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《空気使い》って?  作者: 善文
3/134

珍道中

  いきなり始まったよ!!!


“ゴブリンからの攻撃”

 2匹のゴブリンが左右に別れて、こん棒で攻撃してくる。


『左のゴブリンの動きが悪いわ、ヤツの腹に攻撃して!』

 ネーコから指示が飛ぶ。


  なんだよアイツ!

  いつの間に樹木(あそこ)の上に!

  

  …けど、なんとなく分かったぞ!


  おっ!

  今のってニュータイプっぽくない?


  貫胴(ぬきどう)の要領で右ボディだ!


『ギャーーッ!』

 左のゴブリンは腹に致命的なボディブローをくらい絶命する。


  うげぇぇぇ~

  手の感覚、気持ち悪いぃぃ


『まだ、一匹残ってるんだから、油断しないの!』


 残ったゴブリンがこん棒を振りかざす。


『最後よ! ヤツにはリーチの長いケリでトドメ!』


  テンションだだ下がり

  息つく暇もないのかよ!


  勢いを付けて、

  前蹴り一発!!


『グキューーッ!』

 ゴブリンが前のめりに腹を押さえて倒れ、絶命する。


「…ふぅ…うぇぇぇーーー」

 ヤマーダは盛大にマーライオンする。


(きった)いわねヤマーダ。でも、よくやったわ』


  お前!

  うっぷ…


  高みの見物してて…

  よく言うよ…


  うぷぷっ…



 ヤマーダの気分が段々治ってきた。


「ネーコ、ゴブリンに気づいたんなら、起こしてくれよぉ」


 ネーコはそっぽを向いて、

『ヤマーダの危機意識を高めてやるために、わざと起こさなかったわ。感謝しなさい!』

「あっそっ!」


  …感謝って


  コイツ、とんでもねーな…


  とりあえず、状態の確認確認ニン


“ステータス”


名前・ヤマーダ

…………

体力・-1/14(+2)

魔力・13(+4)

…………


  体力がマイナスって!

  ほぼ死んでるーーーっ!


  (あっぶ)ねぇーーー!!


  まぁ、一つわかったのは

  ()の数値は別途加算されてるんだな


『ヤマーダ、ゴブリンから武器と服が手に入ってヨカッタな』


  …マジか


  ………


  この服着んの?

  なんかスゲー汚くて臭いんですけど…


  ウェーーッ!


「これ、着んのか?」

『着ないとアンタ、いつまでもハダカザルよ!』


  しょーがねーなー…

  …絶対、何度も洗ってやる

  …何度も…何度も……


 ヤマーダはゴブリンの死体から魔核、こん棒、ボロ布を剥ぎ取り、服は何度も念入りに揉み洗いする。


  いやぁ~こういう時、

  《水》と《火》、《風》が使える

  《空気使い》って便利!


 ヤマーダは念入りに洗濯したボロ布を《風魔法》で乾かし、臭いを嗅いで十分確認してから着てみる。


装備・ゴブこん棒(攻撃+2)

   ボロい布キレ(防御+1)


『ヤマーダ、準備出来たなら出発するわよ!』


 ネーコの指す方向は、来た方向と逆の北を向いていた。



----------

 その後、数度の戦闘と数回の野宿を繰り返すことでお互いのことが判ってきた。


  なんとなく判かって来た

  口は悪いが、実はやさしい、

  ネーコさん


  あと、

  この世界の夜は滅茶苦茶冷える


  毎晩、リアルキツネの襟巻き

  暖かくて…よかった


  …そうそう

  後、魔物を倒すことで

  いろいろな装備も整って来たな


装備・ゴブこん棒(攻撃+2)

   ウサギの毛皮(防御+2)

   腰布(防御+1)


所持金・520G


  この数日で結構な発見があった


1.道具はカスタマイズできる(加工可能)

2.ネーコは物知り(毛皮を鞣す方法など)

3.ゴブリンは手くせが悪い(所持金を入手)


  まぁ、3のお陰で

  少しお金が手に入ってよかったよ


 ヤマーダがここ数日のあらすじをバックミュージック付きでイメージしていると、


“バキッ…”

  ん?


