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14-24 からかい上手の荒木さん

 そして俺は露天風呂へと向かった。子供のためだろうか、滑り台も設置されておりちょっとしたウォータースライダー気分が味わえる。滑らないけどさ。


「ふひー」


 そして肩まで使ってゆっくり休んで旅の疲れを癒す。このあとのダンジョン攻略に向けてしっかり英気を養わないとな。


「そういえば世界がこうなってから最初に風呂に入った時は散々な目に遭ったっけ」


 俺は星鳥編での出来事を思い出す。あの時は些細なミスが原因で浴場でばったり鉢合わせてしまい、マルクスと大喧嘩したっけ。


「そんな事もありましたねぇ。マルちゃんのぱふぱふはどうでした?」

「ああ、今でもまざまざと思いだせる。あれはとてもいいぱふぱふだったなあ」

「そうでしたかー」

「ああ」

「……………」

「……………」

「……………」

「ちょおい!?」


 隣にはいつの間にかキャシーがいて俺はたまらず絶叫してしまう。遠くで風呂に入っていたクマさんは一瞬びっくりしていたが、それ以上は特に気にせず温泉を楽しんでいた。


「お前、な、なんでここに」

「温泉に入りに来たからですよ。けどやっぱりちょっと恥ずかしいっすね」


 キャシーはてへへ、と笑みを浮かべるが俺はすぐに背を向ける。その身体を直視しないように。


「なんの真似だ」

「いや、ビックリするかなと。からかいに来ただけです」

「ビックリはしたけどなあ……お前も一応は女なんだからさ」


 俺は頬を赤らめて苦言を呈すると彼女のにゃはは、という笑い声が聞こえた。


「今でこそ人並みに羞恥心はありますが、研究所にいたころは普通に男の人に裸を見られてましたからねぇ」

「……そうか」


 その言葉で一瞬元気になりかけたものはすぐにしょんぼりしてしまう。暗い話題もたまには役に立つものだ。


「けど人並みに羞恥心があるならなんでこんな事をした。俺をあんまりからかうんじゃない、その、な、やっぱり、な」

「別の世界で私にアッハーンな事をしておいて今更何を言うんですか」

「それもそうだがね」


 俺は顔を半分お湯に沈め口からブクブクと気泡を吐き出す。この行為は普通恋する乙女がやるもだけどさ。


「それに攻略したいのならとっととやっちゃえばいいでしょう。今が絶好のタイミングですよ。周りには人もいませんから」

「あのなあ」


 なおもニマニマしながらそんな事を言うキャシーに俺はたまらずこう言った。


「今のお前はどうかしてるぞ。悩みがあるなら聞くけど」

「……やっぱりわかっちゃうんすねぇ」

「長い付き合いだからな」


 それは図星だったようで、彼女は苦笑したあと少し黙り込んでしまう。


「無性にスキンシップがしたかったんです。人間なら死ぬ前に一度くらいはそういう事を経験してみたいでしょう?」

「俺にはわからんがな。そんな投げやりになるな。今のお前とはとてもじゃないが関係を持とうとは思わない。もっと自分を大事にしろ」

「大事っすか。私たちは所詮消耗品ですけどね」


 荒木の一族の多くは短命でありキャシーもそうだ。彼女は覚悟をしていると言っていたけれどそれは結局口先だけの事なのだろう。


 彼女は今不安でいっぱいのはずだ。こんなふざけた事をしてしまう程度に。


「とりあえずのんびりしよう。お湯につかれば少しはリラックス出来るぞ」

「はいっす」


 そして俺達はその身を温泉で清める。不安も、恐れも、全てをゆっくりと浄化して。


「トオルちゃん。さっきのお返しをしてもいいですか?」

「お返し?」


 俺がなにかを言う前に彼女は自分の背中を俺の背中につける。一瞬ドキッとしてしまったが俺はそれを受け入れた。


 今はこれが精一杯だけど、いつか弱さを見せてくれた彼女を何も言わずに優しく抱きしめる事が出来るといいな。

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