表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《空気使い》って?  作者: 善文
9/134

洞窟探検1日目

(フィルドン)の患者を全て治療した翌日


北国ゲンク首都フィルドン〈治療院〉


パーティー(PT)

ヤマーダ、ネーコ(人化)、リン、サリア、

ルル、クロード(人化)、ターニャ(人化)、

イズム


「マーシャ、風邪っぽい患者さんがいるみたいだけど、毒性の患者さんは無事退院してる?」(ヤマーダ)

 念のため、治療院内を見渡したが、毒の症状を持った患者は見当たらない。


  どうやら病気の原因は、

  イズムで決まりっぽいな


  患者さんの顔に出ていた湿疹も

  綺麗に消えてるしね


「重症患者も無事に回復しました。色々とありがとうございました、救世主様」(マーシャ)

 マーシャと治療院の関係者や患者さん達は、ネーコとリンに向かって感謝の祈りを捧げている。


 一斉に祈りを捧げている光景に、

「どこぞの宗教みたいやな」(サリア)

 思ったことをポロッと口にする。


  拝んでる姿を見てオレもそう思ったよ


「あまり余計なこと言うなよ、サリア」(ヤマーダ)

 一応、サリアの意見に釘をさしておく。


  そんなことをネーコが聞いたら、

  また期限が悪くなるよ



 サラッと話題を変えて、

「なぁマーシャ、昨日、ウチのメンバーと相談したんだけどさ」(ヤマーダ)

「えぇ」(マーシャ)


「これから俺達が行く《竜の洞窟》の調査なんだけど、できればギルドからの依頼ってことにしてくれないか?」

「まぁ、できなくはありませんが、どうしてしょうか?」


 ここ最近、ヤマーダはギルドからの依頼を全く受けていないことに気がついた。

 その為、丁度(ちょうど)いい依頼を探していたのだ。


 冒険者PTにも関わらず…


「いやぁ、俺達って一応冒険者なのかな? だけど、最近ギルドの依頼を受けてなくてさぁ」(ヤマーダ)

「あぁ、なるほど」

 どうやら、マーシャはヤマーダの意図に感づいた。


「できれば、ギルドから《洞窟調査》みたいな依頼を出してもらえないかと思ってさ」

「はい、構いませんよ」


「まぁ、魔物を退治すれば勝手に魔核が手に入るし、依頼料は別にいらないからさぁ」


 そこへリンが、

「“…ヤマーダ、わたし達は冒険者。依頼料を(もら)わないのは、おかしい”」


「“せや、かえって怪しまれるで”」

 サリアもリンの発言を追随する。


  冒険者って、そういうもんか


 そんなリン達二人を知ってか知らずか、

「うーん、そう言うことですか…」

 マーシャは特に反対することはなかったが、少し考えているようだ。


「…では、私と一緒にギルドへ行きましょうか」(マーシャ)

「そう? 手間かけちゃってゴメンな」(ヤマーダ)


「いえいえ。ですが、依頼料はちゃんとお支払いしますので」

 マーシャがギルドまで先導してくれる。


 疫病騒ぎも治まり、マーシャの顔つきもすっかり穏やかになっている。


「なぁ、ヤマーダはん。さっきの話、結局、ヤマーダはんがお金をせびっとるように聞こえたんやけど」(サリア)

「えっ、マジで! そう聞こえちゃった?」(ヤマーダ)


「なんや? 違ったんか?」

「そんなつもりは、更々ないよ。ハァ…やっぱり、この手の交渉はサリアに任せればよかった」

 最後の方は明らかに愚痴だ。


 ヤマーダとしては、単純にギルドの依頼にしたいだけ。


 マーシャと上手(じょうず)な交渉できず、少しへこんでしまう。



----------

北国ゲンク首都フィルドン〈ギルド〉


 その後、何事(なにごと)もなくギルドに到着するヤマーダPT。


 北国ゲンクには、このフィルドンにしかギルドがない。


 大抵の事は、自分で何とかするエルフ。

 元々、他人を頼ることが少ない為だ。


フィルドンのギルド

(つく)りは木造。

大木(たいぼく)を取り囲むように建っており、遠くから見ると建物を大木が貫いているようだ。


ガヤガヤガヤ…

 中に入ると、冒険者や住民達の喧騒でとてもうるさい。


 並んでいるであろう人波をかき分け、マーシャが割り込みまくっている。


「おい! 割り込むなよ!」(人族の冒険者A)

「ふざけんなよ!」(人族の冒険者B)


ガヤガヤ

 マーシャの周りの冒険者が騒ぎだした。


「うるさい! ウジ虫ども!」

 マーシャの一喝がギルド内に響いた。


「私はこの街の代表マーシャ! キサマらウジ虫は私の顔も知らんのか!」(マーシャ)


  マーシャって、怒ると(こえ)ーっ!


  それに、ウジ虫って…


「………」

 ギルド内は一斉に静まり返った。


「ささっ、どうぞ救世主様」


 冒険者でごった返したギルドに、マーシャから受付カウンターまでの見事な道が出来る。


  おいおい、街の代表が

  あからさまに割り込みしていいの?