“ドガッ…”

  んん?


『ヤマーダ、この先で戦闘の音がしてる!』

 ネーコからのエマージェンシーコール。


  確かに、

  何か争ってる音が微かにするな…


「丘の向こうからみたいだ。気になるから行ってみないか?」

『うーん…分かったわ、でもアタシが危険と思ったら逃げるからね』

「了解、了解」



 丘の上に立つとゴブリンの群れと冒険者風の少女が戦っている。


  おい、おいっ!

  ゴブが10匹以上はいるぞ!


『ヤマーダ、どうするの?』

「どうするって言われてもなぁ…」


『このままだと、あの娘、殺されるかも』

正直(しょうじき)、冒険者のルールがわかんないんだよ。勝手に助けていいか分からないし…とりあえず確認するか」


  この前、冒険者って連中に

  身ぐるみ剥がされたばかりだしなぁ…



 ヤマーダ達は急いで走りつつ、息をきらしている少女に大きな声で尋ねた。


「助・け・が・必・要・かー?」

 ヤマーダの問いかけに間髪入れず、

「お願いぃー!」


  こりゃあ、結構ピンチっぽいな


「よしネーコ、彼女に助勢するぞ!」

 少女を取り囲んでいるゴブリン群の正面にヤマーダ、左右にネーコが対峙する。


 少女の息づかいは相当荒い。

「ハァ…ハァ…ハァ…」


  苦しそうだな…よし


 ヤマーダは《超美味しい空気》を少女の周りに作り出した。


 すると、少女の呼吸が整いだし、精神を集中させ始めた。


「…いける!」

 少女は小声でつぶやくと、高速に回転してゴブリンの群れを一閃に斬り倒していく。


  よし、オレもやるぞ……


  ………って!

  10匹以上のゴブが全滅してる…


 少女は今までの苦戦が嘘のように、初撃の回転で7匹を仕留め、2撃3撃と左右に袈裟斬り、逆袈裟斬りして2匹を倒していた。


  ちなみに、

  ネーコさんも3匹倒してたよ


『ヤマーダ、アンタ一体何してたのよ?』

「いやぁ~…手を出す前に終わってたんだよ。ゴメンゴメン」

 ちょっとむくれているネーコに謝る。


  しっかし、一度に回転して

  7、8匹倒してたよ


  …彼女、相当強いな!



 少女はゴブリンの死体から魔核を取り出すと、こちらに近づいてきた。


「…助けてくれて…ありがとう」

「どう致しまして、まぁ、俺はあまり助けにならなかったけど…」


「…いいや、あなたが来てから、急に体に力が湧いてきた。…後、キツネさんもありがとう」

『どうってことないわよ(キュウキュキュウ)』

「ネーコもそう言っているし、気にしないでいいよ」

 ヤマーダはさらっと通訳を入れる。


 少しの沈黙の後、不思議そうな顔の少女が

「…もしかして…あなた、動物の言葉がわかるの?」

「まぁ、魔物使いだからね」

 ヤマーダが気楽に答えると、

「…でも…動物と話しているんじゃ」


  なるほどね、

  ネーコを動物と勘違いして…


「まぁ、ちょっと違うね。ネーコはアヤカシギツネなんだよ」

「…えっ! 魔物なの!?」

 少女は身構えるが少しすると、

「…でも、殺気はない…か」

 敵意のないネーコを確認して緊張を解いた。


 少女は何か思案して、

「…私は、リン。…これからノルンに戻るんだけど…いっしょに行かない?」


「俺はヤマーダ。ちなみに俺達は北に向かっているんだけど、ノルンってどっちなの?」

「…それなら大丈夫」

 リンは、ヤマーダ達が来た方角と反対の北側を指差した。


「ネーコ、どうする?」(ヤマーダ)

『北に向かうのなら、別にアタシはいいわよ』


  ネーコさんの了解も取れたことだし


「じゃあ、一緒に行こうか」(ヤマーダ)

「…うん。(良かった。多分ヤマーダって人、元地球人ね。上位のアヤカシギツネを従えてるし、《空気使い》なんて聞いたことがないわ。私の《スキル》がこの人達に着いていけって言ってる)」


 道中、ヤマーダはリンから何故あそこで戦っていたのか尋ねた。


  リンの説明では、こんな感じの流れ

・リン、行商人から護衛の依頼を受ける

・道中、ゴブリンの群れに遭遇する

・行商人を逃がすため、リン(おとり)になる

・ゴブリンの群れが増加

・多勢に無勢

・危ないところ、ヤマーダ達が到着


  これって、結構ヤバくない!?


