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《空気使い》って?  作者: 善文
23/134

御用商会

ランドン商会との契約後


《空間魔法》マイホーム〈リビング〉


ヤマーダ、ネーコ(人化)、リン、サリア、

ルル、ターニャ(人化)、エル(人化)、イズム、

モフリン


 商人の毒気にやられたヤマーダは《空間魔法(マイホーム)》でまったりモフモフリンして解毒中だ。


 そんな中、


  満場一致でランドン担はサリアに…

  まぁ、当たり前か!


  そんな商売人サリアから相談があるの?


「ヤマーダはんは、ウチらの懐事情を知っとんのか?」(サリア)

「う~ん…あんまり知らないけど、結構稼げているじゃないの?」(ヤマーダ)


「ハァ…分かってへんなぁ…」

 サリアが大きなため息をつく。


「全然やで! 全然!」(サリア)

 ガバッと前のめりにヤマーダへと迫る。

「えーっ! どうしてさ! 俺達ってオーガチーフも倒せるほどのパーティー(PT)じゃんか!」

 ヤマーダはちょっとキレかかっている。


「あんな、ヤマーダはん。冒険者は依頼を受けてなんぼの商売やで。例えば、オーガチーフの魔核の売値は7,200G、円換算やったらたったの72,000円やん」(サリア)


  すぐ、日本円に換算したよ


「これがギルドの討伐依頼やったら1,500,000Gは固い話や。つまり、1,500万円にはなるんやで」(サリア)

「うっそ! そんなに貰えるのか?」(ヤマーダ)


  なんじゃそれっ!

  ギルドボッタクリか!


 すると、リンが横から説明を始める。

「…冒険者は死と隣り合わせの仕事。…当然、強い魔物の討伐ともなれば…依頼額もそれなりになる」

「せやで」(サリア)


  へぇ~


「実はさっきギルドで魔核を換金してもらったんやけど、あんだけ強敵の魔核を仰山(ぎょうさん)納めて、いくらやったと思う?」(サリア)

「7万くらい?」(ヤマーダ)


「…たったの10万Gや」(サリア)

「ヤマーダ! …サリアちゃんの答えを…下回らないで! …驚きが減っちゃう!」(リン)

「…そう言われてもなぁ」(ヤマーダ)

 ヤマーダ的には当てるつもりで、例え話の10倍をベットしたのだが…


「…円換算やったら100万円や、メッチャ少ないねん!」(サリア)

 サリアは低報酬と肩透かしのヤマーダ解答で、2倍ガッカリと肩を落とす。


  サリアって、

  お金ってなるとめっちゃ熱いよな!

  ゲキアツだよ!


「…まぁ、ウチらのPTは《空間魔法(ここ)》を使(つこ)うて自給自足しとるからえぇんやろけど、他の冒険者やったら準備費用と討伐後の武器修繕だけで赤字やん。こんなんやったら、冒険者、廃業せなしゃあないで」(サリア)


「…ヤマーダ、わたし達のPTはSランクとしての依頼を…しっかり受けるべきよ。…そうしないと…他の冒険者に悪影響を与えるわ」(リン)

「…そんなもんかねぇ」(ヤマーダ)

「そんなもんや」(サリア)


 ヤマーダがこの世界を把握するのは、いつのことやら…。



----------

翌朝


北国ゲンク首都フィルドン〈南入口〉


PT

ヤマーダ、ネーコ(人化)、リン、サリア、

ルル、クロード(人化)、ターニャ(人化)、

エル(人化)、イズム(人化)、モフリン


「では、これで失礼します」(ランドン)


 ランドンは《森の狩人》の護衛で《ノルン》へ帰ると言っていた。


  また、死んだ目をしてるよ…


「「「「…ハァァ……ハァァァ~…」」」」

 セリア達は虚ろな目で雲を眺めている。


「ランドンさん、俺達は南の村々への用事が済んだらエスタニアに戻るんだけど…」(ヤマーダ)

 セリア達が一斉に期待した眼差しを送る。


「ランドンさんも同行します? ついでになりますけど、護衛しますよ」(ヤマーダ)


