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《空気使い》って?  作者: 善文
41/134

ヤマザルの動く村

今話で序章完結です。

 村に辿り着いた女性は気が抜けたのか、着いて早々気絶してしまう。


 すると、女性の身体が(にぶ)く光り、スルスルと縮んで、キツネの姿になってしまった。


『“この人、アタシと同じ”』

 ネーコの呟き。


  何?

  モノホンのアヤカシギツネってこと?


  ネーコもモノホン…だよね?


 急いで駆け寄ったネーコは《回復魔法》でキツネの傷を回復させ、

何処(どこ)かでゆっくり休ませて!』


「確かにそうだ。村長、何処か休める場所を!」


『とりあえず、おらの家で休ませるべ!』

 村長は自宅へ気絶したキツネを連れていった。


 ヤマーダも《ヤマーダハウス》に連れていきたかった。

 何故ならどう見ても、ネーコに関係している事は明らかだったからだ。


  《ヤマーダハウス》は狭いからなぁ


「今は村長宅でゆっくりさせてあげよう」

 ネーコに優しく声をかける。


 下がった気分を盛り上げるように、

「これから、みんなで宴会だよ!」

 ヤマーダが盛大に宣言。


『そ、そうだよな』

『折角、《オークチーフ》が生まれたんだ』

『騒ごうぜ!』

『ィヤッホーーッ!!』

 水を刺されていた村人も、再び盛り上がりだした。



 料理が運ばれると、宴会も最高潮に、

『鳥、うめーっ!』

『狼、最高ーっ!』

『サル食いてーっ!』

『鳥、旨いべぇ!』

 舌鼓を打つ村人達。


 旨いのも当たり前。

 ここ最近、村の近くで岩塩を発見したからだ。

 ヤマーダの《資源採掘》というスキルのお陰なのは、言うまでもない。



「これから、旨い(モン)で天下取るぞー!」(ヤマーダ)

『『『『取るべぇーー!!』』』』(村人達)



 オーク村の料理もそう遠くないうちに有名になるだろう。



----------

魔国領オーク村〈牧場〉


「元気にやってるか、(みんな)?」


 ある程度で宴会を切り上げたヤマーダは、馬と牛の様子を見に来ていた。


『おぉ! ヤマザルか! ここはなかなか快適だぞ』

『えぇ、ホントに』

 馬の夫婦と会話する。


「ヤマザルじゃなくて、ヤマーダですよ。シュバルツさん」


  雄馬はシュバルツ

  雌馬はクリスティ


  名前を付けるのに、

  なかなか苦労したよ

  全然、納得してくれなくて


  シュバルツはオレ、

  クリスティはルルが騎乗する愛馬!

  …になる予定



  ステータスはこんな感じ


名前・シュバルツ

種族・ウマ(動物)

年齢・6歳男


職業・無職(Lv-)


レベル・3

体力・57

魔力・3

攻撃・3

防御・3

知識・3

敏捷・27(+10)

運・14(+20)


装備・なし


魔法・なし


スキル・体力適性(Lv5)、宿泊回復(Lv-)

    時間回復(Lv-)、スキル補正(Lv-)


所持金・0G

所持品・なし



名前・クリスティ

種族・ウマ(動物)

年齢・5歳女


職業・無職(Lv-)


レベル・2

体力・45

魔力・2

攻撃・2

防御・2

知識・2

敏捷・25(+10)

運・13(+20)


装備・なし


魔法・なし


スキル・体力適性(Lv4)、宿泊回復(Lv-)

    時間回復(Lv-)、スキル補正(Lv-)


所持金・0G

所持品・なし


  まぁ、動物だし、能力は期待していない


『だが、ちと狭いのう。もう少し広くならんか?』

「えっ! 俺ん()より広いですよ」


『お前、私達にもっと強くなってほしいんだろ?』

「えぇ、まぁ」


『なら、私達が駆け回れるようにせい。(あと)、鞍と蹄鉄もじゃ! 妻が先で構わんからな』

『あなたっ! ポッ!』

 仲睦まじく寄り添っている。


「はいはい、分かりました!」


 馬の活動範囲は広い。村の囲いでは狭すぎたのだ。



「で、キミ達はどう?」

 今度は牛夫婦に語りかける。


『おぉ! ヤマザルさん! 快適ですよ』

『えぇ、とっても!』


 お気づきになったろうか。

 この村のほとんどで、ヤマーダはヤマザルと呼ばれている。(残りはサルと呼んでいる)


 サリア達が未だにヤマーダを発見できないのは、オーク村に農耕、建築を伝えた人物がヤマザルだと聞かされていたからなのだ。


「何か注文、あります?」

『できれば、私達にも名前をいただければ…』


 来て早々、馬夫婦には名前を付けたが、牛夫婦には付けていない。


  牛、食べるかもしれないし…

  名前があると愛着が…


 牛夫婦は悲しそうな目で、ヤマーダを見つめている。


  …分かった、分かったよ!