 マーシャは、さながらパレードでもするように、受付エルフ嬢までの道のりを闊歩していく。


  なんか、すみませんねぇ


 その後を、堂々(どおどお)と歩くネーコ達とおどおどついていくヤマーダ。



「街の代表としてギルドに依頼を発注したい」(マーシャ)

「では、こちらへ」(受付嬢)


「では、救世主様。少しお待ちください」(マーシャ)

「きゅ、救世主様!」(受付嬢)

 人伝(ひとづて)に聞いたのだろう、受付嬢はヤマーダ達を二度見して驚いている。


「えぇ、分かったわ」(ネーコ)


 二人は奥にある別室へ。


「“おいっ、救世主だってよ”」(冒険者C)

「“オレもそう聞こえたぞ”」(冒険者D)


 ヒソヒソと話しながら、冒険者達はヤマーダPTを観察している。


  うわー、注目されてるよー



 しばらくして戻ってきたマーシャ達はヤマーダを手招きする。


「こちらが、救世主様への依頼になります」(マーシャ)


「あぁ、ありがとう。でも、その救世主ってのは…」

 ヤマーダが依頼書を受け取ろうとした時、

「ねぇその依頼、私達も受けたいのだけれど」

 先日、出会ったメリルが横から依頼書を掠め取った。


 そんなメリルの態度に、ネーコの顔色が一気に曇る。


  あ~、なんか揉めそうな雰囲気


「ネーコ、どうする? 俺達は依頼さえ受けられれば何でもいいんだし、ここは態々(わざわざ)やりたいって言っているメリル達にお任せして…」

 早々(はやばや)と、ヤマーダは依頼を引き渡そうとしてしまう。


 そんなヤマーダの態度も、ネーコは気にくわない。


  あ~あ、ヤバいぞ

  ネーコの機嫌が超悪くなってきた!


「アンタ、どういうつもりよ?」

 直ぐ様、ネーコはメリルにくってかかる。


「アタシ達の依頼を横からかっさらうなんて、ふざけないで!」

 穏便に済ませようとしたヤマーダを余所(よそ)に、ネーコの文句は止まらない。


「フフフ、チビッ子が何を言っているのかしら」

 挑発するようなメリルの態度。


「わたし達はBランクの冒険者よ。この街では最高ランクね。もしかしてあなた達、《疾風の剣》ってPT名を聞いたことないのかしら?」

(メリル)


  《疾風の剣》?

  知らなーい、(まった)く!


  へぇ~…最高って、Bなんだ…


「ギルドからしてみたら、本当はあなた達なんかより、私達に依頼したいんじゃないのかしら?」

 メリルが自信満々に言い放つ。


  まぁ、

  オレ達は単純に依頼をこなしたいだけ

  正直、依頼なら何でもいいし


  別にその依頼、

  やりたいヤツがやれば、

  それでいいんじゃねぇの


「えっ! そうなの? じゃあ、(ゆず)っちゃおっかなぁ…」(ヤマーダ)


 面倒事(めんどうごと)を避けるべく、ヤマーダが依頼を(ゆず)ろうとすると、

「何言うとんのや、ウチ、Sランクやで」(サリア)


  えっ! サリアってそうなの?


「…わたしもSランク」(リン)


  えっ! そうなのリフレイン


 実は、ヤマーダ達は《嘆きの洞窟》を単独PTで攻略という偉業を成し遂げている。


 《嘆きの洞窟》は高ランクのダンジョンだ。


 そこに住まう魔物を倒しまくったリンとサリアは、あっという間にギルドランクがSランクに到達してしまったのだ。


  えー!

  なんでぇー?


  オレはまだ、

  Cランクなんですけど、ですけど


 ヤマーダは、PT内でも、魔物との戦闘をほとんどやらせてもらっていない。

 故に、ヤマーダだけギルドランクが全然上がっていないのだ。


  ギルドランク…


  これって魔物を倒した数が

  そのまま反映される


  リンとサリアは

  あんだけ《嘆きの洞窟》で、

  グリフォンなんかを倒せばさぁ


  そりゃ、ランクなんて

  腐るほど上がるだろうよ…



  そして、オレはいつも蚊帳の外



  それに

  レベル上げってやつは

  もっと辛く苦しい


  知らない知識を覚えたり

  死ぬかもしれない危険な冒険をしたり

  そんな経験がないと上がらない


  要するに、簡単には上がんないの!


  当然、ぬっくぬく状態のオレは

  (みんな)よりレベルが低い


  PT内で最低だよ、最低レベル!


  まぁ、

  ターニャ(Lv250)なんて

  化け物からしてみたら


  ギルドランクやレベルなんて

  ちっぽけな事なんだろうけどさ



 Sランク発言に、目が点になっているメリルに、

「なら、一緒に依頼を受ければいいんじゃないか? マーシャ、別に依頼を複数PTで受けても構わないんだろ?」

 ヤマーダは、()かさずフォローを入れる。


「…まぁ構いませんけど、報酬は全部で5,000Gしか出せませんよ? それを皆さんで山分けになりますが…」(マーシャ)


  えっ?

  調査報酬って、5,000G?

  命懸けなのに?


  それって日本円にすると…


  たったの五万じゃんかよ!


  新聞配達のお兄さんのバイト代より

  低いんじゃねぇのか!


  あれっ?

  ちょっと待て?


  五万を山分けって…

  10人だと…

  一人たったの五千円程度かよ!


  映画3回分しかねぇ…

  やる意味ないじゃんか!