  行商人を彼女(リン)一人で護衛って…


  この世界ってそんなに塩対応なの!


 ヤマーダはハードモードをネーコに小声で確認。

「“ネーコ、冒険者の仕事ってそんなに厳しいのか?”」

『あなた達、サルのことなんてよく分からないわ。でも、ヤマーダに似て、リンって娘もバカなのかもね』


  ネーコさん、相変わらずの毒舌


  …でも、

  冒険者って思ったよりも危険なのか


  これからは、気をつけて旅をしないとな


「…気をつけて…前の方に魔物がいる!」

 警戒モードのリンからの報告。


『あれはゴブリンチーフ!(キュウキュキュ!)結構強いから気をつけて!(キュウキュキュウキュ!)』

「リン、ネーコが、結構強いから気をつけてって言ってる!」

「…任せて、大丈夫よ」


  本当に?

  まぁ、オレよりは強いんだろうけどさ


『ヤマーダ、さっきリンにしたように、アタシとリンの周りに《空気》を作ってみて!』


  あぁ、息を整えるヤツね


 ヤマーダはネーコとリンの周りに《超美味しい空気》を作り出す。


「…この感じ、いける!」

『やっぱり!』

 リンとネーコは何かを感じとり、ゴブリンチーフと戦い始める。


 すると、戦いは一瞬で終わった。


  えー、

  ゴブリンチーフとの戦いを実況中継します


  ゴブリンチーフの攻撃をかわして

  ネーコの炎が当たると同時に

  リンの突きが炸裂


  以上、こちら

  解説のヤマーダがお伝えしました



  アンタ達、強すぎじゃないの?


  …本当にゴブリンチーフって強いの?


「…あのぉ…ヤマーダさんは…何か特別なスキルを持っているのですか?(《空気使い》って何なの?)」

「いや、スキルで《超美味しい空気》ってヤツをリン達の周りに作っただけだけど」


 リンとヤマーダのやり取りにネーコが、

『ヤマーダ、《空気使い》の《超美味しい空気》を確認してみて!』

「えっ?…分かったよ」


“超美味しい空気”

超美味しい空気・

この空気を吸ったものは、疲れが癒され、能力値が1.5倍される。


  な、何これ、バフじゃんか!

  1.5倍!!


  これ、スゲーんだけど!


  ついでに


“超美味しい水”

超美味しい水・

この水を飲んだものは、空腹が解消され、体力と魔力が最大値まで回復する。


  「空腹が解消」って

  食事が要らなくなるってことか?


  全快するし…


  ヤバい!?

  《空気使い》スゴすぎじゃねぇ


 ヤマーダがネーコにそっと説明すると、

『ヤマーダ! このことはアタシとアンタ以外には、誰にも話しちゃダメ。当然、リンにも内緒よ、分かった?(リンって娘、アタシの《鑑定》スキルを騙してる感じがするのよ、信用できないわ)』

「…うん…わかったよ」



 リンにざっくりとした説明をすると、

「…この《超美味しい空気》って、好き。…わたし決めた。…ヤマーダのパーティーに入れてもらえない?(やっぱり、この人なんだ! 間違いない!!)」


「…うーん、あのね。このパーティーのリーダーはネーコなんだよね。で、まずネーコがいいって言わないと。でさ…ネーコはどう思う?」

『別にいいんじゃない。(キュウキュウキュ。キュウ、キュウキュキュウ)“(仲間にすれば、リンの正体も判るしね)”』

 ネーコからあっさり了承が下りる。


「ネーコが了解してくれたから、大丈夫だよ。これからよろしくね」

「…うん、これから…ヨロシク」

 ヤマーダに、リンはお辞儀を返した。


“リンからパーティー登録の申請がありました”