  付ければいんでしょ!

  付ければ!!


「どんな名前がいいんですか?」

『雄々しい!』(牡牛)

『エレガントな!』(雌牛)


「…じゃあ、ベンケイとヨウキヒなんてどうですか?」

 投げやりに歴史上の人物を挙げる。


『ベンケイ…ですか』

『ヨウキヒ…ねぇ』

 夫婦共に渋い表情。


『ヤマーダ、そんな名前じゃ可哀想だよ』(ネーコ)

「もっと、カッコいいのがいんじゃない?」(ルル)

『アッシは良いと思うっすけど…』(イズム)

『ヤマー、早く家に帰ろうよ』(マサオ)

 勝手なことを言う仲間達。


  雄々しいね…

  ゴンザエモンとかタロベエとか?


『シュバルツさんって、良い名前ですよね』(牡牛)

『私はクリスティさん、好きですわ』(雌牛)


  シュバルツ?


  大変だったんだよ!

  ひねり出すの!


  要望はそっち系なのか…


  牡牛は…

  ……フィリップ

  ………エドガー

  なんてどうだ?


「フィリップ、エドガーなんてどうです?」

『なんかグッと来ないですねぇ』


  生意気な!


  じゃあ!

  …英国の獅子王が

  …リッ…リチャードだ!


「じゃあ、リチャードなんてどうだ? 嫌ならポチにする!」

『リチャード! リチャードですか! グッと来ました!』


『旦那、ポチは可哀想っすよ』(イズム)


 牡牛はリチャードに決まった。



『私も良い名前をお願いします』(雌牛)


  え~と…

  クリスティに近く感じ?


  …クリスティーン

  …クリスティーナ

  …クラリス

  クラリスが立った!


「じゃあ、クリスティーン、クリスティーナ、クラリスなんてどう?」

『やたらクリスティさんに似てますよね…』(雌牛)

『可哀想!』(ネーコ)

「もっとカッコいいヤツ!」(ルル)


  うるせぇなぁ!

  …

  ……

  女王ならどうだ! エリザベス!


「エリザベス! 嫌ならハナコ! どっちかだ!!」

『ビビッと来ましたわ! ハナコでお願いします!』


  そっちーっ!


  まぁ、ビビッたんならいいか…


 雌牛はハナコに決まった。


 ヤマーダはある計画があった。

 それは《空間魔法》内に牧場を作ること。


 今後旅をするのに、馬は必須。

 にもかかわらず、魔国領の地形は岩山ばかりで雑草すら少ない。

 馬の食事場を《空間魔法》の中に作れば、いつでも食させることができると思っていたのだ。


 この判断は正しい。

 そもそも魔国領では馬の利用を(ほとん)どしないのだ。


 もっぱら大トカゲ、通称ドラゴンが利用されている。



 ヤマーダが栽培している《ヤマーダ草》は、牧草とホウレン草の中間のような植物で、人、馬両方が食べることができる。


 味は、エゴ味の少ない小松菜。


「皆さん、ここの《ヤマーダ草》はどうですか?」(ヤマーダ)

『美味しいですよ』(リチャード)

『えぇ、好きです』(ハナコ)

『嫌いではないが、もっと甘い方がいいな』(シュバルツ)

『私は香りも足して欲しいですね』(クリスティ)


  なるほど


「リチャードさん達はどうです? もっと甘口でフルーティーな感じは?」

『そうですねぇ…私は今のが良いですね』

『私も』


  そうなると、馬と牛で

  《ヤマーダ草》の味を変えるか…


『アタシ、甘口!』(ネーコ)

「アタイ、辛口!」(ルル)

『アッシはどっちでも』(イズム)

『ヤマー、帰ろうよ!』(マサオ)


  ネーコとルルも参戦すんの!


  それに辛口って!


