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《空気使い》って?  作者: 善文
7/134

北の国から

北の国編になります。

北国ゲンク〈道中〉


 鬱蒼としたジャングルをかき分けて進む一向。


『蒸し暑くてたまらんな!』


  自慢の愛馬車(アテナ)を使えないから

  クロードさん、イライラ中


  まぁ、気持ちは分かるよ

  ずっと、ムシムシした獣道だからなぁ


「クロードさんも《人化》してみたらどうです? 歩きやすくなりますよ」


 そんなヤマーダの提案に、

『すまないが私は馬である自分に誇りを持っている』

「…えぇ…分かります」(ヤマーダ)

 とりあえず、相槌。


『今のままでも十分に歩けるぞ。態々(わざわざ)《人化》などしなくとも、問題あるまい』


  頑固だなぁ…

  頑固な油汚れに~♪ ジョ◯♪


『どうしようもなくなれば、考えてみるがね』

「そうですか。まぁ、無理しない程度に、お願いしますね」(ヤマーダ)


  オレの相談役クロードさん


  そんな彼の現在のステータスは、


名前・クロード

種族・ウマ(動物)

年齢・21歳男


職業・無職(Lv-)


レベル・29

体力・172

魔力・29

攻撃・29

防御・29

知識・29

敏捷・92(+12)

運・53(+20)


装備・蹄鉄(敏捷+2)


魔法・なし


スキル・体力適性(Lv-)、宿泊回復(Lv-)

    時間回復(Lv-)、スキル補正(Lv-)


所持金・5,000G

所持品・(《収納》内を除く)


  男…やっぱり、雄じゃないんだね

  魔物もそうだったから驚かないけど


  (ちな)みに、

  最初に訪れた《アルド》の町の

  クッソ生意気な馬のステータスは


種族・ウマ

年齢・5歳雄


職業・無職(Lv-)


体力・51

魔力・1

攻撃・1

防御・1

知識・1

敏捷・22(+12)

運・11(+20)


装備・蹄鉄(敏捷+2)


スキル・体力適性(Lv5)、宿泊回復(Lv-)

    時間回復(Lv-)、スキル補正(Lv-)


  間違いなく雑魚だよ、雑魚、

  ゴブリンにやられる程度の


  名前はなく、レベルもない



  ステータスの性別って、

  《人化》が使える  と 女、男

  《人化》が使えない と 雌、雄

  って表示されるようだな


  もしかすると

  《供用語》の人族語を話すことが

  条件なのかもしれない


  まだ、仮説の域



 《人化》したターニャが近づき、声を掛けてくる。

「なぁクロードよ、《人化》も悪くないぞ」


  そうそう


「もっと気楽に考えたら、どうじゃ?」(ターニャ)

『ターニャ様…』(クロード)


「ワシもこの年まで《人化》なぞしたことなかったんじゃ」(ターニャ)


  普通、《人化(そんなの)》できないから


「しっかしのぅ、使ってみるとこれが意外と便利なんじゃよ」(ターニャ)

「せやで、そない気張ってばかりやと、ズッルズルにハゲてまうでぇ」(サリア)

「…気楽に…」(リン)


  馬って、ハゲんの?


 そんな中、ヤマーダが鼻歌を口ずさむ。

「あーあーーーあああああーーーあ♪」(ヤマーダ)

 サリアが鼻歌に食いついた。

「あーあーーーあああああーーーー♪」(サリア)

「んーんーーーんんんんんーーーー♪」(ヤマーダ)

「ケツネーうどんが食いたいな♪」(サリア)


「勝手に歌詞作んなよ!」(ヤマーダ)

「…キタの国から!」(リン)

「ピンポン! ピンポン! ピンポーーンッ!」(サリア)


「何故、それが北国(ゲンク)なんじゃ?」


  《人化》大好きドラゴン

  ターニャのステータスは、


名前・ターニャ

種族・エンシェントドラゴン

年齢・520歳女


職業・無職(Lv-)


レベル・250

体力・675

魔力・595

攻撃・807(+1)

防御・545(+2)

知識・590(+1)

敏捷・445(+11)

運・655(+20)


装備・竜の髪飾り(防御+1)

   竜のローブ(防御+1)

   竜のリストバンド(攻撃+1)

   竜のサンダル(敏捷+1)

   竜のアミュレット(知識+1)

   (竜シリーズ装備)


魔法・時空魔法(Lv-)、古代魔法(Lv-)

   竜魔法(Lv-)、封印(Lv-)


スキル・竜眼(Lv-)、宿泊回復(Lv-)

    時間回復(Lv-)、スキル補正(Lv-)

    鑑定(Lv-)、長寿(Lv-)、毒耐性(Lv-)

    麻痺耐性(Lv-)、石化耐性(Lv-)

    盲目耐性(Lv-)、混乱耐性(Lv-)


所持金・0G

所持品・(《収納》内を除く)


  もう、どっからツっこんで良いのやら…


  チートだよ、チート!