「えっ! よろしいんですか?」(ランドン)


「まぁ、塩を早く持って帰りたいなら別ですけどね」(ヤマーダ)

 今朝、フィルドンに預けていたことになっている馬車から、ランドン商会に塩を納品していた。

 そのため、商会としては仕入れが無事に終わり、ノルンへの帰路へと目的地が変わっている。


「では、同行させてもらっても構いませんか?」(ランドン)

「皆、別にいいよね?」

 ヤマーダが確認すると、

「「え~!」」

 ネーコとルルが不満を口にした。


 ヤマーダはネーコの頭を撫でて、機嫌を直すモードを発動。


「ウチはかまへんけど」

 しらっとサリアが同意する。


  今だ、ここしかない!

  ここでサリアを加勢だ!


 ヤマーダはチームの意見が分かれると俄然やる気になるリーダー気質に目覚めていた。


「ねぇ、サリアが案内役を買ってくれるって言ってるしさ、ネーコとルルも我慢してよ」(ヤマーダ)

「…あのぅ、私どもはそんなに皆さんから嫌われておりますか?」

 申し訳なさそうにランドンが伝える。


  今、大事な局面なんだよ!

  部外者が茶々入れんな!


「ウチのPTは、あまり縛られるのが嫌いなメンバーなんですよ」(ヤマーダ)

 言葉少な目にランドンにフォローを入れる。


「“しょうがないわね。でもサリア、アタシはマイホーム使うから!”」(ネーコ)

「“アタイも!”」(ルル)

 小声の二人。


 ネーコとルルにとって、他人と同行する旅は野宿を意味している。

 野宿が嫌な二人には、ランドン商会との同行は選択肢に入っていない。


 つまり、ランドン達の監視役が必要となるのだが、ネーコ達は「サリアにやらせる」と暗に伝えていた。


  よし、山が動いた!

  追撃だ!


「“じゃあ、俺もサポートするよ、サリア”」(ヤマーダ)

「“う~ん…それならしゃーないか” せやったら、決まりやな。 “ヤマーダはん、ウチもマイホームは利用するで”」(サリア)


  えーっ!

  お前、さっき同意したじゃん


  …はぁ~


「了解、了解」(ヤマーダ)


  ミッションコンプリート!

  オレって、キレッキレだな。


  …決まった!!


 メンバーの意見を上手くまとめることに成功したヤマーダが、空を見上げ悦に浸る。


「…旦那、つまんないことにガンバるっすね」(イズム)

「イズム君、チミも大きくなったら分かるようになるさ」(ヤマーダ)

「…そうっすかねぇ…」(イズム)


 そんなやりとりに、ターニャは暖かい眼差しを向けていた。



「では、南の村々に出発よ!」

 気を取り直して、ネーコの号令が響き渡る。 

「救世主様、ありがとう」

「また来てください、聖女様」

「「「わーっ!!!」」」

 いつの間にか、街の人達が集まってヤマーダ達を見送ってくれた。


 フィルドンの南門を抜ける一行。


「では私達は当分、《フィルドン》で活動します。皆様、ランドン様をよろしくお願いします」(セリア)

「セリア達も気をつけて」(ヤマーダ)

「私の馬車をくれぐれも頼むぞ!」(クロード)

 命の次に大事な馬車をしっかりとセリア達に依頼している。


 セリア達は別れの挨拶をして、街へ戻って行く。


  セリア達も護衛でエスタニアに

  戻らない方が気楽なんだろうなぁ


 4人中3人エルフの《森の狩人》にとって、人族中心の《エスタニア》よりもしがらみの少ない、ましてエルフ達の故郷である《ゲンク》の方が活動しやすかった。


 実際には、エスタニア地域の調査を《蒼天》に引き継げたことが一番の理由であった。



----------

数時間後


北国ゲンク南部地方〈道中〉


 ヤマーダ達は特産品問題の確認をするため、フィルドンから南西の村へと向かっていた。


  な…なんだ…ランドンさん


  矢鱈とこっちをチラチラ見てくんだけど

  …ホモじゃないよな?