  …まぁ、作るけど


「分かりました。《品種改良》に数日かかりますので、出来次第、試食、お願いしますね」


『任せろ!』

『待ってるわ!』

『激甘もいい!』

「じゃあ、アタイ激辛!」

『アッシは何でも』

『ヤマー、帰ろー!』


 そんな感じで牧場を後にした。



----------

3591年5月13日(翌日)


魔国領オーク村〈ヤマーダハウス〉


 ヤマーダが眠気眼(ねむけまなこ)を擦りつつ起き上がると、全く見ず知らずの少女が抱き付いてきた。


「ヤマーダ、お早う!」

「う、うぅ…うん、お早うーーーっ!」

 ビックリしてベッドから飛び起きる。


「何! 誰!?」

「ネーコだよ! ほらっ」

 ネーコは元のキツネスタイルに変身する。


「な、何で!」

『昨日、あの人がやってたから、《人化》』

 再度、少女姿に変身する。


「とりあえずネーコ! 元に戻って!」

『どうして?』

「いいから!!」

 ヤマーダが驚くのも無理はない。

 ネーコは一糸纏(いっしまと)わぬ姿だったのだ。


「なぁネーコ。《人化》したいの?」

『うん! ヤマーダと一緒がいい!』


  ルルの予備の服を行商人(ゴブジ)から

  買ってたよなぁ


「ルル、予備の服をネーコに用意してくれるか?」

「えーっ! あれ、アタイのだよ~」


「ルル、頼むよ」

「う、うん、しょうがないなぁ、持ってくるよ」


 不思議とネーコとルルの服のセンスは被っていない。

 ネーコはヒラヒラの付いた可愛い感じが好きで、ルルはシックで差し色の入った上品な感じが好きなようだ。


 当初、ゴブジから買った服は、オシャレより機能性を重視していて、ルルの好みではなかった。

 そのため、ヤマーダが《防具職人》《染織職人》によって、ルル好みにカスタマイズしてあげた。


 今では、ルルも愛着が湧いてきている。


「はい! これ!!」

 明らかにルルの機嫌が悪い。

「また、作ってやるからな」

「やったー! 絶対だからね!」

「任せておけって!」

 物で釣るヤマーダ、15歳。(本人は14歳)


  キャバ嬢に貢ぐオッサンの気持ちが

  少しだけ分かったよ


 ルルの機嫌が治ったところで、ネーコの着替えタイムが始まった。


  どんな感じなのかなぁ


  ちょっとだけルルより小さいからなぁ


  ドキドキ、ワクワク


「ヤマーダ、どうよ!」(ネーコ)

「えっ!」


 あんだけ焦らして、囚人服のようなボーダーの入った作務衣のような服を着ていた。


「こんな服あったか?」

「あぁ、ゴブジがくれたの。ヤマーダにカスタマイズしてもらった服はあげられないもん!」(ルル)


  おぉーー!


  いつも、殺し屋のようなルルが

  「もん」って言ったよ!

  「もん」って!


  かぁいぃなぁー!


  じゃあ、しょうがないな、ネーコ!


「ヤマーダ! 後でシマシマを花柄に代えてね! ヒラヒラも付けてほしいの!」(ネーコ)

「パーパに任せておきなさい!」

「パーパって?」(ネーコ)


「さっ、朝食、朝食!」

 軽く無視するヤマーダだった。



----------

魔国領オーク村〈村長宅〉


「あのぅ、私、ノーラといいます。どうか私達を助けてください!」

 昨日助けた女性(ノーラ)は、村長宅で顔を会わせるなりネーコにすがりついた。


 人の姿に戻って?いる。


「あのぅ、コイツがネーコって分かるんですか?」(ヤマーダ)

 ネーコは少女の姿をしている。


 昨日まで《人化》していなかったので、この少女がネーコと知っているのは、ヤマーダ達以外にはいないはずだった。


「はい、判ります。もうご存知と思いますが、私の正体はアヤカシギツネです」(ノーラ)


  だよねぇー


「私は《西の里》というアヤカシギツネの里の(おさ)の娘。訳あって今は別の場所で暮らしておりました」


  男と駆け落ちしたんでしょ


  愛の逃避行ってヤツ!

  韓流で見てたよ、ママーンがね


「私には愛する主人と愛娘がおります」


  子供もいるのかよ!


「その二人が魔族に連れ去られてしまいました!」

「ま、魔族だって!」(ヤマーダ)


  異世界だし、

  いてもおかしくないよな…魔族が!