  レベルは三桁、能力値も三桁


  装備はターニャ自身が器用に作った力作

  シリーズ補正なんか付くかねぇ、普通!


  魔法は名前からして(おっそ)ろしい感じ


  スキルに至っては、

  《長寿》だよ《長寿》

  間違いなく《不老》が付くパターンだな



  こんなフザけた能力なので

  ターニャの戦闘参加は絶対禁止!

  ネーコ、(いわ)く反則だから


  まぁ正直、

  こんな能力が近く戦ってたら

  巻き沿いくって死ぬな…絶対


  周りの被害が増えるだけってゆうか…

  それも大災害クラスの凄いヤツ


  なので、

  オレの隣で心穏やかに暮らさせている

  …って、そんな存在がオレの隣にいるの?



  実際、(みんな)結構強い

  最近オレ、戦ってない


  それと、

  理由は全く分からないけど、

  ターニャの魔法とスキル

  思考パスが繋がっているのに使えない


  レベルが足りないって事らしいけど…


  もしかして、Lv250 以上が条件とか…


「そろそろ、昼食の時間だよ!」


 マイペースなルルが皆に昼時を告げる。



----------

昼食後


 食事も終わり、テクテク歩く一向。


「なんかこの国ってさぁ、ジャングルばっかりだよな?」(ヤマーダ)


 ヤマーダが何気に誰となく質問すると、

(あるじ)、この地域はほとんどが密林じゃぞ」(ターニャ)

「えーーっ!」(ヤマーダ)

 心の声が、思わず漏水。


  じゃあ、

  これからもずっと続くんかよ!


  ってよくこんな密林(とこ)に住めんなぁ

  一体、何人(なにじん)だよ!


  原始人か?


「やっぱりここの住民は人間、いや、獣人なの?」(ヤマーダ)

「エルフとドワーフだけじゃな」(ターニャ)

「えっ!?」(ヤマーダ)


  マジ?

  やったーっ!

  生エルフに生ドワーフ!?


「ただ、ここは国って訳でも、国王がいる訳でもないらしいぞ」

 博識なターニャがこの地域を補足解説してくれた。


「ふーん、でもアヤカシギツネの里はあるんだろ?」(ヤマーダ)

「うむ…」(ターニャ)

 ターニャは渋い表情をする。


「そのことなんじゃが…」(ターニャ)


  もしかして…


「すまんな(あるじ)、ワシはそんな話をとんと聞いたことがないんじゃ」

「えっ! っておい、ネーコ! 本当に大丈夫なんだろうな?」


  ターニャ博士が知らないって事は…


  この旅、

  大分(だいぶ)不安になってきたぞ


「大丈夫に決まっているでしょ! 北の(はし)にあるはずよ!」(ネーコ)

「はず! はずなのかよ!…更に、北の端っこだし」(ヤマーダ)

「そないギャーギャー言わんと、サクサク進もうや」(サリア)

「…そう」(リン)


 こういった状況下でも、流石(さすが)冒険者といった態度のリンとサリア。


  ターニャは以前、

  この国を空から眺めたことがあるらしい


  その記憶から逆算すると、


  今迄の歩いた距離は

  北の端まで30分の1程度しか

  進んでいないらしい


「こりゃあ、里まで結構かかるぞ」(ヤマーダ)

「まぁヤマーダ、食べ物の心配はいらないから。アタイに任せときなって!」(ルル)


 愚痴るヤマーダを、ルルが励ます。


  ルルの《空間魔法》や《収納》


  食べ物がたくさんある事を

  メンバー全員知っている


《空間魔法》・

術者が作れる異空間。

魔法レベルに応じて空間内の様々な条件の設定が可能になる。

魔力・知識力が多ければ、魔法レベルに応じて異空間も大きくなり、条件変更も容易となる。

条件設定とは、空気濃度・天候・風・土・光と影・時間経過など。

空間魔法内での生活も可能。

異空間への入り口は術者のみ開閉できる。


《収納》・

スキル所持者が持つ固定された空間。

スキルレベルに応じて、収納できる空間の大きさと経過時間が変わる。

レベルが上がるほど収納空間は広がり、経過時間は遅延される。

思考形態を持つ生物は《収納》する事ができない。


  平たく言うと、


  《空間魔法》は、

  何でも出し入れ出来るけど

  魔法だから魔力と知識に左右される


  《収納》は、

  動物なんかは入れられないけど

  スキルだからスキレベ以外の干渉はない


  そんな感じだな


 すると、ネーコが普段通りの声で、

「来たわよ!」(ネーコ)

「アタイがやる!」(ルル)

 緊張感の欠片もない返事。


“魔物が現れた”

ゴブリン 1体

角ウサギ 1体


  あー、またゴブだよ…


 北国(ゲンク)に入国してから、何度か魔物と遭遇したが、ゴブリン、スライム、角ウサギしか出会っていない。


 数分も経たないうちに、

「終わったよ。歯ごたえがない! つまんない!!」(ルル)