 マーシャからすると、元々報酬額が少なく、複数で依頼を受けても旨味がないことは承知していた。


「サリア、俺達の(ふところ)事情ってどうなんだ?」(ヤマーダ)

「《嘆きの洞窟》で仰山(ぎょうさん)儲けたよって、無料(ただ)やったとしても大丈夫やで。せやけど、無料(ただ)にはせんといてな」

 流石(さすが)はサリア、閉めるところは閉める。


  あんだけ大量の魔核を納めたんだ


  リンとサリアの懐は

  かなり潤っているはず


  まぁ、

  オレはゴブリンばっかだったけどさ


「ヤマーダ、お金なんて、アタイの料理やリンの作った家具なんかを売れば、いくらでも儲けられるんでしょ!」

 ルルの感覚では、お金なんて簡単に儲けられるらしい。


「えっ? そうなの? じぁあ、俺らにとって《お金》って意味ないじゃん!」

 ヤマーダは呆気に取られている。



 この大陸(エスタニア)には、人族が流通させた《お金》がある。

 《お金》は大陸全てにおいて、共通の価値で取り扱われている。


 《お金》が必要な理由は、物々交換だけではどうしても生活が困難になるためだ。


 例えば、農業をしている人は自力で家を建てることができない。

 だから、専門家の大工を雇うのだが、支払いを作物にした場合、大量の作物を払うことになる。

 しかし、大工が食べる量はたかが知れており、そのままでは腐ってしまう。


 つまり、現物支給には限界があるのだ。



 しかし、この(ゲンク)では事情が大きく異なる。


 エルフとドワーフが主流のこの国では、自給自足が個人規模で成立しているのだ。



 また、エルフ達と人間の寿命が大きく異なるのも理由の一つだ。


 個人の持つ「技量」や「経験」、言語などの「意思疎通」、「物の加工」や「保存」など、《物の価値を知る》能力に大きな差が出てくる。


 ほとんどの人間は、何かを買う時、値札を見るだろう。

 何故か?

 それは、《物の価値》が(わか)らないからだ。

 そもそも《物の価値》が判るなら値札などいらない。


 人間が《お金》を有難がる最大の理由。

 それは、単に《物を正しく評価する能力》が無いから、つまり、大半の人間は無知なのだ。


 逆に《物の価値》を熟知しているエルフ達には、もし必要な物があるなら、相当する対価を払えば、物々交換でも事足りてしまう。

 《お金》である必要がないのだ。


 要するにエルフとは、人族では推し量れないほど経験豊富な種族ということだ。



 こればかりは、致し方のないこと。



 ただし《お金》に執着するエルフは全くいない、という訳でもないのだが…



 だから、(ゲンク)内では《お金》があまり流通していない。



 そういった事情をヤマーダは、まだよく理解していない。



「で、どうされますか?」

 マーシャは判断をヤマーダ達に託した。


「メリル次第…かな?」

 ヤマーダもマーシャに丸投げする。


 一瞬の沈黙の後、

「はっ! ヤマーダさん達は私達と感覚が全然違うのね。“…正直羨ましいわ”」

 正気に戻ったメリルが(ささや)く。


「で、メリル、一緒に依頼を受けるってことで構わない?」(ヤマーダ)


「うーん…どうしようかしら」

 流石にメリルは即答しない。


「今回は、報酬額を気にせずやってみないか? メリル」(人族の男性)


「そうそう、Sランクだよ、Sランク!」(猫族の男性)


「…分かりました。ご一緒させてもらうわ」(メリル)


「では、救世主様、《疾風の剣》の皆さん、依頼をよろしくお願いします」(マーシャ)



----------

7日後


北国ゲンク《竜の洞窟》までの道中


PT

ヤマーダ、ネーコ(人化)、リン、サリア、

ルル、クロード(人化)、ターニャ(人化)、

イズム、

《疾風の剣》メンバー


 《竜の洞窟》までの道のりは残り半分。


 今までと同じ、鬱蒼(うっそう)としたジャングルを掻き分けないと進めない。

 天気も常に雲がかかり、時たま雨が降る。


 湿気が多く足元はぬかるみ、不愉快な気候に悩まされていた。


 そんな状況とは関係なく、同行しているメリル達は、ヤマーダPTが如何(いか)に規格外な生活をしているか、思い知らされた。



 まず、メリルはネーコ、ルル、クロード、ターニャの四人が魔物や動物なことに驚いた。


 普通の魔物は、人に通じる言葉を話せない。

 メリル達も、今まで言葉を話せる魔物に出会ったことがなかった。


 しかも、《人化》している。


 (さら)には、

・料理が旨い

・《空間魔法(マイホーム)》でリラックス

・皆で魔法、スキルを共有

・何でも作れる(武器や防具、家具など)

・食糧を自給自足(加工や熟成、発酵など)

・皆強い(ヤマーダは全く戦わない)


 メリル達のような冒険者が、ヤマーダPTを判かろうとすること自体、無理というものだ。



 それを同行初日に見せつけられ、以降6日間、メリル達の常識は波に洗われる砂城のように崩れ去っていった。



 サリアは、既に《真贋の目》でメリル達に悪意がないことを見抜いていた。


 そして、サリアからの(たっ)ての願い。


 メリル達に俺達PTの《思考パスの共有》や《魔法・スキルの共有》を教えることにする。



 と言っても、《空気使い》スキルは秘密にすることに。



現在のヤマーダPTと《疾風の剣》との関係


「ネーコ師匠、私達も皆さんのように《空間魔法》や《収納》を使いたいです! 皆さんのように魔法とスキルを《共有》できませんでしょうか?」(メリル)