「で、俺達に助けて欲しいってことなの?」

「はい!」


「どーして俺達なのよ?」

「それは…同じ宿命を宿しているからです!」


「誰が?」(ヤマーダ)

「あなたが!」

 ノーラはネーコを指差す。


「誰と?」(ヤマーダ)

「あなたです!」(ノーラ)

 今後はヤマーダを。


「やっぱり!!」

 ネーコの喜びと裏腹に、


  何でオレっ!


  まだこの世界に来て40~50日で

  駆け落ちすんの、オレ!


  無理無理無理無理!


  オレ未成年だし!

  ネーコはもっと未成年だし!!


「あなた、センターの方ですよね?」(ノーラ)

「そうなのか?」(ヤマーダ)

「よく分からない」(ネーコ)


「あの魔族は、いずれ魔族の脅威になるからアヤカシギツネを滅ぼす、と言ってました! じきに《西の里》も襲われてしまいます! どうかお願いです! 主人と娘を! 里の(みんな)を救ってはくれませんか?」(ノーラ)


「な、何で俺達なんですか? 他に頼める方はいないんですか?」(ヤマーダ)

「それはあなたが伝説の《空気使い》だからです」


  へっ?

  伝説の《空気使い》!?


「何で俺のスキルが分かったんです?」

「それは私が《鑑定》スキルを持っているから」


  あれ?

  こんなことが前にもあったような?


「て、何で《空気使い》だったら、俺があなた達を救うんですか?」


「それは《空気使い》が、伝説の《救世王》様ですら持ち得なかったスキルだからです!」


救世王・

世界の暦が始まって以来、誰にも越られたことのない能力を持った歴史上最高の人物。

世界4大陸を平定し、平和と反映をもたらすと同時に消息不明。

現4大陸の3大王室の始祖。

しかし、実在したか疑われている存在でもある。


「我らアヤカシギツネの祖先は、救世王様に()えていた妖狐です。救世王様は(おっしゃ)ったそうです。『我ですら持ち得なかった《空気使い》を持った若者が、未来を救う』と! それはあなた様です、ヤマーダ様!」


  ウッソーーん!


  オレ、

  クロビからここを旅行先に薦められた

  ただの観光客だよ


  それに《空気使い》ってスキル

  オレが選んだモンじゃないし!


「ヤマーダ! 助けよう! で結婚…」(ネーコ)


  今、結婚って…


「アタイ、魔族って奴らと戦いたい!」(ルル)


  お前はどこの戦闘民族だよ!


  おら、ワクワクすっぞっ!

  って感じなの?


『スー、スー…』(イズム)


  こんな時でも寝てるし


『ヤマー、遊ぼー!』(マサオ)


  マサオは

  いつまでもそのままでいてくれ!


「ノーラさんの話は分かったけど、ちょっと待ってくれ」


 ヤマーダは村長にノーラとの経緯(いきさつ)を掻い摘まんで説明する。


 現在この村では、供用語(人族、獣人など)、オーク語、アヤカシギツネ語、スライム語、マンティス語の5か国語が使用されており、《言語理解》を持つヤマーダが通訳している。


 行商人(ゴブジ)との交渉にヤマーダが同席した理由もそこにある。


 以前、訪れた《ヤマーダーマヤ》の構成員は供用語の他に、ゴブリン語とオーク語を喋っていた。



 実は、魔物が互いを殺し合う理由の一つに、言語の壁があるのだった。



『ヤマザル様は、この村の《大村長》だべ! この村を離れることは許されないべ! アヤカシギツネ様には悪いけんど、無理な話だべ』(村長)


  えっ?

  いつ《大村長》になったの、オレ?


「俺がこの村を離れるのはダメだってさ」(ヤマーダ)

「どうして、この村の村長がヤマザル様に命令するんですか? ヤマザル様には私達を助けるという崇高な義務があるはずです!」(ノーラ)


  確かに、村長が決める権利、ないよな


  …っておい!

  ノーラさん、ヤマザルになってるよ!


  それに、何で義務なのよ!?


「ヤマーダはアヤカシギツネを助けるのっ! 決定!」(ネーコ)

「魔族と早く戦いたい!」(ルル)


  ………


「えーと、村長。ノーラさんが言うには、アヤカシギツネを連れている俺が、一族を助けてやるべきなんだそうだ。でどうだろう? マツコも強くなってきたしさ、少しぐらい俺がいなくても大丈夫じゃ…」

『無理だべ! 待望のオークチーフも産まれたばかりだべ! 村が危険になるべ! それにヤマザル様、言ってたべぇよ、天下取るって!』


  確かに言った、言っちゃったよ!