 ルルの欲求ボルテージが順調に貯まっていくようだ。



----------

 先行して索敵していたリンが戻ってくる。

「…この先に、エルフの里?がある。…10人程の集落」


  第一村人発見!…なんてな


「とりあえず《北の里》でも、聞いてみるか?」(ヤマーダ)


 リンの集落発見の報。

 原住民と接触してみることに。


「賛成やな、旅は情報が命やん」(サリア)

「じゃあ、集落に行くって事で()いんだよな?」(ヤマーダ)


「いいんじゃない」(ネーコ)


「せやけどヤマーダはん、何も考えんといきなり話すんはやめてぇな」(サリア)


  何だよ、それ!


  ちゃんと考えてますぅ~

  ちゃんと考えてますからぁ~


「ウチらは冒険者っちゅうことにしようや」(サリア)


  するもなにも、冒険者でしょうが


  …サリアって冒険者じゃないの?


「…魔核を売る…そんな会話から」(リン)

「それ、えぇやん」(サリア)


 そんな中、

「アタイ、エルフ、苦手!」(ルル)


 ルルは集落に行きたくないようだ。


  へぇ、

  エルフに苦手意識があるんだな


「じゃあ、ルルは俺の脇で待機だな」(ヤマーダ)

「うん、わかった」(ルル)



 ヤマーダ達は軽く進むだけで、集落へ到着した。


 第一エルフを発見。

 優しく話し掛けてみる。


  まずは、魔核を売る、だよな


「こ、こんにちは、旅の冒険者なんだが…た、倒した魔物の魔核を、売りたいんだが?」(ヤマーダ)

(ここ)の中央広場に代表がいるから、そこへ尋ねるといい」(エルフ)

「あぁ、分かった。あ、ありがとう」(ヤマーダ)


 ヤマーダのファーストコンタクトはまずまずだった。


「ヤマーダ、アンタ緊張してたの? 30点」(ネーコ)

「…ちょっと、たどたどしい 45点」(リン)

「まぁまぁやな 31点」(サリア)


 思い思いの採点をされる。


  何、その辛口なコメント!

  キミら、何もしてないでしょうが!



 ヤマーダ達は集落の中央で、長い金髪を束ねた耳の長い女性を発見する。


「多分、あのエルフが代表ね!」(ネーコ)

「ほらヤマーダはん、出番やで」(サリア)


  サリア、分かったから押すなよ!


「え、え~と、旅の冒険者で、ヤマーダだ。た、倒した魔物の魔核を売りたいんだが、集落(ここ)で扱ってるか?」(ヤマーダ)

「そいつは難しいな」(代表)

「えっ?」(ヤマーダ)


  オレが人間だから?


「すまんな。今、(ここ)にはお金の持ち合わせが全く無いんだ」(代表)


  この集落、お金が全くないのか!

  どうやって生活してんのよ!


集落(ここ)、規模が(ちっ)さいからなんとちゃうか?」(サリア)

 サリアがズケズケ言うと、

「…それもある」(代表)


  それも?


「つまり、別の理由(わけ)もあるんやな?」(サリア)

「…そ、そうだな」(代表)


「エルフの代表よ、試しにワシらに話てみたらどうじゃ?」(ターニャ)

「…う、うむ」

 代表の煮え切らない態度に、

「何なのよ! 態々(わざわさ)、アタシが来たんだから話しなさいよ!」(ネーコ)


  お、おいっ!

  なんでそんな上から目線!


「…分かった、恥を忍んで話そう」(代表)


  ふ~っ

  なんとか話してくれるのね…


「じ、実は、(ここ)は大豆を育てて生計を立てているんだが」(代表)

「なんや、問題っちゅうのは農作業のことなんか?」(サリア)


「今年、発育が急に悪くなってしまったんだ。お陰で全く商売にならない」(代表)

「急に発育が?」(サリア)


「農作物ゆえ、その年々(としとし)で出来不出来になるのは致し方ないと分かっている」(代表)


  豊作、不作があるってことか…


「しかし、今年はあまりにも酷すぎる。()がほとんど付かんのだ。全く売り物にならん」(代表)

「なるほど」(サリア)


(ここ)には他に売り物がない。当然、他でお金が入る予定もあるはずがない」(代表)


 エルフ代表の表情には「集落存続の危機」的な緊迫感があった。


  大豆の発育だけで、

  そんなことになるのか?


「なぁ、サリア、キミは畑仕事が得意だろ」(ヤマーダ)

「得意ってほどやないけど」(サリア)


  「けど」自信があるんだろ


「発育障害の原因って、何か心当りないか?」(ヤマーダ)

「せやなぁ…エルフの(ねえ)さん、大豆(おまめさん)はどないして育てとるんや?」(サリア)



 その後、代表に育成方法を聞いてみると、

「どうやら、(集落)ここの大豆(おまめさん)、代々株分けして育てとるようやな。…初代を大事に大事にしとる」(サリア)


  ソメイヨシノみたいってこと?