「難しい話ね」(ネーコ)


 メリルはネーコを師と崇めるようになった。


  メリルはサリアと同じ犬族の獣人だ

  《職業》は《騎士》


  理由は不明だか、

  ネーコを師匠と呼び始めた


  ただ、(はた)から()ていると…

  茶髪ロングの獣人美女が

  金髪少女を師と仰ぐ


  …何て言うか…シュールな光景だね



「ルルさん、味付けはこんな感じでかまいませんか?」(セシル)

「うん、いいよ」(ルル)

「これ、いい味ですね」(キャロル)


 《疾風の剣》のメンバー、セシルとキャロルはルルの料理の虜となった。


  セシルの《職業》は《魔法技師》

  妹のキャロルは《僧侶》


  二人とも、人間の金髪女性


  でも、人間がゴブリンに料理を習うって


  《疾風の剣》のメンバーは

  誰も料理を作れないのかな?



「サリアさん、この作物はどのように育てるんですか?」(フィン)

「これはな、ウチ特性の…」(サリア)


 黒髪短髪のフィンは金色の眼で、熱心に作物を観察している。


  人間の男性、フィンの《職業》は剣闘士


  実は、人間の男が冒険者になるのって

  かなり珍しい話らしい


  男は大体(だいたい)

  親の家業を継いだり、

  定住して労働したり、


  まず、冒険者にはならないらしい



「なぁリン、ここを《加工》すれば防御力が増すんじゃねえの?」(バード)

「…無理。強度が落ちる」(リン)


 《疾風の剣》最後のメンバー、バードがリンと共に武具を改良している。


  猫族の獣人、《忍者》のバード


  オレのことを完全に舐めているヤツ


  話し出すと判るが、

  コイツはもの(すご)く気分屋だ


  まず、

  オレの言うことは聞かないし、

  オレ達を呼び捨てにするし、


  考えてたら、腹が立ってきた!



  それにしても、

  アヤカシギツネ なのに ネーコ

  猫族の獣人   なのに バード

  山田歩     なのに ヤマーダ


  …この世界、名付けのセンスねーなー



 そんなことを考えているヤマーダの元に、

「旦那、今のところヤツに動きはないっす」

 青い髪と眼をした少年が報告する。

「あぁ、イズム。ご苦労様」(ヤマーダ)


  そう、

  この少年が《人化》したイズムだ


  現在は《分裂体》を使って、

  エンシェントドラゴンを索敵中


  …なんか、

  コイツ、凄い美少年なんだよ


  …オレも《人化》しようかなぁ



「イズムちゃん、わたしの料理食べてみて!」

「あーズルい、わたしのも食べてー」

 セシルとキャロルはイズムがお気に入りだ。


  あー、殴りてぇ


「ア、アッシはまだ、仕事がありますので、(あと)で」(イズム)

「「後でっていつ~? きっとよ~っ!」」(二人)


  イズム、モテモテだね…

  語尾に「っす」ってついてないし!


  カッコつけてんじゃねぇよ!

  

  …羨ましくないよ……全然…



 さっきからずっとすがりついてくるメリルに、

「正直《共有》は無理ね。それに、修行しても《空間魔法》や《収納》の習得は難しいと思うわ。確か《空間魔法》は私達アヤカシギツネか《賢者》に就かないと無理のはず。《収納》に至っては、伝説の《英雄》にならないと駄目だったと思うわ」(ネーコ)

「そんな~」(メリル)


  ちなみにネーコは《賢者》ではない


  アヤカシギツネの里で修行した結果

  習得できたらしい


  種族の《固有魔法》ってヤツなのかな?


「師匠のお力でなんとかなりませんか?」

 ネーコの説明にも、メリルはしぶとく食い下がる。


「うーん、そう言われてもねぇ……あっ、そういえば」

 ネーコは何かを思い出した。


「えっ! もしかして、何か秘策があるんですか?」(メリル)


「えーと、ヤマーダ、メリル達を従者にできない? 多分、従者にすれば、彼らにも《思考パス》の恩恵が受けられると思うの」(ネーコ)


「本当にそんなことできるのか?」

 ヤマーダは疑いの眼差しを向ける。


「多分、できるはずよ。まぁ、魔法やスキルは共有できないかもしれないけど」(ネーコ)

「え~! できないんですか~」(メリル)


「やったことがないから知らないのよ、ターニャは聞いたことある?」(ネーコ)

「噂はあるな」(ターニャ)


「どんな噂なんだ?」(ヤマーダ)

「パーティーを従えるパーティー」(ターニャ)


  レイドみないなもん?


「そんなのがあるのか!」(ヤマーダ)

「あくまでも噂じゃ」(ターニャ)


「噂でも何でもいいので、試したいです!」(メリル)


 メリルと共に、《疾風の剣》のメンバーがヤマーダへにじり寄ってくる。

“《疾風の剣》を従者とし、チャイルドパーティーに加えますか?”


  ステータス先生に反応有り!


「あっ、なんか出来そうだぞ」(ヤマーダ)


“チャイルドパーティーになると固有のパーティースキルが使えなくなりますが構いませんか?”


  なんだ? パーティースキルって


「ネーコ、どうも、チャイルドパーティーってヤツに出来るみたい」(ヤマーダ)

「へぇ~」(ネーコ)


「本当なんですか!?」(メリル)


  嘘つく訳がないでしょ!