  了解っと


“リンがパーティーに加わりました”

“リンのステータスの確認ができるようになりました”


『“なんだ、そういうこと! リンはヤマーダの同類ってこと!”』

 ネーコのリンに対する不安は、リンのステータスを確認することによって、綺麗サッパリなくなった。


「“…これからよろしく、ネーコ。わたしの《指し示す道》はこれからの旅路に必ず役立つわ”」

 リンはヤマーダに聞こえないようにネーコに告げる。


『“よろしくね(キュウ)”』


  おっ!


  よくわからない内に

  二人は仲良くなったみたい


 緊張の解けたネーコが早速、

『《お水》頂戴!』


  ネーコさん…

  アンタ、ホントに自由だね


「じゃあ、出すよ」

 ヤマーダが数日間の苦労の末、作成したお手製の皿に水を注ぎ、ネーコに近づける。

 すると、勢い良く飲み始め、瞬く間に飲み干した。


「リンも飲んでみる?」

「…うん、頂戴」

 ヤマーダが自分用に作ったコップに水を注ぎ、リンに手渡す。


 リンが水を飲むと、

「な、何、この《水》! 滅茶苦茶(めちゃくちゃ)美味しい!」


  話し方が普通になった!


「そう? 気に入ってもらって良かったよ」


 リンは飲み干した空のコップを凝視する。


「…このコップ…スゴい」

「えっ、何が?」

「…歪みが全く無い!」


  …そうなの?


  《空気使い》の練習で作った

  ただの焼き物なんだけど…


「このコップ、そんなに大したものなのか?」

「…(コップ)にそんなに詳しくないけど、…これ、スゴいと思う(このヤマーダって人、こっちに来たばかりなのね…こんなに凄いコップを作れる人なんて、異世界(こっち)には誰もいないわ)」


  そんなもんなのか?


  少しはぐらかすか…


「実はこの前倒したゴブリンが持ってたんだよ、なんなら(それ)、リンにあげようか?」

「…ありがとう、頂戴(…この人、嘘が下手なのね)」

「じゃあ、割れないようにね」

 リンは渡されたコップを大事そうに皮のカバンに入れた。


『そろそろ出発するわよ』

 ネーコの号令で、三人は旅路に戻る。



----------

 ノルンに向かう道中で、ヤマーダはリンから一般常識を教わる。


今いる国・エスタニア王国

首都・ノルン(今向かっている)

年齢・15歳で成人

仕事・大半は親の家業を継ぐ


  ちなみに

  リンは16歳で

  家業は長女さんが継いだそうだ


「…ノルンが見えてきたわ」

『へぇ、結構大きな街ね(キュキュウ)』

「よっしゃー、野宿からの解放だぁ!」

 テンション爆上がりのヤマーダ。


『ヤマーダ、アンタは余計なことを喋らない。リンに任せるのよ!』

「分かってるって。あぁ、これから街に入るし、ネーコ、街の人が魔物(キミ)を警戒するかもしれないしさ。キツネの襟巻きの真似してくれないか?」

『しょうがないわねぇ』

 いつもヤマーダと一緒に寝ているため、ネーコの襟巻きの真似も(どう)()ってきている。



 ヤマーダ達は街の入り口に到着する。


  どうせ、また例の水晶玉なんだろう!


 門番の二人から声を掛けられる。

「ノルンに入るには、確認が必要だ! 身分証を見せるか、水晶に手を乗せろ。(あと)、水晶を使うなら通行料として500G頂く」


  ここは500も取るのかよ!


 ヤマーダとリンは別々に500G支払い、水晶玉に手を乗せる。


 すると、ヤマーダの水晶玉が赤く光った。


  赤い点灯は止まれの合図?


  えっ?

  ちょっと!?


  い、いったい、何なの!!


「お前はこっちに来てもらうぞ!」


 連行される宇宙人のように、二人の門番に拘束され、足をブランブランさせるヤマーダ。


「これって、どーいうことーーーっ!」


続く

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