 ヤマーダがウンウン唸っていると、

「じゃあ、村の(みんな)も一緒に来れば?」

 今までの騒ぎが嘘のように、何事も無かったような冷静なネーコの声。


「どうやってだよ? 村ごと動かすのか? そんなの無理だろ?」(ヤマーダ)

「違うの。村を動けるようにするの」

「どうやって?」


「まだ分かんないの、ヤマーダ。アタシの《空間魔法》の中に村を移転するのよ!」


  村を移転する?


「ちょっと来て!」

 ネーコはヤマーダの手を引っ張ると、周りの皆を連れて《空間魔法》の中に入っていく。


「あれっ?」

 ヤマーダは空き家(円卓会議棟)と菜園(ヤマーダ園)から離れた一角に、全く見覚えの無い建物群があることに気づいた。


「こっち!」

 ネーコは皆を見覚えの無い建物群に連れて行く。


 建物は合計で10棟。

 石造りでしっかりしているが、全体的に造りは荒い。


 ここでヤマーダはあることに気づく。


  ちょっとだけ、

  ヤマーダハウスに似てる!


「これ、マツコが建てたのよ!」(ネーコ)

 すると、建物の一つからマツコが出てくる。


『ヤマザル様、見てくんろ。これ全部、アタイが造ったんだべ!』

 《大工》の職を身につけたマツコの自信作。



 オークは、魔国領においてヒエラルキーのかなり低い魔物だ。


 当然、レベルも簡単に上がりやすい。


 短い期間で、マツコはオークカーペンターに進化していたのだった。


名前・マツコ

種族・オークカーペンター(魔物)

年齢・12歳女


職業・無職(Lv-)、大工(Lv2)


レベル・8

体力・97

魔力・19

攻撃・68(+2)

防御・46(+1)

知識・12

敏捷・43(+10)

運・60(+20)


装備・握りやすいこん棒(攻撃+1)

   つぎはぎのポンチョ(防御+1)

   ボロボロの包帯(攻撃+1)


魔法・木魔法(Lv1)


スキル・耐久(Lv6)、宿泊回復(Lv-)

    時間回復(Lv-)、スキル補正(Lv-)

    建築(Lv1)、増築(Lv1)


所持金・0G

所持品・薬草、腰袋


 マツコは《大工》に進化したことによって、外見が人族に近づいてきている。


『こんだけの建物がある、村の皆もここに住めるべぇよ』(マツコ)

『マツコ、おめえ、いつの間に!』(村長)

 村長も知らなかったようだ。


「ヤマーダ園を広げれば、農作業もできるし、敵に襲われる心配もないわ」

 ネーコが「これ、どうよ!」って顔をして、ヤマーダに頭を差し出してくる。


  …褒めてほしいんだろうなぁ


「よ…よくやったな、ネーコ」


  オレは空気の読める男、ヤマーダ


 ヤマーダは苦笑いしながら、ネーコの頭を撫でる。


「じゃあ、これで魔族と戦えるわね!」

 ルルのテンションがアップ。


「…魔族と戦うかどうかは置いといて、村長、村を《空間魔法(ここ)》に移しちゃって大丈夫?」

『ここなら、敵の襲撃もこないし、最高だべ! 今日からここに住むべぇ!』


「ちょ、ちょっと待ってよ! 急すぎる! せめて収穫してからに…」

『農作物も畑ごと移転するべ!』



 それから7日、《空間魔法》の中への引っ越し作業に追われることとなった。



----------

3591年5月20日


魔国領オーク村跡地


パーティー

ヤマーダ、ネーコ(人化)、ルル、イズム、

マサオ、マツコ、シュバルツ、クリスティ、

ノーラ(人化)


 オーク村人の移住も無事に終わり、シュバルツ達の牧場の移転も完了。


 魔国領のオーク村は消滅し、

 新たに《ヤマザルの動く村》が誕生したのだ。


 この日は、後日、世界規模の祭となる《村誕祭》が5月20日に決まった歴史的な日でもある。



 そしてこの日以降、ヤマザル(ヤマーダ)、ヤマーダーマヤ(旧ヤマーダPT)、魔族(+オーウェン)による三つ巴の争いが始まるのだった。


第四部 完

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