「あぁ、そうみたい。だけど、固有のパーティースキルってヤツが使えなくなるってさ」(ヤマーダ)


「パーティースキル!?」(ヤマーダとターニャ以外全員)


「そんなスキルなんて、見たことも聞いたことないわ」

 メリルには皆目(かいもく)見当がつかないようだ。


「ほぅ、パーティースキルとは懐かしい」(ターニャ)

「ターニャ、知ってるの?」(ヤマーダ)


「うむ。パーティースキルとは以前、英雄のパーティーが使っていたスキル、と聞いたことがあるぞ。相当強力らしいそうじゃが…」

 ターニャが豊富な知識の一旦を披露する。


  パーティースキル

  パーティーに別のパーティーが従うと

  連携スキル的なものが使えるんだと…


  ただし、

  合流したパーティーが本来持っている

  パーティースキルは封印されるんだと


  例えば、

  オレ達のパーティースキルが◯

  《疾風の剣》が△とすると

  オレ達 →《疾風の剣》に合流 だと△

  オレ達 ←《疾風の剣》が合流 だと◯

  ってことらしい


「そんな昔の与太話、信じられるのか?」

 まだ、ヤマーダは半信半疑だ。


「信じられるも何も、既に英雄パーティーのみしか使えんかった《思考パスの共有》に成功しておるじゃろう?」

 ターニャから更に貴重な情報が提供される。


  えっ?

  そうなの?


「えっ? 《思考パスの共有》って、そんなに凄いことだったのか?」

 ヤマーダ的には、お菓子のおまけ的な何かと思っていた。


「…当たり前」

 リンが頷く。


「《思考パスの共有》ちゅうのんは、英雄パーティーはんが使(つこ)うてたらしいっちゅう代物やで」(サリア)


  凄いじゃんよ!


「そっから五百年ちょいの間、使うたパーティーなんておらへん、伝説級の技やんか!」

 サリアにしては、偉く熱弁だ。


「そうなの!? サリアも知ってたのか!!」

 サリアの言葉に、ヤマーダだけが驚いている。


「あのな、ヤマーダはん。対して驚かんかったんは、ヤマーダはんだけやで」(サリア)


  あれ?

  てことは…


  (みんな)知ってんの?


  そういう大事な話、

  オレにも教えてほしいよなぁ~


 メリルは意を決して、

「ヤマーダさん、構わないからチャイルドパーティーに入れてください!」


「えっ! …あ、あぁ、わかった」

 メリルの迫力に気圧されるヤマーダ。 


  先生、お願いします!


 早速、加入の許可をステータス先生にお願いする。


“《疾風の剣》をチャイルドパーティーに加えました”

“チャイルドパーティーの魔法とスキルが共有されました”

“チャイルドパーティーに魔法とスキルの一部が共有されました”

“パーティースキル《絶対障壁》が解放されました”

“チャイルドパーティーに簡易版《絶対障壁》が解放されました”

“パーティースキル《空間共有》が解放されました”

“チャイルドパーティーに簡易版《空間共有》が解放されました”


  はい、またメッセージの嵐発生

  面倒だから跳ばすよ、跳ばす


「ヤマーダさん、どうでしたか?」(メリル)

「どうもなにも、自分で調べてみてよ」

 とりあえずメリルに振るヤマーダ。


「……っ! こ、これは凄い! スキルがこんなに増えて…」

 メリルが喜びに打ち震えていると、

「でもヤマーダ、お前達の魔法やスキル、全部Lv5で止まっているぞ」

 自分を《鑑定》したバードが、速くも不満を口にした。


  お前ーっ!


  使えるようになったんだし、

  もっと感謝しろよな!


  バード先生!!


「チャイルドパーティーだからじゃねえの!」

 さすがに(いら)っとしたヤマーダが()慳貪(けんどん)に言い放つ。


「この馬鹿者が! バードが礼儀しらずで、すまんなヤマーダさん。コイツも悪気はないんだ」

 フィンがバードをきつく(たしな)める。


  本当~?

  滅茶苦茶、不満顔でしたけどねぇ


「これで《空間魔法》や《収納》も使えるでしょう!」(ネーコ)

「ネーコ師匠、ありがとうございました!」

 何故か、ネーコに感謝するメリル。


  やったのはオレです!


  最初に感謝するのもオレのはずです!



  パーティースキルの《空間共有》


空間共有(Lv1)・

登録PT間の《空間魔法》、《収納》といった異空間(ゾーン)を共有する。

共有可能空間は、Lv×6ゾーン。


  それぞれの《空間魔法》や《収納》を

  繋ぐって感じのスキル


  これでマイホーム(ネーコの空間)や

  農場(サリアの空間)、

  牧草地(ヤマーダの空間)など


  他人の空間への往き来が楽になったぞ!