「せやったら、年々、ちょっとの環境変化がチリツモしてもうたせいで、初代の大豆(おまめさん)の遺伝子が今の環境に耐えられへんようになったんとちゃうやろか」(サリア)

「では、どうしたら良いのだ?」

 代表が食い気味に訊ねてくる。


大豆(おまめさん)、育てんの()めたらえんとちゃう?」(サリア)


  集落唯一の産業を捨てさせんの!?


「元々、他にも何か作っとんのやろ」(サリア)

「…はぁ、確かにない訳ではないが…」(代表)

「ほんなら、それでえぇやん」(サリア)


  代表さんは続けたいって感じだよ


「大豆は(ここ)の名産。なんとかできないものか…」(代表)

「なんや、面倒(めんど)いなぁ」(サリア)


  あ~ぁ、面倒って言っちゃったよ


「しゃあない、ウチの大豆(おまめさん)あげたるから、掛け合わせてみぃ。そんなら解決するんとちゃうか」(サリア)

「ん? たったそれだけで良いのか?」(代表)

 不安な表情の代表。


「元の大豆(おまめさん)もちゃんと育てるんやで。そんで、この種から出来た大豆(おまめさん)と掛け合わせるだけで、解決するはずや…多分」(サリア)

「うむ、なるほどな。だが、それは本当なのか?」

 代表はサリアの責任感の欠片(かけら)もないような口調が納得いってない。


  こりゃ、信用してないなぁ


  サリアの農業力(ちから)が分かれば

  代表も納得してくれんじゃねぇ


「だったら、ルルとサリアで、何か大豆料理を作って、サリアの大豆と集落の大豆を食べ比べてみたら?」(ヤマーダ)

「…それ、良い」(リン)

「旨いは正義!」(ルル)


  ちょっと違うかなぁ~


「枝豆ならすぐできるよ」

 ルルはすぐ返事を反す。


「後は煮物…豆乳なんかもえぇんとちゃうか?」

 サリアから料理の提案。


  なるほど、

  オレだった納豆しか思い浮かばん


「じゃあ代表さん、その3点の料理を作るから実際に食べ比べてみてよ」(ヤマーダ)



…数十分後


 代表のもとに、ルルが料理を持ってくる。


 初めてみる大豆料理に、代表が恐る恐る一口、

「ん!! (うーんま)い、なんて(うんま)いんだ」(代表)


  良かったぁ、気に入ってくれて


「これに比べると、今まで食べていたものは何だったんだ!」(代表)

「ほ~らな、食べ比べれば一発で判るだろう」(ヤマーダ)

「確かにそうだな」(代表)


「ルル、サリア、良かったなぁ。代表さんから褒められたぞ」(ヤマーダ)

「「作ったかいがあった(わ)」」(ルル、サリア)


 料理を褒められて、二人も嬉しそうだ。


  これで、

  ルルのエルフへの苦手意識が

  少しでも無くなればいいんだが


「こんで、料理の旨さでよ~分かったろ。今、食べたのってサリアが育てた大豆だ」(ヤマーダ)

「確かにとっても素晴らしい味だ!」(代表)


「サリアの作物を育成する能力は相当なものだよ」


  詳しくは知らんけど


「まぁ、さっき話した通りにすれば、直ぐに結果が出るんじゃない」(ヤマーダ)


 サリアの大豆には、前世での大学の知識に加え、ヤマーダの持つ《加工》《耕作》《連作回避》《品種改良》スキルが大きく影響していた。


「なるほどな、やってみるか!」(代表)

「まぁ、頑張ってみぃや」(サリア)


「なんだったら、頂いた大豆だけを育成した方が良いのでは?」

「そんなん、やめとき!」

「何故ですか?」


  あっ!

  代表の口調が「ですます調」に変わった!


(ねえ)さんらが育てた大豆(おまめさん)は、長年かけてこの気候や風土に馴染んだものやろ。そない大事な(もん)()めんのメッチャ勿体無いで」(サリア)

「は、はい!」(代表)


 代表のサリアを見る目が、尊敬を通り越し始めてくる。


(あと)、畑は何年かにいっぺんは休ませなアカンよ」

 サリアのアドバイスを熱心に記憶している信者(だいひょう)



 集落(ここ)の問題がある程度、片付いたところで、ヤマーダは本題を切り出すことに。


「ところでさぁ、代表さん、アヤカシギツネの里について何か聞いたことない?」(ヤマーダ)

「ほぅ、また珍しい魔物の名前が出たましたね…アヤカシギツネですか…うーん」(代表)


  もしかして、

  ここまで手伝()って収穫、ゼロなの?