 ランドンは覚悟を決めたのか、恐る恐るヤマーダに話しかける。

「ヤマーダさん達、皆さんが身に付けられている装備なんですが…」

「はい、何でしょうか?」(ヤマーダ)


「それはオーダーメイドの逸品ですよね。腕の良い武器職人と防具職人の知り合いをお持ちなんでしょうか?」(ランドン)


  何言ってんだ?


  オレのって、

  大半が(きったな)いゴブリン布が原産の

  ゴブクロ印の装備なんだけど…


  加工は普通に

  《武器職人》と《防具職人》職に

  決まってんじゃん!


「ランドンさん、それは…」(ヤマーダ)

「さっすが商会の会長はんともなると、目の付け所がちゃうなぁ~」

 旨い具合、サリアがヤマーダの言葉を遮った。


「とすると、やはり皆さんの装備は…。できればそちらの職人の方々を紹介いただけませんか?」(ランドン)

「…せやなぁ…」(サリア)


「“どう言うこと?”」

 ヤマーダが小声でリンに尋ねる。


 ヤマーダにとって《武器職人》と《防具職人》は、当たり前のスキルだった。

 何故、ランドンが職人の話を切り出したのかピンときていない。


「“…ヤマーダは《武器》や《防具》の職人がこの世界にどのくらいいると思っているの?”」(リン)

「“さぁ、それなりにいるんでしょ、普通に”」(ヤマーダ)


 リンが冷めた眼差しを向ける。


「“…よく聞いて! …この大陸には《武器職人》のスキル持ちが…一人だけいるわ。…そして《防具職人》のスキル持ちは…誰もいないの”」


  えっ!?

  それって


「“たったの一人! …ちょっと待ってくれ! この世界の職人って、そんなに少ないのか”」

「“…ちょっと違うの、…職人はそれなりにいるわ。…でも《職人》職はほとんどいない。…それってつまり…”」

「“ギルドで簡単に転職できない…ってことか?”」

「“…そういうことよ”」


 ギルドで転職ができない、生活系職業がある。《農民》や《猟師》、《~職人》などいろいろあるが、それらの職は膨大な経験を積み、偶然の産物として《職》を得ることができる。


 つまり、この世界での《職》持ちは極端に少ないことを示していた。


「“…この世界において、《職》持ち職人はごく僅か…とても貴重”」(リン)

「“なるほどねぇ”」(ヤマーダ)

「“…ましてヤマーダのように…《職》レベルのマスターなんて…この世界に存在しているかどうか…”」(リン)


  おいおい、

  《職》って、そんなに貴重だったのか…


  なんで、ネーコが色んな《職》に

  就かせようとしたのか、

  なんとなく分かったよ…


「“…サリアちゃんに任せて…ヤマーダは黙った方がいい”」

「“了解”」



「申し訳ないんやけど、《職人》さんらの紹介はできへんねん」

 サリアが本題を進める。


「何故でしょうか? ご納得いただけるだけの報酬を提示できると、自負していますが」(ランドン)

「もし、その職人がハイエルフやったとしてもか?」(サリア)

「!!」

 ランドンの両目に「!」が写る。


 この世界のエルフには、以下の3種族がいる。

①エルフ(通称:エルフ)

②ダークエルフ(黒エルフ)

③エルダーエルフ(ハイエルフ)


 現在、人族など外と交流しているエルフ種族は、1番目の通常エルフのみであった。


「では、どのようにしてそのような方々とお知り合いになったのでしょうか?」

 ランドンの興味は《職人》から少し代わりつつある。


「それは、企業秘密や!」

 お口にチャックのジェスチャーでどや顔のサリア。

「それは残念ですなぁ…」(ランドン)


「まぁ、そないガッカリせんと。リンちゃんお願いや」

 サリアの合図でリンが青色の皮のポンチョをランドンに手渡す。


「…これ、ある《職人》から譲り受けたポンチョ。…わたし達の絆として…ランドンさんに譲ってもいいわ」(リン)

「なんと! これは!!」

 ランドンの手が震え、ポンチョをリンに返す。


 商人として、それなりの目利きができるランドン。

 このポンチョが凄まじい逸品であることは言うまでも無かった。


  このポンチョって、そんなに凄いのか?