  どうやらチャイルドパーティーにも

  適用されるようで

  今後、《疾風の剣》とオレ達は

  《空間魔法》で繋がったってことだ


  そろそろ、

  オレの《収納》にあるゴミも

  片付けないとな


 ヤマーダの《収納》には、ゴブリンの腰布やこん棒など、おおよそ役に立つか分からない物が大量に収納されていた。



----------

食事中


空間魔法(マイホーム)》内〈食堂〉


 イズムが《分裂》を使いこなすようになってきたので、《分裂体》を現地に残して、《空間魔法(マイホーム)》でゆっくりと食事をしている一行。


 《空間魔法》とは《異世界(おもて)》と《異空間(うら)》を繋ぐ魔法。

 その性質上、《異世界(おもて)》のある場所から入ると、同じ場所にしか出られない。

 宿屋の個室のように安全な空間から入らない限り、どうしても《異世界(おもて)》側に見張りが必要だった。


 その問題点を《分裂体》が解決してくれたのだ。


 現在、本体も含めて《分裂体》は4体いる。


  ある意味、《竜神様》のおかげかな


 《分裂体》の発見は、翼竜の攻撃?によるものだ。


「ネーコ師匠達の旅は、至れり尽くせり過ぎますよ」(メリル)

「なぁね」(ネーコ)

 褒められてご満悦だ。


「そうかなぁ?」

 ヤマーダは特にそんな感じがない。

 地球(あちら)の生活の方が、異世界(こちら)よりもよっぽど楽だと知っているのだ。


「こんなに楽な旅なら、他の冒険者から襲われても仕方ありませんよ」(メリル)


  物騒なこと言わないで!

  

「そら、言えとるなぁ。ただ、特別なのはウチらの魔法とスキルなんやから、どないしても(へち)られんやろ」(サリア)


  それは、言えてる…


  …「へちられん」って何?


「それにしても、サリアは恵まれてるわね」

 メリルには、サリアが羨ましくてたまらないのだろう。


 それにしても、メリルとサリアの二人は仲良く喋っている。


 そんなメリルに、

「メリルは知らないかもしれないけど、サリアも相当苦労したはずよ。だって、サリアがアタシ達に会ったとき、《隷従の呪い》が掛けられていたからね」(ネーコ)


 ネーコには、サリアの苦労が簡単に想像できた。


  《隷従の呪い》?

  うーん、前に話していたような…


「せやなぁ、ヤマーダはんに会う前は、いろいろあったんや。いろいろな」(サリア)


  サリア、遠い目をするなよ


「あなたも苦労したのね」(メリル)


 丁度(ちょうど)、会話が途切れたので、

「ところで、その《隷従の呪い》って何なんだ?」

 ヤマーダは《隷従の呪い》について、誰となくに質問してみる。


 するとターニャが、

(あるじ)、《隷従の呪い》とは相手を支配して、行動を色々規制する呪いなんじゃ」


  奴隷みたいにするってこと?


(ちな)みに、一度掛かったら、ワシでも簡単には解けんぞ」(ターニャ)


  エンシェントドラゴンでも解けないって

  ヤバヤバじゃんか!


 一行の知恵袋、ターニャがヤマーダに分かりやすく説明してくれる。


「と言うことは、ノルンの街にサリアへ呪いを掛けたヤツが居たってことか?」(ヤマーダ)


「いや、ちゃうで。別の国っちゅうか、別の大陸での事なんや」(サリア)


  別の大陸!?


「あるヤツに捕まってしもうて、呪われたっちゅう訳やな。で、ヤツの隙を就いて、この大陸へ逃げてきたんや」


  何それ!?

  拉致監禁じゃんかよ!


  サリアの生い立ちって波乱万丈?


「サリアに《隷従の呪い》を掛けたヤツって何者なんだ?」(ヤマーダ)


 少し黙ってから、サリアは意を決して、

「…魔族や…と思う」


「魔族!!」(サリアとヤマーダ以外)


  英雄、賢者に魔族っと

  異世界感、満載じゃん!


「へぇ、この世界には魔族なんてヤツもいるんだなぁ」

 周囲の反応とは真逆に、ヤマーダは呑気(のんき)に感想を伝えた。


「だ…旦那、なに呑気なことを言ってるんですか。魔族ですよ、魔族!」(イズム)

「えっ? 何々、魔族って凄いの? …だって俺、魔族っての知らないし」(ヤマーダ)


「おいおい、ヤマーダって常識ねぇな」

 バードが素直(すなお)な感想を口に出す。


  おい、そこ、失礼だよキミ


「なあ、アタイも魔族って知らないけど、強いのか? まず、エンシェントドラゴンってヤツをブッ倒せばいいのよね?」

 ルルが重たくなった空気を変な風に()える。


「…」

 だれも反応しない。


 しょうがないので、

「あぁ、そうなんじゃないか?」

 ヤマーダはそ知らぬ顔でルルに同意しておいた。


  …しかし、

  エンシェントドラゴンに魔族か

  大事(おおごと)になけりゃいいけど…



----------

更に7日後


北国ゲンク《竜の洞窟》までの道中


 残りの道のりも、鬱蒼としたジャングルが続き、滅入(めい)ることにほとんどが雨だった。


 イズムの報告から、この時点でも翼竜に目立った動きはない。


 イズムがヤマーダの肩をクルクルと回り、

『旦那、アッシの姿、カッコ良いと思わないっすか?』

 《人化》を解き、エンジェルスライムに戻ったイズムがヤマーダに語り掛ける。


「マジで強そうだな」(ヤマーダ)


 今回の《竜の洞窟》までの道のりでは、ネーコの発案でイズムがほとんどの魔物を討伐することになった。


 その際、オークの集落を発見。

 集落には、オークの他に、オークチーフ、オークナイト、オークアーチャー、オークメイジと弱小スライムのイズムからしたら、強敵揃いだった。


 そんな集落をヤマーダ達のサポートがあるとは言え、イズム単体で討伐に成功したのだ。

 その結果、イズムのレベルは極端に上がり、《ポイズンスライム》から《ペットスライム》、《エンジェルスライム》へと二段階進化していた。


  イズムって、進化するペース早くねぇ

  雑魚(スライム)だったからかな?