「あぁ、確か…中央の街フィルドンでそんな話を聞いたことがあるような、ないような?」(代表)


  代表さんの記憶、曖昧なのね


  ただ、中央の街が怪しいってことか


「ところでヤマーダ様」(代表)


  あれっ?

  「様」ってなったよ!


「自己紹介が遅れまして申し訳ありません。このメイ村の村長をしております、ミーシャと申します」


  あっ!

  名前、聞くのすっかり忘れてた!?


  それに今、村長って!

  あぁ、ここって村だったのーっ!



 散々、集落扱いしてきたヤマーダ達だった。



「じゃあ、俺達は中央の街へ出発するんで」(ヤマーダ)

「色々、ありがとうございました」(ミーシャ)


「礼なら旨い大豆(おまめさん)がでけたとき、倍にして返してくれへんか?」(サリア)


  おいおい、

  親切の押し売りみたいだよ


「フフッ、(かしこ)まりました」

 もはや信者(ミーシャ)には、サリアの育成方法での失敗など、微塵も想像できない。



 代表に別れを告げ、北側のジャングルに入っていく一行。


 少し歩いてから、

「しかし、妙な話じゃな?」(ターニャ)

「何が?」(ヤマーダ)


「この北国は、大部分が密林地帯でよく雨も降る」(ターニャ)

「そら、変やな」(サリア)


「だから、何が?」(ヤマーダ)


「そらぁ、こない肥沃な土地、どないして不作になんぞなるんかっちゅうことやんか!」(サリア)

「今迄、ワシはこんなことを聞いたことがないぞ」(ターニャ)



 ヤマーダは、この二人の発言に一抹の不安を覚えるのだった。



----------

そんなこんなで2週間経過


 あれからと言うもの、小さな集落を片手の指では足りないほど訪れたが《北の里》の有力な情報は全く得られなかった。


 しかし、各集落を訪れる度に手助けをするヤマーダ達は、知らぬうちに《救世主御一行》として名を馳せていく。



 ある魔物との戦闘終了後


「なんかこの北国(くに)の魔物って、ゴブやスライム、角ウサばっかりなんだな」(ヤマーダ)


「何、言ってんのよヤマーダ。(あっ)たり前じゃない」(ネーコ)

「当たり前?」(ヤマーダ)


「野外フィールドの魔物なんて、どの国も大して変わらないわよ (そんな事も知らないの?)」(ネーコ)

「えっ!」(ヤマーダ)

「せやな (ヤマーダはん、こらヤバいで!)」(サリア)

「…当たり前 (無知すぎ)」(リン)


 緩慢とした旅に飽きているヤマーダ。


 余りの知識のなさに、ネーコ達はヤマーダの再教育を心に誓う。


  そんな事、知る訳ねぇしっ!


「それにしても、レベル全然上がんないな」(ヤマーダ)


 既にヤマーダ達のレベルは、かなり高い。


 そのため、ゴブリン程度では経験が全く積めず、ここ2週間レベルは一つも上がっていない。


  どうやら、レベルって

  雑魚をいっくら倒しても

  ガンガン上がるって訳じゃないんだな


  DQのスライム叩きは無理なのか…



 更に訪れた集落は小規模なため経済規模も小さく、魔核の換金は全く出来なかった。



  ここ2週間、

  オレら、成長の跡が一切無い


  これって結構、深刻なんじゃねぇの!



  中央の街まで、まだ半分もある


  …遠い

  ……長い

  ………ジャングルうざい!



----------

更に2週間後


北国ゲンク〈フィルドンへの道中〉


パーティー(PT)

ヤマーダ、ネーコ(人化)、リン、

ターニャ(人化)


 現在、ヤマーダ達はヤマーダ、ネーコ、リン、ターニャの4名での道中。


 他のメンバーは《空間魔法》内の《マイホーム》で休憩中。


 魔力と知識の高いネーコが《空間魔法》内を快適な環境として整備したので、北国(そと)での旅のPTメンバーを最低限に絞り、メンバーの疲労を最小限にしていた。


 《マイホーム》は既に2棟目。

 手狭になってきた初代マイホーム

 リンが《空間魔法》内に1棟新築していたのである。


 (ちな)みに、間取りは10SSLLDK。



 ヤマーダは《空間魔法(マイホームぐみ)》を(うらや)みつつ、タラタラと歩みを続けていた。


  いまだに、ジャングル


  魔物はゴブやらスラやら


  あー、飽きた

  もー、飽きた


  早く《マイホーム》に帰りたい!



 先行して索敵をしていたリンが戻ってくる。


「…ヤマーダ、(フィルドン)に着いたみたい」(リン)

「えっ! やっと着いたのかっ!」(ヤマーダ)

「…何故か…入り口に人がたくさんいるけど」(リン)


  何で人がたくさんいんの?


