14-20 登夢別市観光大使(仮)爆誕
「さて、時間が空きましたがどうします? 観光でもしますか?」
キャシーは新たな目的を提示する。危険性もないし観光をして時間を潰すのもいいだろう。
「ならば焼き鳥がある店を探すのじゃ!」
「このあたりはピリ辛な焼きそばも名物みたいデス!」
もちろんがんめんちゃんとナビ子が真っ先にそんな主張をしてしまったので、みんなは思わず苦笑をしてしまった。
「あ、このへんの観光地はあたしは大体知ってるよ。なんてったってDVDで予習済みだし、なによりあのトオルが観光大使をしているから人並み以上に詳しくなったんだ」
「ふむ。ならリーダーはゴンに任せるとするか」
俺がそう告げると彼女はどこからか観光大使(仮)のタスキを取り出し、ニッと笑ってこう言った。
「了解! それじゃああたしは今から登夢別市観光大使(仮)だよ! 登夢別市観光大使(仮)の言う事は絶対で最後に感想文を書いてもらうからね!」
「はいっす!」
「ふふ、楽しそうだね、ゴン」
うん、これで当面の目的は決まったな。俺達はその場から離れようとしたが、
「あ、待ってください!」
と、ハルニレが俺達を呼び止める。
「宿泊場所はお決まりですか? この寒さで野宿は流石に危険ですが……」
「ちょうどいい場所を探して車中泊にする予定ですけど」
「それでしたら是非当旅館に滞在してください! どうか私たちにみなさんをおもてなしさせていただけませんか! もちろんお代はいただかないので!」
ハルニレは目を輝かせてそんなありがたい提案をする。こちらとしては断る理由もないな。
「そ、それは! 美味しいごはんも食べられるんデスか!?」
「はい、もちろんです! 腕を振るって最高の料理をご用意いたします!」
「うむ! ならばわらわたちは賛成に回るぞ!」
「無論デス!」
俺がなにかを言う前に食い意地の張ったナビ子とがんめんちゃんは賛成に回る。が、マルクスはほんのり疑念を抱いていた。
「だがどうしてそんな太っ腹な事をするのだ? それをしてお前たちになんのメリットが?」
「私たちは人間さんをおもてなししたくてうずうずしていたんです! 理由はそれだけです!」
「おでも、おもでなしすたい」
「おでも、すごくたのすみ」
ハルニレたちはそんなよくわからない理由でそんな提案をしたようだ。ゾンビの考える事はわからないがとても気合が入っているし、そのありがたい申し出は無条件で喜んでいいものだ。
「そうだな、今日は温泉でゆっくりするか」
「わーい!」
「やったあ!」
「もっちー!」
予期せず立派な旅館に泊まる事になりみんなは大喜びだ。さあ、まずは観光に行くとしようか。たくさん動いて、疲労を溜めて最高の状態でお風呂に入りたいからな。
「それじゃあどういうふうに行動する? 時間もあるから今日中に全部は回れないよ。あたしは登夢別市観光大使(仮)だから大体の場所を知っているけどさ」
「各々が行きたいところに行けばいいんじゃないか、グループ分けをして」
ともちゃんはそう提案をする。ならここは真っ先に意見を言わないとな。
「じゃあ俺はキャシーと組むよ」
「え、自分とですか? いいっすけど」
俺に指名されたその理由がわからず彼女は少し不思議そうな顔をしたが、そこでピーコが不敵な笑みをしてこう言った。
「ああ、そういえばキャシーちゃんがハーレムの最後だね。ここは応援すればいいのかな、第一夫人として」
「しれっとマウントを忘れないあたり、さすがだねピーちゃん」
その笑顔は少しだけ得体のしれない圧力を感じさせるものでゴンは思わず怯んでしまう。ピーコはそっち系じゃないんだけどなあ。
「は、ははは。うーむ、とうとう自分の番っすかあ」
キャシーはただ苦笑する事しか出来ずしぶしぶ俺の提案を承諾してくれる。やはりハーレムには乗り気ではないようだ。
「よーし、早速俺はお前を攻略するぞ」
「どうぞー。最後の壁として全力で抵抗しますけどね」
そんなわけで俺は最後のヒロインを攻略する事になる。終末だらずチャンネルの主である、最も頼もしい親友を。