『旦那、なんか失礼なこと考えてないっすか?』(イズム)


  意外と鋭いんだよ、コイツ



「イズム、(フィルドン)の方は、変わりないか?」


 パーティーの立ち寄り先であったマーシャ宅にも、イズムの《分裂体》を潜ませ、いざという時に対応できるようにしていたのだ。


  オレ、

  イズムの《分裂体》って言ってるけど、

  ほんとは全部、本体なんだよな!?


「特に変わったことはないですねぇ」

 サッと《人化》したイズムが素早く答える。


 するとサリアが

「まぁ、イズムっちは街の住民に大迷惑かけたんやから、ちゃんとケアしてあげんとな」

 と、イズムへ忠告をしてやる。


「わかってますって、サリアのアネさん」

 イズムはサリアと一緒に歩き始める。


  なんとなく、今回のオレ達は


  オレ・ネーコ・ターニャ・ルル

  リン・クロードさん

  サリア・イズム


  3つのグループで行動することが多い


  そして、ここに

  《疾風の剣》の各メンバーが加わる感じだ


  13人、それが今のオレ達の人数


  数が多いから、

  仲良しグループになるんだろうな



  ただし、戦闘に入れば

  ちゃんとパーティー単位で戦っている



 偵察に出ていたリン、クロード(人化)、バードが戻ってくる。


「ヤマーダ、この先に《竜の洞窟》があるようだな」(クロード)

「ご苦労様です、クロードさん。リン達もご苦労様」


 ヤマーダは人数分のコップに《聖水(みず)》を注いで渡す。


 3人はコップを受けとると、美味しそうに一気に飲み干した。


「…やっぱり、美味しい」(リン)


「いや~、仕事帰りの一杯。格別だな~」(クロード)


  オッサンみたいな喋り方

  …実際にオッサンなんだけど


「ク~ッ! ヤマーダ、もう一杯!」(バード)


  テメェ、ふざけんなよ!


「しかし、お前の用意する《聖水(みず)》はスゲーよな。メチャクチャ旨くて、なんか体力も回復するし」(バード)


 その後の道中、《疾風の剣》には《空間使い》のスキルを教えている。

 というよりも、スキルが共有されたことによって、《鑑定》でバレてしまったのだ。


「…バード、そのことは秘密!」(リン)

「分かってるって、リン」(バード)


  バードって

  滅茶苦茶(めちゃくちゃ)生意気だけど、

  リンの言うことだけは

  素直に従うんだよなぁ




----------

北国ゲンク《竜の洞窟》入口


PT

ヤマーダ、ネーコ(人化)、リン、サリア、

ルル、クロード(人化)、ターニャ(人化)、

イズム、

《疾風の剣》メンバー


 洞窟の入口で中を覗くバード。


「スッゲー深そうだぞ」(バード)


 洞窟の入口は、幅3m、高さ6m。

 鍾乳洞のような口を開けており、生暖かい風が外へ向かって流れている。


「それに(くっせ)ーぞ!」(バード)

「しょうがあるまい。中の空気が澱んでいるんじゃ」(ターニャ)


 洞窟の中を見た感じ、壁が湿っていて湿気が多いことは容易に予想できた。


「じぁあ、これから洞窟の攻略を始めるわよ」


 ネーコの合図により、《竜の洞窟》攻略を開始する。



----------

北国ゲンク《竜の洞窟》

入って数十分後


 洞窟の内部は、曲がりくねった一本道になっていた。


 薄暗く湿気は多い。

 それに比べて、気温は涼しく、意外なほど過ごし(やす)かった。


 いくらか進んでも、通路に分かれ道は無い。

 時折設置されている罠も、落とし穴や隠し矢などで、見落とすほど難しい訳ではなかった。


「おい、また罠があるぞ。解除するから待ってろよ」


 バードは共有された《解体》スキルの罠解除にはまっている。



 また、洞窟の魔物はどうやらゴブリンかオークがしかいないようだ。

 一度の戦闘には、魔物数体しかいない。



更に数十分


 少し探索に慣れた頃、

「…前から魔物がくる! …さっきまでとは違う! …結構強い気がする…気をつけて!」(リン)

「リン、俺に任せなって!」(バード)


 索敵中のバードが、不用意に魔物に近づく。


ボフッボフッ…

 《火魔法》火の矢が数本、飛んできた。


『敵対する者に足枷を!』(魔物)


 バードが右側に魔法をかわそうとするも、行動阻害(デバフ)を掛けられたようで思うように動けない。


ザザッ!