  どれどれ…


“ポンチョ鑑定”


青色のハイレザーポンチョ+10・

防御・50(補正込)

追加効果・魔法耐性 微強化(火魔法 中強化)


オーガチーフの皮を惜しげもなく使い、《猟師》マスターによって(なめ)すなどの《加工》処理、《防具職人》のマスターによって《防具錬成》、《防具強化》された至極の逸品。

《染織職人》のマスターによって染め上げられた青色は清潔感があり、色褪せることを知らない。

火魔法耐性強化。

推定価格 100,000,000G。


  !!…1億Gってことは、10億円!!!

  国宝級じゃんか……


  …こんなの渡して大丈夫なのか?


「ウチらの持っとる装備品の中でも飛び抜けた逸品や。ランドンはんとは(なっが)い付き合いになる思うんで、よろしゅう頼むわ」

 サリアがポンチョをランドンの手に乗せる。


「いやいや、こんなの恐ろしくて受け取れませんよ。色んな装備を見てきましたが、エスタニア広しと言えど、これ程の物を見た記憶がありませんよ」

 ランドンはさすがに萎縮して、0コンマ何秒の世界でサリアへ返す。


  なんか、引いているなぁ

  ランドンさんが納得しそうな理由は…


  ………!


「でも、ランドン商会と(よしみ)を結ぶんだし、ランドンさんに何かあったらこっちも困るよ。俺達は装備に頼らなくてもそれなりに強いから、そのポンチョを使わないしさ」(ヤマーダ)

「いやいや、こんな逸品。貰っても気軽に着れませんよ。(…それにヤマーダさん達の装備、凄腕の《職人》によって滅茶苦茶《強化》された物では?)」(ランドン)

 手がプルップルと震え、ヤマーダの助け船になかなか乗らない。


「でも、会長としての格は上がるんじゃないの? ランドンさん、自分の身を守るためにもさぁ、安全第一だよ、安全第一」(ヤマーダ)

「そうですかねぇ…(少なくともこんな物を私個人が持っていると知られたら…王家の方には早急に話を通さないと)」(ランドン)


「あっそうだ! これから同行するんだし、もう着ちゃいましょうよ」

 ヤマーダが強引に着替えさせる。


「なっ! ちょっとヤマーダさん! こ、これはスゴイ!」

 最初は嫌がっていたランドンも段々と着心地を認識してくる。


「魔物の硬い皮を使っているはずなのに、とても柔らかくて伸縮する。それにとにかく軽いですねぇ。布製の服よりも着心地がいいとは…」(ランドン)

 最高の着心地一発で、このポンチョの虜になってしまう。


「…このポンチョ…そんじょそこらの魔物や盗賊に…襲われても…びくともしないわ」

 リンの補足説明。


  いやいや、防御50って

  オーガの一撃も防ぐんですけど…


「… (確かに素晴らしいポンチョだ、これなら私が使うのもありだな) …分かりました。この逸品ありがたく頂戴します。ヤマーダ様方のお気遣い感謝いたします」(ランドン)


 一歩引いて見守っいたサリアがさっと近づき、

「見ても判る通り、ウチらにはランドンはんに喋られへんことも多いんよ。そこんとこ…」

「かしこまりました。今後、ランドン商会が皆様を全面的にバックアップいたします」(ランドン)

「「「よろしくお願いします」」」


 今後ヤマーダ達とランドン商会の蜜月が始まる一幕であった。





















「なぁサリア、あんなポンチョってあったっけ?」

「実はリンちゃんに突貫(とっかん)で作って貰ったんや」

「…そう。…倒した魔物の有り合わせで作ったの」


  …国宝級の装備が…

  …有り合わせで作れるんだ

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