  まぁいっか


  (みんな)

  《空間魔法(マイホーム)》から

  出てきてもらわないと


「ネーコ、《空間魔法》って秘密にすんだろ?」(ヤマーダ)

「当然」(ネーコ)


「だったら、とりあえず全員一緒に街へ入ろう」

「確かにそうね。分かったわ、ちょっと伝えてくる」


 《空間魔法(マイホーム)》からルル、サリア、クロード(人化)が出てくる。



 ヤマーダ達が街に近づくにつれ、歓声が聞こえてくる。


「「「「わーーーー!」」」」

 ちょっとした地鳴り。


 どうやら歓声は街の入り口だけでなく、街中(まちなか)からも聞こえてくるようだ。


「うわぁ、なんか恐ぇーなー、あれって俺達に向けられてるよな?」(ヤマーダ)

「せやろなぁ」


  一体全体、何の騒ぎ?


「アタイは、(いくさ)支度だと思うよ!」(ルル)

「…敵意は感じない」(リン)


  …ルル

  …明らかに戦いの空気感じゃねーから


「考えてもしょうがないわ。さっさと行くわよ」

 歓声に身構えていたヤマーダ達に比べ、ネーコは何食わぬ顔で先導する。


ドォォォォッ!

 近づくほどに大きくなる歓声。


「あれっ、絶対ヤバいって!」(ヤマーダ)

「何言ってんの! サッサと行くわよ!」(ネーコ)


 200m先からの歓声に、及び腰のヤマーダ。

 無理やり手を引っ張り、ネーコは堂々と進む。


  怖い!

  あの(エルフ)達、怖いよーー!


「…緊張してきた、サリアちゃん」(リン)

「リンちゃん! そんなん()うたらアカンッ!」(サリア)

 二人にも緊張が伝染する。


「なかなか熱烈じゃな」(ターニャ)

「これは興奮してくるな!」(クロード)


 100m先から割れんばかりの歓声。


  もうダメ、帰りたい!


「帰る?」(ヤマーダ)

「帰らないわよ!」(ネーコ)


 とうとう、エルフの群衆は50m先に。


  怖い~!

  ヤ~ダ~!

  もう帰る~!


「帰るーっ!」(ヤマーダ)

「ダメーーーっ!」(ネーコ)

 逃げ出そうとするヤマーダの両脇をターニャとリンがガッチリとホールドする。


 ついに、街の入り口に到着。


グワーーーーーッ!

 歓声は最高潮に。


「静まれーーーーい!」

 一人だけ身なりの違う代表らしきエルフの女性が群衆に向かって叫ぶ。


「………」

 あれだけの歓声がピタッと静かになった。


「おぉ、よくぞフィルドンの街にいらっしゃいました。救世主殿!」


ドゥワーーーーーッ!

 代表らしきエルフのお出迎えの挨拶に今迄で一番大きな歓声が起こる。



5分経過


ドワーーーーッ!



20分経過


ガヤガヤガヤ


 歓声の熱も、微熱36.8度に。


「私は代表のマーシャと申します。救世主殿」


「「「「「救世主?」」」」」


  なんじゃそりゃ

  一子相伝の技なんて、使えませんよ


「何か誤解してない? 俺達は救世主なんかじゃないぞ」

 ヤマーダは《救世主(しょうごう)》の訂正を試みるも、

「何をおっしゃいますか、救世主殿! 皆様の各地でのご活躍、この街にも響き渡っております」


  話が大事になってないか?

  嫌な予感が……


  世紀末覇王と戦わされちゃうの?


「ささっ、こちらへどうぞ!」(マーシャ)

「じゃあ、案内して頂戴」

 偉そうにマーシャに返答するネーコ。


 小動物のように怯えるヤマーダ。


  おいおい! ネーコさん

  なんでそんなに偉そうなの?


  外見は少女なのに…


  アンタ大物だよ!


「ははっ!」

 さらに(うやうや)しく反すマーシャ。



----------

 一同はマーシャに案内され、街の中央にある立派な建物になんとか入れた。


  いやぁ、原宿? 渋谷?

  スッゲーエルフの数!


  こんなに沢山いたら

  エルフの価値が下がっちゃうよ


 来客用の部屋へ通されると、

「ハァ~、やっと着いたか」(ヤマーダ)

「まず、お食事などいかがですか?」(マーシャ)

「アタイ、食べたい」

 ルルが間髪入れずに乗っかった。


  ルル、遠慮って言葉、

  少しは覚えようよ


 既に用意していたのか、一同の前に次々と料理が並べられていく。


  あ~ぁ、

  旨そうな香辛料の匂い!


  えっ? 香辛料?


 一口食べてみると、

「これ、旨いやん」(サリア)

「…本当」(リン)

「アタイはもっと辛くても平気」(ルル)

「何言ってんのよ! もっと甘い方が美味しいに決まってるわ」(ネーコ)

「実に素朴な味じゃな」(ターニャ)


  勝手な事、言ってるよ


 驚くことに、(ここ)の料理はしっかりと味が付いていた。


  まぁ、今迄にない独特な味付けだな!