 動きの鈍ったバードの左肩と左脇腹に火の矢が突き刺さる。


「うぐ、く、くそぉー、(いっ)てぇなぁ!」

 揉んどりうって苦しみ出すバード。


「…一旦、下がる」(リン)

 リンは急いで負傷したバードを抱え、ヤマーダ達の後ろに連れていく。


「リンさん、ありがとう」

 メリルは近寄り、リンに感謝を伝えると《回復魔法》でバードを治療した。



『獲物だ!』(魔物)

『獲物だ!』(魔物)


 徐々に敵の全貌(ぜんぼう)が現れてくる。


オークロード 1体

オークチーフ 3体

オークナイト 7体

オークアーチャー 3体

オークメイジ 3体

オーク 22体


 魔物はオーク系が39体。


 魔物の数と強さからすると、ギルドランクでSランク相当だった。


「この数!」(メリル)

「オークロードもいるわ!」(セシル)

「リーダー、撤退を!」(フィン)


「サリア、マズいわ! 急いで撤退しましょう!」(メリル)


 魔物達の強さを察知し、いち早く退却の体制を整えるメリル達《疾風の剣》。


 迅速な対応から、彼らがBランクなのは間違いない。


 しかし、

(みんな)、行くよっ! ヤマーダっ! いつものお願いっ!」

 ネーコはそんな魔物の群れを意に反さない。


  はいはい

  《聖気(バフ)》でしょ


 《聖気》により、急にヤマーダPTの動きが良くなった。


「準備できたぞ」

 ヤマーダが伝えると同時に戦いが始まる。



「一体、どうなってるの?」(メリル)



 ヤマーダの《聖気(バフ)》により、味方の戦力上昇。

 逆にヤマーダの《聖気(デバフ)》により、悪意ある敵の戦力低下。


 この時点で、既に勝敗は決していると言ってよかった。


ヒュンヒュヒュヒュヒュ…

 ネーコの《風魔法》かまいたちが容赦なく、オーク22体の身体を切断していく。


ズガーーーバリバリッ!

 サリアの《雷魔法》雷撃が生き残ったオークの他、オークロード達へもダメージを与える。


 オーク22体は二人の魔法攻撃によって、一瞬のうちに全滅した。


バシュバババババッ!

 リンが高速で移動し、オークアーチャーとメイジを瞬殺。

 更にオークロードへ向かう。


シュシュシュシュ…

 イズムがオークチーフとオークナイトを触手で切り裂いていく。


「ハッ! ハッ!」

 クロードは、イズムの打ち漏らした敵を冷静に片付けていく。



「凄い!」(メリル)


 メリルが気づいたら、オークの群れはオークロードを残すのみとなっていた。



 リンが最後に残ったオークロードと対面する。


「リン、手を貸そうか」

 手持無沙汰なヤマーダが呑気な一声を掛ける。


「…必要ない」(リン)

 返事と同時にオークロードへ急接近して、右上から袈裟切する。


 既に、《風魔法》かまいたちと《雷魔法》雷撃を食らいフラフラだが、オークロードの殺気は変わっていない。


 リンはオークロードの横薙ぎ(斬撃)を(かが)んでかわし、胸の急所を一突きで仕留めてしまった。


  掛かった時間は5分くらいか?

  また、オレの出番無しか…


「アタイの獲物は?」(ルル)

「…ゴメン。…全部、倒しちゃった」(リン)


「次の敵は、アタイのだからね!」(ルル)

 ヤマーダはプンスカしているルルの頭を撫でて、機嫌をなだめ始めた。


「し、し…師匠達って、こんなに強かったんですか?」(メリル)

「当たり前!」(ルル)

 まだ、プンスカしている。


「ヤマーダの《空気使い》があっての強さよ」

 戦いに参加できなかったネーコは、少しだけ謙遜していた。



  そろそろ歩き疲れた…


「今日の探索はここまでにしないか?」


 戦ってもいないヤマーダが、すまなそうに「お疲れちゃん」を(みんな)に伝えるのだった。






ヤマーダ

職業・農民(Lv4→7)、商人(Lv3→5)

   武器職人(Lv2→6)

ギルドP・C→B

レベル・18→19

スキル・言語理解(Lv7→8)、耕作(Lv4→7)

    連作回避(Lv4→7)、品種改良(Lv4→7)

    交渉(Lv3→5)、商売(Lv3→5)

    値切り(Lv3→5)、武器錬成(Lv2→6)

    武器強化(Lv2→6)、武器修繕(Lv2→6)


ネーコ

職業・僧侶(Lv5→7)

レベル・29→30

魔法・空間魔法(Lv7→8)、回復魔法(Lv4→7)

   支援魔法(Lv4→7)

スキル・瞑想(Lv5→7)


リン

職業・探検家(Lv8→9)

スキル・罠外し(Lv8→9)、交渉(Lv8→9)

    隠密(Lv8→9)


サリア

職業・召喚士(Lv6→7)

レベル・29→30

魔法・召喚魔法(Lv6→7)、光魔法(Lv6→7)

   闇魔法(Lv6→7)


ルル

職業・料理人(Lv3→6)

レベル・26→27

スキル・料理(Lv3→6)、発酵(Lv3→6)

    熟成(Lv3→6)


クロード

職業・戦士(Lv3→6)

レベル・29→30

スキル・突き(Lv3→6)、旋回切り(Lv2→6)

    身代わり(Lv2→6)


ターニャ

職業・戦士(Lv2→3)

スキル・突き(Lv2→3)、旋回切り(Lv1→2)

    身代わり(Lv1→2)



イズム

種族・ポイズンスライム→ペットスライムnew

   →エンジェルスライムnew

職業・無職(Lv-)、戦士(Lv-)new

   僧侶(Lv2)new

レベル・2→40→1→40→2

人化時装備・鉄の剣+4(攻撃+9)new

      旅人のフク上(防御+20)new

      旅人のフク下(防御+15)new

      皮のクツ(敏捷+10)new

魔法・回復魔法(Lv1)new、支援魔法(Lv1)new

スキル・突き(Lv-)new、旋回切り(Lv-)new

    身代わり(Lv-)new、

    能力吸収(Lv2)new

    瞑想(Lv2)new

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