺す事は容易ではないから最強の兵士ではあろう。もうその超科学には笑うしかない。
「どうですか、荒木の一族自慢の食糧プラントは」
「なかなかのものでしょ?」
工場を眺めていると北海道に来てから久しく見ていなかった人間の少女たちに声をかけられる。あ、もふもふ君の中の人疑惑がある奴はノーカンね。
「ライコか。どうしてここに?」
「どもー。僕は仕事でここに来たのさ。この工場でうちの店の食糧を作っているんだよ。すごいだろう?」
そのうちの一人はもふもふ君の店の社長であるライコだった。彼女は以前見たような気だるげな笑みを見せた。
意外な人物との再会に驚いてしまうが、今はもう一人の少女だろう。
「あなたは? いえ、一族の関係者なのはわかるんすけど」
「はい、私は荒木ラプラス。ルミナリエス部隊所属です。私はここで工場の管理などを任されています。といってもほとんどは毎日生産された食糧を食べるだけの仕事ですけどね」
その少女ははっきりとルミナリエスと明言した。見た目は高校生くらいで、ゆるふわウェーブのほんわかした見た目からは人造の現人神だなんてまったく想像出来ない。
けれどあのルミナリエスなんだよな。敵になるかもしれないし警戒しておこう。




