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14-26 洞爺湖の食糧プラント

 翌日、俺達は旅館の前で集合していた。うちのバス以外にもすぐそばにもふもふ君が運転するトラックもある。


 次なる目的地は荒木の一族の食糧プラントだ。食糧もそうだがなにか使えそうな物資や情報が見つかるはずだろう。そこでしっかりと大雪山攻略の準備などをしておきたい。


「それではどうかお気をつけていってらっしゃいませ!」

「らって、ませぇ」


 ハルニレは俺たちを見送り深々とお辞儀をする。従業員のヤマワロも見よう見まねで頭を下げて。


「ああ。調査を終えたらまた風呂に入らせてもらうよ」

「はい! いつでも入れるように準備しておきますね!」


 俺がそう告げるとハルニレは笑みを返す。本当に純粋無垢でかわいい子やなあ。そう思ったのは俺以外にもいたようでピーコは滾る感情を抑えきれず怪しい目になった。


「ああもう天使だよハルニレちゃん、ハァハァ。もふもふしていい?」

「え、は、はい、どうぞ?」


 ハルニレはそのただならぬ様子に恐怖していたが、襲い掛かろうとするピーコの頭部に俺はチョップする。


「あだ」

「やめんか」


 俺も少なからずそんな事を考えていたので人の事は言えないけども。でも男の俺がやったらガチで事案になるからなあ。


「もういくー?」

「ああ、すまない。私たちも早く行こうか」


 トラックの運転席に座るもふもふ君にともちゃんは謝罪する。ずっと俺たちの準備を待っていてくれたし、いくら彼がのんびり屋でもこれ以上待たせるのは悪いだろう。


 そしてトラックに先導され俺達は食糧プラントへと向かう。もふもふ君のトラックもまた空中を浮遊しており俺達のバスと似たような仕掛けが施されていた。


 SFモノで車は浮遊するものというのは常識だけどこれがあれば悪路なんて気にしなくていいだろう。きっと荒木の一族はそんな車を大量生産出来るんだろうな。


 大雪や事故車による通行止めを避けるために回り道もしながら、二時間ほど車を走らせたところで俺達はある場所にたどり着いた。


「ここってもしかして洞爺湖っすか?」

「そのようデス」


 案内された先にあったのは観光大国の北海道でも上位にランクインする景勝地、洞爺湖だ。鏡のように美しい湖の中央には小山の様な島もあり、静寂と澄んだ空気に包まれた美しい光景が広がっていた。


 こんなに寒いのに凍っていないが、そういえばここは凍らないタイプの湖だったな。


「もしかして観光したくて寄り道をしたのかな?」

「それはそれでいいけどさ」


 ゴンと銀二は取りあえずバスから降りて湖を眺める。確かに見ていて感動を覚える風景ではある。観光地でありながら人が全くいない虚無感がさらにその美しさを引き立てていたけれど、それは本来の目的ではない。


 しかしトラックは動く事はない。俺はもふもふ君に視線を向けると彼はリモコンのようなものを操作していた。


「ちょっとまっててねー」

「おっと!?」


 そして――地響きがして俺達は思わずよろめいてしまう。水が激しく流れる音が聞こえ、湖を見てみるとなんと水面がゆっくりと割れていたのだ。


 神話のような芸当をもふもふ君はリモコン一つでやってのける。十数秒待ったところで地下に通じる道が完成し、その道は湖中央の島の下部に続いていて遠目で明らかに人工物の巨大な扉があるのも確認出来た。


 水の流出が完全に止まったところで頑丈な扉はゴゴゴ、と自動で開く。扉というよりもこれは隔壁のようだけど。


「本当に荒木の一族はとんでもない事をするな」

「グワァ」


 呆れたマルクスの頭の上からがんめんちゃんは地面に飛び降りその驚愕の光景を眺める。神様でもさすがに驚いたのかその目はいつもにも増してギョロリとしていた。


「ま、いつもの事だけどな。じゃあ俺たちもバスに戻るか」

「ピィ。でもこの先に食糧プラントがあるんだね」

「それじゃあいくよー」


 もふもふ君はトラックを走らせ湖に出来た道を進んでいく。そして再びバスで追いかけて重厚な扉を通過し俺達は食糧プラントの中へと入っていった。

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