  香辛料ってより、マジハーブ


  …オレ、この味ちょっと苦手だ

  口ん中、スースーしっぱなしっす


 ネーコ達がエルフ食に舌鼓を打っていると、

「実は折り入って救世主の皆様にお願いがございまして…」(マーシャ)

「ほら、来たで。(たっか)食事(めし)代になるんとちゃうんか?」

 サリアが真っ先にマーシャを牽制する。


「いやいや、皆様のご活躍からしたら、大した事ではありませんよ」(マーシャ)


  これっ

  断れない流れっ



 その後、一同はマーシャからの要望を聞くことになった。


マーシャからの要望は

1.近くの魔物の討伐

2.最近、汚染した水源の調査

3.病人の治療


「ネーコ、どうする? 俺はマーシャ達を手伝ってもいいと思うけど」


  食事、ご馳走になったしなぁ


  オレ的には苦手な味だったけど…


「アタシも構わないわ。今迄、ずっと移動してきたし、休息も兼ねてこの街に滞在するのもいいかもね」(ネーコ)

「…休息に同感」(リン)

「私も同意だな」


  ちなみに、最後に意見した

  イケメン俳優は、クロードさん


  ジャングルにウンザリして

  最近《人化》している


「サリア達はどう思う?」(ヤマーダ)

「飯代だけやったらえぇよ」(サリア)

「強いヤツと戦える?」(ルル)

「わしは(あるじ)に従うぞ」(ヤマーダ)


  ルルだけ論点、ずれてるけど

  皆、OK ってことね


「マーシャ、依頼の件、受けさせてもらうよ」(ヤマーダ)

「ありがとうございます。流石(さすが)は救世主殿」(マーシャ)

「その《救世主》ってヤツ、()めてね」(ヤマーダ)


 マーシャはニッコリ微笑んでいるが、《救世主》呼びを止めそうにない。


「で、この街ってどこか泊まれる所ってあるの? できれば良い感じの宿屋を教えてもらえると助かるんだけど」(ヤマーダ)

「そんなことでしたら、どうぞ、この私の家にお泊まりください」

 気さくに泊まることを薦めるマーシャ。


  いやぁ、

  あのパクチーみないな料理はちょっと


「できれば宿屋を別に…」

 ヤマーダが言い終わる前に、

「さよか!」(サリア)

「…それ、助かる」(リン)

「あの料理、教えてほしい」(ルル)

「アタシ、ヤマーダと一緒に寝るから」(ネーコ)

 女性四人が賛成してしまう。


「私は《空間魔法(いつもの)》が良いのだか」(クロード)

「そりゃそうですよねぇ、俺も…」(ヤマーダ)

 サラッとクロードに便乗するも、

「じゃ、決まり! マーシャはん、よろしゅう頼むわ」(サリア)


  何、勝手にまとめてんだよ!

  あのハーブ料理、今後も食べんの?


  ルル!

  あの料理、

  絶対、習うな、作るな、食べさすな


「ご遠慮なく、ご自宅と思って気軽に生活なさってください」(マーシャ)

「…あ、ありがとう、マーシャ…宿を探す手間が省けたよ。でも、俺、寝相悪いし…」(ヤマーダ)

 (ちっ)さい声の返答、最後の足掻(あが)きを添えて。


「ほな、行こか。ってどこや?」

 マーシャに案内されて、サリアが来賓用の部屋へ行ってしまった。



 こうして、ヤマーダ達はフィルドンに滞在することとなった。


 ヤマーダは小声でネーコに、

「“とりあえず俺の《聖水(おみず)》を使って治療の話をしてみるか?”」

「ヤマーダは何にもしなくて大丈夫よ。ここはアタシの《回復魔法》の出番なんだからね! “後、《空気使い》は極力秘密よ!”」

「ネーコがそう言うなら、分かったよ」(ヤマーダ)

 あまりのやる気に、頭を撫でて落ち着かせる。


  よ~し、よし、よ~し、よし


「マーシャ、治療が必要な患者さんって、どのくらいいるんだ?」(ヤマーダ)

「100人程度ですね」(マーシャ)


  100人?


「結構多いじゃない」(ネーコ)

 マーシャの答えは、ネーコの予想の斜め上だ。



----------

北国ゲンク首都フィルドン〈治療院〉


PT

ヤマーダ、ネーコ(人化)、リン、

マーシャ(臨時)


 まだ夕食には早かったためヤマーダ、ネーコ、リンの三人はマーシャの案内で、依頼の一つ「病人の治療」の現状を確認することにした。


 現在、患者達は街の北にある治療院と収容棟の二ヶ所に隔離されているらしい。


 とりあえず、今日は治療院に訪れてみる。


「直接見ると、思っていたよりずっと酷いな」(ヤマーダ)

「まぁ、こんな数の病人を想定していませんので」(マーシャ)


 治療院といっても、ちゃんとしたベッドのある病院とは全然違う。


 患者達は、建物内の地べたに呉座(ゴザ)を敷いただけの硬い床で寝かされており、隣の患者との距離も近く、当然カーテンなどの仕切りもない。


「ちょっと看るわ」(ネーコ)

「…わたしも」(リン)


 ネーコとリンが患者に会い、直接症状を確認してみる。


「《鑑定》、なるほどねぇ」(ネーコ)

「…《鑑定》…これは!」(リン)


 高熱。

 酷い下痢。

 猛烈な吐き気。


 パッと見、食中毒のようだが、

 顔に湿疹。


 そして、《鑑定》の結果は《毒》だった。


「治療はアタシに任せて」(ネーコ)

 リンが手を出さないように釘を刺す。


 あれからネーコは《魔法使い》に転職し、職レベをマスター。

 更に《僧侶》に転職した。

 そのため、ネーコには《回復魔法》が使える。


 《回復魔法》とは体力の回復の他、状態異常の回復もできる万能な魔法だ。

 しかし魔法のため、使う(たび)に魔力を消費してしまう。

 そして、消費する魔力量は一定と決まっている訳ではない。


 例えば《毒》。

 《毒》には多くの種類があり、《毒性》別で消費する魔力が異なる。

 更に患者個人の免疫力によっても魔力消費量が変化する。

 簡単に言えば、若者よりも免疫力の落ちる年寄りの方が、より魔力を消費するのだ。

 

「とりあえず、この人を回復させてみるわ」(ネーコ)


 ネーコは試しにある患者に《回復魔法》をかけてみる。


「《鑑定》」(ネーコ)

 回復したかどうか、《鑑定》を使って確認。


「うん! 《毒》が回復しているわ」(ネーコ)


“ステータス”


名前・ネーコ

種族・アヤカシギツネ(魔物)

年齢・5歳女


職業・無職(Lv-)、魔法使い(Lv-)、僧侶(Lv5)


レベル・29

体力・53(+10)

魔力・45/73(+30)

………


 ヤマーダがネーコの《ステータス》を確認すると、魔力が 28 減っていた。


  患者はざっと50人

  ネーコの魔力が 103

  一人の治療に 28 消費するとして

  50人で魔力は 1400 だから


  《聖水(おみず)》を 14 回飲めばいいのか


  えっ!

  14 回も!?  



 ネーコはその後、休むことなく治療を続けた。


 そして、魔力が枯渇する度に、周りの患者に気付かれないよう《聖水(おみず)》を飲んで、消費した魔力を回復させる。



 そんなローテーションを十数回、繰り返した。


「ウップ!」(ネーコ)

 流石(さすが)に《聖水》を飲み過ぎて、気持ちが悪そうだ。


  そろそろ、

  ネーコのお腹もタルンタルンだろう


「治療院の病人は粗方、回復したかな。今日はここまでで構わない?」

 そろそろ終了しても良いか、マーシャに確認。


「そうですね。これで、患者の半分は治療できました。明日、残りの患者を治療していただけるのであれば、まったくもって問題ありませんよ」

 ネーコの活躍に、マーシャは満足そうに頷いた。



 ネーコが治療を行っている間、他のメンバーはギルドで魔核の売却をしたり、武器防具屋で装備の補修をしたり、食事を準備したりしていた。



 マーシャの家に帰るとヤマーダは、

「はい、いつもの」


 人数分のコップに《聖水(おみず)》が並々と注がれている。


「「「「「あり(ん)がとう(さん)」」」」」

 皆、《聖水》をゴクリと一気に飲み干し、心身のリフレッシュ。


「明日には治療も終わるでしょうから、明後日には水源の調査に行くわよ」(ネーコ)


「よろしくお願いします」(マーシャ)



 その後、ヤマーダ達は、夕食を食べることに。


「あー! この草の味と匂い、なんとかしてぇー!」


 どうやら、ヤマーダにはマーシャの料理が口に合いそうになかった。


「好き嫌いはアカンでぇ」(サリア)

「美味しいじゃない」(ネーコ)


 そんなヤマーダを知ってか知らずか、女性陣からの酷い仕打ち。


「“(あるじ)、後で《空間魔法(マイホーム)》から何か持ってくるから、今は我慢じゃ”」(ターニャ)

「“なら、普通の料理を頼む”」(ヤマーダ)


  ターニャ!

  心の友よ!!


 ターニャのお陰で、ヤマーダもなんとか挫けずに済んだ。



 その後はマーシャに気付かれないよう、部屋に残るヤマーダ・ネーコ・ルル・ターニャ組と《空間魔法(マイホーム)》に戻るリン、サリア、クロード組に分かれて休息するのだった。



----------

一晩明けて


 マーシャ宅で朝食を摂り、ヤマーダとネーコが治療院に着くと、昨日と同じくらいの患者さんで溢れ返っていた。

北の国編は、数話続きます。

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